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ライバルに対して自信あり!? ソフトバンク、新iPhone発売を前にネットワークへの取り組みを説明

2023年09月20日 09時00分更新

「スマホが繋がらない」 SNSでそんな話題も多い中
ソフトバンクが自社のネットワーク品質の取り組みを説明

 携帯キャリアにとって、ネットワーク品質はサービスの最も基礎となる部分だが、コロナ禍後の人流の変化、スマホでの映像視聴を中心としたトラフィック増大で、その維持に苦しむ例が見られる。

ソフトバンクネットワーク説明会

ソフトバンクの自社指標によるネットワーク品質分析の結果。主に応答速度を測っている。ライバルはA社/B社/C社となっているが、色から容易に推測できる

 一方で、ソフトバンクのネットワークは、都心部を始めとする、人が集中する場所での評価が高まっており、SNSでユーザーの声を検索してみても、その傾向は比較的容易に確認できる。

 そんな中、新iPhone発売を前にしたタイミングで、同社はメディア向けに「ソフトバンクが考えるモバイルネットワーク品質のあり方に関する説明会」を開催。常務執行役員兼CNO(最高ネットワーク責任者)の関和智弘氏が、ネットワークへの取り組みや品質のアピールを行なった。

ソフトバンクネットワーク説明会

メディア向けに説明したソフトバンク最高ネットワーク責任者の関和智弘氏

4Gの周波数、新規の5G周波数の両方を活用して
5Gエリアの密度を上げてきた 重視するのは「ユーザーの体感」

 まず、モバイルネットワークを取り巻く状況として、「社会に必要不可欠な通信基盤」になっており、スマートフォンが街中で使えない、繋がらないことはユーザーの不満に直結する。そこで「スマホの“イライラ”を街の中からなくす」ことを目標として取り組んでいると紹介した。

 そのうえで同社が重視しているのは、やはり「5G」だ。同社の5Gの基地局数はすでに7万局を超えている。人口カバー率で見ると92%超と、決して高くないようにも感じるが、人口が集中している場所に投入しているうえ、4Gからの転用周波数による広いカバレッジと、帯域が広く大容量で使える5G用の新規周波数(3.7GHz帯、実際にソフトバンクに割り当てられているのは3900~4000MHzの100MHz幅)を重ねて展開することで、5Gエリアの密度を上げることに力を入れてきた。

ソフトバンクネットワーク説明会

速度はそこまで高速ではないが、電波が飛びやすい4Gからの転用周波数でエリアを広げつつ、さらにトラフィックが集中する場所ではより大容量な5G専用周波数を重ねることで、5Gエリアの密度を上げている

 ただ同社にとっても、コロナ禍後の人流の変化や、ユーザーのデータ利用量の増大は影響が大きい。完全に人流が回復していない2022年の段階でも、都心部では同社が「高トラフィック基地局」と定義する基地局(頻繁に3Mbps以下、時には1Mbps以下になる)が主要ターミナル周辺で増加しているほか、月に20GB以上利用するユーザーの比率は年1.15倍のペースで上昇。こうしたユーザーに満足してもらえるかどうかで、サービスの満足度が大きく変わってくるとする。

ソフトバンクネットワーク説明会

2022年から2022年の間に高トラフィック基地局は大きく増えている

ソフトバンクネットワーク説明会

大容量を使うユーザーの比率がどんどん増えている

 その際に同社が重視するのが「ユーザーの体感」。そして「ユーザーの体感」はニアリーイコールで「パケット全体でパケ詰まりがない」ことであり、パケ詰まりが起きないようにするには「ダウンリンクとアップリンクのバランス」「そのバランスが悪くなっている場所をいかにして探すか」が重要なのだという。

ソフトバンクネットワーク説明会

単純な速度ではなく、体感を重視。その際に重要なのが下り上りの両方でパケ詰まりの状況を起こさないこと

5Gを積極的に活用しつつのトラフィックの制御も重要
基地局の設置場所を多く持っているのも強み

 たとえば、5Gの初期ではスポットで5Gの基地局があったため、そのエリアの端となる部分で弱い5Gの電波をつかんでしまうと通信が不安定になるなど、ユーザーの体感が悪化する。そのため、通信品質が良好な場所でしか5Gに繋がらないようにしており、あまりネットワークを有効活用できていなかった。しかし、前述のように5Gエリアの密度を上げることで、積極的に利用できるようになった。

