週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

機能が足りない!? 思わぬリスクも…無料のiPad動画編集アプリを選ぶならここに注意すべし

2023年10月26日 09時00分更新

 iPadは動画編集ツールとして非常に人気が高く、「App Store」には無数の動画編集アプリが存在している。魅力的なものが多く、どれを選べばいいか迷ってしまうだろう。特に、最近は無料で利用できる動画編集アプリも多い。

 だからといって、むやみに「おトクだ!」と飛びついてしまうのは禁物。無料アプリにはそれなりの制限があり、自分の求める機能が使えない可能性もあるし、場合によってはリスクすら存在する。つまり、無料アプリを選択する際は、冷静に見極めることが重要なのだ。

 本連載の第1回(「iPhoneで撮ってiPadで編集! まず動画制作にふさわしい機材とアプリを準備しよう」)で代表的な編集アプリについて少し触れたが、今回は、改めてiPad向けの無料動画編集アプリの安全性と選ぶ際のコツについて紹介していきたい。

アプリを選ぶときは利用規約をしっかりチェック

 動画編集アプリを選ぶ際、有料か無料かの選択は、ユーザーにとってけっこうな悩みどころだ。「あまりお金をかけたくない!」という人や、「まずは無料で始めたい!」という人も多いだろうし、「無料のアプリで十分に使えるなら、わざわざ有料アプリを選ぶ必要はない」とも考えるだろう。

 確かに無料アプリの中には、それなりに高機能なものもあるが、無料アプリには無料なだけの理由がある。これは割と重要なポイントなので、しっかりと確認しておきたい。具体的には、利用規約やプライバシーポリシーなどの情報だ。

●商用利用できないアプリが多い

 無料アプリの場合、利用規約によって商用利用を禁じているものが多い。個人利用やSNSにアップする程度なら問題にならないが、ビジネスで使う(収益を得る)場合はNGだ。

 微妙なのは「YouTube」への投稿。「YouTube」に投稿すること自体は商用利用に当たらないが、広告を付けたりPR案件の動画を投稿したりした場合はこの限りではない。商用利用に該当するとされて、規約違反になるおそれもある。最近は、SNSでも動画で収益を得る手段が増えており、この場合もNGになる可能性がある点は注意してほしい。

ある無料動画編集アプリのサービス規約には、「個人的かつ非営利的な用途のために提供されます」とある。つまり、営利目的で利用すると規約違反となるので注意が必要だ。

 また、「無料素材が豊富」をうたい文句にしているアプリも多いが、楽曲(音源)については注意が必要だ。無料とうたっていても、著作権フリーの音源ではないケースが多いので、アプリで提供されている楽曲を利用した動画を公開すると著作権侵害となることがある。

 さらに、著作権侵害で問題が起きても、アプリ提供会社は責任を回避することを規約に明記しているパターンが多い。そのため、トラブルが起きたら自分で対処しなければならない。

有料・無料問わずに、動画編集アプリが提供する音源は、著作権フリーでないことが多い。そのため、動画の公開を目的としている場合は利用しないほうが安全だ。

●作成した動画が自由に使われるおそれがある

 アプリの利用規約はあまりに長く、読まなければならないと思っていても、ほとんど読まずに同意してしまう人は多いだろう。しかし、利用規約には想定外の事が記載されていることもあるので注意したい。

 例えば、ある無料動画編集アプリには「本サービスを介してアップロードまたはその他提供するユーザーコンテンツの全部または一部を抽出して作成する可能性があることを了承します」という規約が掲載されている。

 これは、アップした素材を誰でも事前了承なく、かつロイヤリティ(対価)なしでダウンロードしたり、派生物を作成したりできるということだ。つまり、この動画編集アプリで編集した動画をアップロードした時点で、このアプリを使うほかのユーザーが、自分の作成したコンテンツを自由に利用できてしまう。

この規約は、自分がアップロードした動画をほかのユーザーが利用することを可能にするもの。第三者に使われたくない場合は注意したい。

 さらに驚きの規約としては、「編集動画の権利をすべて放棄」させるための記述が入っているパターンだ。あるアプリには、「お客様のユーザーコンテンツまたはその一部に関連するあらゆる一切のプライバシー権、パブリシティ権その他類似の性質の権利を放棄します」とある。つまり、このアプリで編集した動画は著作権フリーとして、第三者が自由に利用できてしまうのだ。

このアプリで作成した動画は、プライバシー権や人格権などの権利放棄をうたっている。つまり、動画に映っている人の情報が意図しない形で拡散されるおそれがある。

 これら以外にも、位置情報やIDなど、動画編集には不要と思われる情報を必要以上に収集するなど、疑問符のつく規約は少なくない。ただ、このような規約はSNSなどのサービスでも見受けられるもので、あくまでもサービス提供側の方針などとして設けられているものと思われる。

 よって、悪用目的ではないと思うが、規約で明記されている以上、ここで説明したリスクが存在することは間違いない。そのため、魅力的に感じるアプリであっても、規約については特に注意して確認してほしい。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事