音楽と静寂を巧みに描きわける1000X
ノイズキャンセリング機能の効果も比べました。ソニーの1000Xは、全ての帯域に渡ってフラットで編み目の細かな消音効果がかかります。特定の環境ノイズが漏れ聞こえて目立つ感じはありません。さらに1000Xはノイズキャンセリング機能がつくり出す静寂を、とても自然に音楽の中に溶け込ませます。
1000Xで楽曲を再生すると、演奏の休符の合間に訪れる静寂の中にも、ボーカルや楽器が次の音を奏でるまでに躍動している「存在感」が伝わってくるのです。音と静寂がスムーズにつながると、音楽のグルーヴ感がますます熱量を帯びてきます。
AirPods Proのノイズキャンセリングは、特に第2世代機になってから「強い消音効果」が得られるようになりました。例えば飛行機の中でもノイズをしっかりと消して、リスニングに集中できる環境をつくってくれます。ただ、ソニーの1000Xと「静寂の質」を比較すると、AirPods Proは音楽のグルーヴ感を少し吸収してしまう感覚もあります。
ノイズキャンセリングによる静寂を、映像や写真の「暗い部分」に例えると、「黒」で塗りつぶすAirPods Proに対して1000Xは「影」を描きます。1000Xのサウンドに、筆者は物語性を意識した音づくりの「うまさ」を感じました。
一方、1000Xに対するAirPods Proの強みもあります。1000Xはソニー独自開発の「ノイズアイソレーションイヤーピース」そのものによる遮音効果が高いためか、外音取り込みモードに切り換えた時にAirPods Proよりも少し環境音が聞こえにくく感じられます。もっとも、AirPods Proの“外部音取り込み”の透明感はほかのワイヤレスイヤホンに対して圧倒的に完成度が高いので、1000Xの外音取り込みも十分にハイレベルであることは間違いありません。
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