ソフトバンクネットワーク説明会

ネットワーク品質の課題は主に3つあるという。特に5Gの初期では、弱い5Gの電波を掴みつづける、セルエッジの問題が発生しがちだった

 しかし、今度はアンカーバンドの問題が発生する。現時点の5Gネットワークは、通信制御などのコアネットワークの接続に4G、データの通信に5Gと、組み合わせて用いるNSA(ノンスタンドアローン)方式が主流だ。しかし、あまりに多くの端末が5Gで接続すると、アンカーバンドでの利用で特定の周波数の4Gネットワークが混雑して、品質劣化が発生する。そこで、5Gと4Gとの間でトラフィックを制御することでバランスを取っている。

ソフトバンクネットワーク説明会

5Gのエリアが充実してくると、アンカーバンドとしての利用でトラフィックが集中して、品質劣化が発生することも

 また、電波は周波数によって飛び方が異なるが、場所によっては特定の周波数、主にプラチナバンドのみが繋がりやすく、そこにトラフィックが集中して品質が低下するケースがある。これに対しては簡単な解決策はなく、地道に基地局を設置していく必要があるが、ソフトバンクは成り立ちの経緯からも非常に多くの基地局ロケーションを持っており、周波数ごとに適した場所を見つけやすいという強みがあると語った。

ソフトバンクネットワーク説明会

電車での移動中や屋内など、プラチナバンドしか繋がらないような場所があると、どうしてもトラフィックが集中する。対策には地道な基地局の設置が必要だ

自社データでライバル3社からのリードをアピール
フェスやコミケでは5Gの基地局が強みを発揮!?

 一方、「ユーザーの不満=ネットワーク品質が低下している状況」をどう見つけて、対策を進めるかだが、これは基地局のデータだけではなく、端末側のデータも合わせて、100mから1kmのメッシュ単位で分析。問題をパターン化して、迅速に対応する。その際に重要視しているのが単純な通信速度やping値(RTT値)ではなく、自社独自の応答速度のデータ。今年8月の最新の分析結果がメディアに示されたが(記事冒頭画面)、他のMNO3社に対して、大きく差を付けているとアピールした。

ソフトバンクネットワーク説明会

ビッグデータを活用して、問題が発生している場所と原因を分析、迅速な改善に繋げる

 さらに今夏にSNSで話題になったのがフェス会場、花火会場、コミケなど、一時的に人が集中する場所での接続性。これについては、100MHz幅と広帯域で使える3.7GHz帯(3.9GHz帯)の5G周波数を移動基地局において積極的に活用。これによって、多くのユーザーが比較的快適な通信が可能だったのではないかと説明した。

ソフトバンクネットワーク説明会

フェスやコミケでは5G専用の周波数を積極的に活用。SNSでもライバルと比べてネガ投稿が少ないとした

Massive MIMOは効果はあるが
コストや場所の問題もあり適材適所で使用

 なお、質疑応答では、非常に多数のアンテナを装備した基地局で、通信の安定化と高速化を可能にする「Massive MIMO」技術の活用が他社との差に繋がったのではないか? と問われたが、Massive MIMOのメリットは認めつつ、それが突出した効果があるかについては分析できていないと回答。

 Massive MIMOには高い周波数帯の電波を活用する上で、電波が弱くなる場所を減らす効果があり、積極的に使いたいが、アンテナが大きいことから設置コストが高く、設置可能な場所も限られるため、適材適所で用いているとした。

 4Gからの転用周波数に、広帯域の5G専用の周波数を組み合わせた5Gネットワークの積極活用により、スポット単位での通信速度ではなく、「ユーザーの体感」で優れた品質のネットワーク構築を進めてきたという、同社の自信が垣間見えた説明会だったと言える。

 

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