週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

「遊んでみたい!」メタが狙うのはバーチャルな遊び場だ(本田雅一)

2023年10月04日 07時00分更新

パススルー映像は期待以上だが、アプリの進化はこれから

 MRデバイスとして捉えた時の改良も、エンターテインメント機としては十分なものだ。ToFセンサーを用いて空間を把握する能力は本機からのものだが、自動的に部屋の状況をスキャンできるため、プレイエリアを自分で設定する必要もない。

 部屋の形状などは常に情報を収集しながらアップデートを重ねていくので、バーチャルオブジェクトを部屋の棚の上に置くといったMR的な操作も、ぴたりと決まってくれる。

 パススルー映像に関しても、モノクロ映像しか取得していないQuest 2の10倍以上、というのは比較にならないだろうが、カラー化で評判の良かったQuest Proと比べても、3倍以上の画素数。

 確かに「現実と変わらないような」とは表現できないが、ゲーム画面を表示する背景、あるいは歩き回るときに周囲を把握するための情報といった観点では、十分以上のものだ。そもそもゲームを遊んでいるときには、ゲーム表示のオブジェクト意外を注視することも少ないだろう。

 

 もちろん、理想は現実と仮想空間の区別がつかないことだろうが、少なくとも筆者が期待していたレベルからすると、ずっといい。

 ただし、MRデバイスとしての完成度は意外に高かった一方で、MRを活用したアプリケーションの開発は、まだまだこれからアイディアを出していかねばならない。VRゲームに関しては、さまざまな種類のものが登場してきているが、同じようにこれからMRゲームのアイディアが出てくるのだろう。

 MRゲームの典型的なパターンとして、壁やテーブル、天井に穴をあけ、その穴を通じて異世界へと通じる設定があるが、そうなると部屋の広さにも依存する。かといってテーブル上に世界を展開し、覗き込むようにプレイするスタイルも、意味がないわけではないが斬新さにはやや欠ける。

 デモで楽しんだゲームの中では、まだベータ版だったゴーストバスターズのMR対応版が、自分のいる部屋に漂うゴーストを捕まえて手持ちのガンにセットし、トリガーを引くとゴーストでゴーストをやっつけるという、実にシンプルだがMR的と感じたが、まだまだアイディアの広がりはこれからだと思う。

人と人とが集まる場をエンターテインメントに

 Quest 3の感想を長々と書いてしまったが、円安による影響で高めに感じる価格を除けば、純粋にゲーム機として楽しいものだ。ストリーミング映像を仮想的な大スクリーンで楽しむだけでも、快適性や高精細な表示を考えると悪くない。

 しかしMeta Connect全体を捉えると、メタがQuestシリーズを発展させていった先に見据えるビジョンが見えてくる。

 VRChatに代表されるように場所の制約を超えて人が集まる場は、それだけでエンターテインメントになる。もちろん友人とは実際に会って、目の前で話をした方が楽しいだろうが、メタのQuestにかける意気込み、MR技術へと向かうモチベーションは、人と人とが集まり、コミュニケーションする場を設けることにあるのだと思う。

 メタバースという言葉を使うと、仮想的に構築された空間に人々が集うイメージが先行するが、必ずしもそうではないだろう。

 新しく引っ越した家で、未来のQuestを使って歩き回ると自宅内の様子が立体的にスキャンされ、デジタルデータとして再構築した自宅に友人を招待して、新しい家に友人をリアル、バーチャルの両方で招待して集まってみるなんてこともあるかもしれない。

 メタが投資している領域は、VR/MR以外にもAIがあるが、同社の大規模言語モデル(LLM)であるLlama2は強化学習を通じたキャラクター化がしやすい。オープンソースで公開されているため、Llama2を用いたカスタムLLMが業務用に開発されている例はとても多いが、メタ自身も28種類のカスタムAIチャットボットを開発し、同社が提供するSNSなどを通じて利用可能になっている。

 しかも各カスタムAIは、トライアスロン選手だったり、アニメ好きのセーラームーン大好き少女だったり、ファッションと瞑想が大好き女子だったり、美味しい料理についてならなんでも知ってるシェフだったり、一生に冒険の旅をしてくれる中世ファンタジーに出てくる戦士だったりと、かなり個性が強い。

 そんな個性的なAIをグループメッセージに入れて会話というのもおもしろいが、メタは企業向けにブランドや商品、サービスなどについて語らせるカスタムAIを開発するためのツールを提供するほか、エンドユーザーが自分だけのAIキャラクターを作れるよう開発を進めるという。

 そんなキャラクターがハッキリしたAIは、メタバース空間に配置してNPC(ノンプレーヤーキャラクター)として、VRやMRの世界にも参加するようにもいずれはなっていく。

 実際に同じ部屋にいる人も、リモートで参加している人も、もしくはAIで作られた個性溢れるNPCにしろ、色々な要素が混在する空間。それをビジネスの場としてではなく、エンタテインメントのひとつとして捉え、最先端のテクノロジで問題解決しようという考えは少しばかりぶっ飛んでいるが、ぶっ飛んでいるからこそ「ザッカーバーグ、意外におもしろいな」と思うのだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう