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【前編】クランチロールCOO ギータ・レバプラガダ氏ロングインタビュー

世界のアニメファンに配信とサービスを届けたい、クランチロールの戦略

2023年10月14日 15時00分更新

■17年前、ファンサイトから始まった

―― 北米で誕生したクランチロールの歴史は、「海外アニメ配信」の歴史とも重なっていると思います。御社の歩みをお聞かせ下さい。

ギータ クランチロールは2006年8月にサンフランシスコで設立されました。最初は日本のアニメを見たい仲間向けにアニメに英語字幕を付けるUGCサイトから始まったのですが、2008年に『NARUTO -ナルト- 疾風伝』(テレビ東京)のサイマル配信開始を契機に、正規にライセンスされたアニメ作品を配信するサイトになりました。

 クランチロール株式会社を設立し、日本法人を東京都渋谷区に置いたのもこの時期です。

―― まずはファンサイトから始まり、正規ライセンスを取得した動画配信サービスになっていったのですね。御社は現在200以上の国と地域に配信網を展開していると聞きます。それぞれの地域でのローンチ(開始)時期はいつ頃でしたか。

ギータ 2012年4月にラテンアメリカで、スペイン語とポルトガル語のサービスを開始しました。同年10月にはブラジルでも開始しています。

サービスが始まると世界中のファンから「現金」が直接送られてきた!

 クランチロールが米国外で人気と関心を集め始めた頃、世界各国のアニメファンから「うちの国でもぜひサービスを開始してほしい」と現金が直接送られてきたのだという。

 というのも、クランチロールが本格的に配信事業を始めた2010年前後はまだ海外で日本アニメは思うように観られない状況だった。日本アニメを海外ファンに届ける手段は限られていた時期であり、ネットでは日本のファンから作品の評判が聞こえてくるにもかかわらず、海外版DVDを待つしかなかった。

 クランチロールに届いた現金には、世界各地にいる日本アニメファンの熱意や切実な思いが込められていた。

当時、世界各地のアニメファンから送られてきた現金

■多言語対応は「吹き替え」にこだわりアリ

―― クランチロール社の「配信」事業について。日本アニメを世界配信する事業自体は他社でも例があります。御社ならではのポイントがあればお聞かせ下さい。

ギータ クランチロールは「アニメファン」の好みやこだわりに対応できるサービスが提供できることを大切にしています。

 アニメの楽しみ方も人によってさまざまで、視聴デバイス1つとっても「自分のスマートフォンで観たい」「大型テレビで観たい」など異なります。それぞれの視聴形態・試聴習慣に対応していきたいと思っています。

 具体的に、配信で最も力を入れているのはランゲージ(言語)です。アニメファンの方も住んでいる地域ごとに観たい言語が違うので、「現地言語」に可能な限り対応しています。

 現地言語も「字幕」だけではなく「吹替版」をプロデュースして、幅広いオーディエンスに楽しんでいただけるような施策を実施しています。

―― 海外向け対応と聞くと英語の字幕が浮かびますが、それだけではなくて各地域の現地言語に対応するということですね。

ギータ はい。吹替版を作るには字幕版よりも時間がかかりますが実施しています。映像が届いて翻訳して台本を作り、現地の声優・俳優をキャスティングしてアフレコしてもらいます。

 現在、現地言語の対応で注力している地域の1つがインドです。多言語の国ですが(公用語である)ヒンディー語をはじめ、タミル語とテルグ語の吹替版などを作っています。

■国ごとにファンが好む作品は違う?

―― クランチロールは200の国や地域で配信を展開していますが、アニメファンが好む作品に地域差は出ますか。お国柄のような。

ギータ はい。地域によって観たいアニメの傾向に特徴が出ます。中国、韓国など東南アジア地域であれば、日本のファンと好みが似ていて日本と同じ作品が人気になる傾向があります。

 しかしそれ以外の国ですと、傾向は多様です。

 たとえばスポーツアニメなら、そのスポーツが人気になっている国での支持が高いです。今ですと、『ブルーロック』がサッカー人気の高いヨーロッパと中南米でよく観られています。

―― 各国で好まれる作品には、その地域で関心が高いトピックが関係してくるのですね。

ギータ 英語圏のファンはさまざまなジャンルを楽しんでいますが、特に人気が高いのは「少年マンガ原作」「異世界もの」「ロマンチックコメディー」です。中南米では特にロマンチックコメディーの人気がかなり高くなっています。

 また中南米のほか中東と北アフリカでは、少年マンガ系のクラシックなビッグタイトルが好まれています。

 欧州のファンもさまざまな作品を楽しんでいますが、ほかの地域に比べてアート色の強い作品や実験的な作品にもオープン(寛容)です。

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