第9回
『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』(アン・ウーキョン 著、花塚 恵 訳、ダイヤモンド社)を読む
人間は「脂肪25%の牛肉」より「赤身75%の牛肉」が健康的だと感じてしまう
生きていく過程において人は──多くの場合は無意識のうちに──さまざまな「バイアス(偏見や先入観など)」や「思考の不具合」に翻弄されてしまうものだ。
たとえば、やるべきことを先延ばしした人はその理由として、「いまそれをやるよりも未来に対処したほうがうまくできる」と(根拠なく)思ってしまい、あとから苦しむことになったりする。いうまでもなくそれは、自分に都合のいい思い込みが邪魔をするからだ。
あるいは目の前にある現実を、多角的にではなく一方向からだけしか見なかったとしたら、余計な災難に巻き込まれてしまう可能性も否定できないだろう。しかも、それを自分ではない誰かのせいにするということもありうる。それもまた、自分本位な「思考の不具合」によるものだと考えるべきではないだろうか。
そこで『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』(アン・ウーキョン 著、花塚 恵 訳、ダイヤモンド社)の著者は、2003年にイェール大学の心理学教授となってから、人を惑わせるさまざまなバイアスについて調べ、そうしたバイアスを正す方法を考案し、さらには「思考の不具合」についても研究してきたのだという。
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イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法 |
心理学に基づく「思考ツール」のようなものが必要とされている
興味深いのは、「シンキング(Thinking)」という講義を開始し、心理学があらゆる問題への対処、さまざまな決断を下す際の判断力の向上にどう役立つかを教え始めたという点だ。それが多くの学生たち(や、その親きょうだい)の共感を呼んだというのである。
こうした経験を通じて、心理学に基づく思考ツールのようなものが切実に求められ、必要とされていると実感したことから、私はもっと幅広い人たちに私が教えていることを知ってもらおうと、本を書くことにした。(「INTRODUCTION わかっていても避けられない?」より)
そうして誕生した本書において著者は「人々が日々直面する現実的な問題に、とりわけ関係が深いと思われる8つのテーマ」を用意し、それらについてわかりやすく解説している。しかもそれぞれに見出しがついているため、「これは?」と感じた項目を見つけやすいはずだ。
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