ゲームの市場規模は減少。そのなかで市場がさらに伸びる鍵は?
2022年はゲーム市場が初の減退!?その実情とゲーム業界の未来を浜村氏が語ったオンラインセミナーレポ
各プラットフォームの状況は?
任天堂は、Switchの国内の累計台数が3000万台が見えてきた。季節の変動もなく順調に右肩上がりに伸ばしており、最近ではDSとの差も埋まってきている。これからは一家に一台ではなく、一人に一台ということになっていくだろうと浜村氏は予想。
世界での累計販売台数は、1億2562万台になったという。今までに発売された家庭用ゲーム機の中でも3番目に売れたハードになっている。どこまで伸びるのか楽しみと浜村氏は語る。
Switchのソフト売り上げランキングでは、歴代の人気IPがズラッと並んでいる。任天堂のハードを支えてきたのは、まさに任天堂のIP。
今後のSwitchに関して任天堂の古川社長の「7年目を迎えたSwitchは、任天堂の家庭用ゲーム機の中でも未知なる領域に入る」という言葉や「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のヒットなどから、新たなフェイズに入るSwitchに浜村氏は期待しているという。
そんなSwitchを支えるのが、サードパーティのタイトルでもあるだろうとも。また、エキスパンションパスや追加ダウンロードで、すでに発売したIPも支えていると語った。
浜村氏は任天堂の注目すべきもう1つの動きとして、睡眠をエンターテインメント化する『Pokémon Sleep』の名を挙げた。『Pokémon Sleep』は『Pokémon GO+』との連携が注目であり、ゲームとリアルな世界が連結するARの世界で任天堂のIPもしっかりと存在感を出していると述べた。
ちなみに、ハイクオリティーのゲームは、PS5の品薄が解消されて急激に販売台数を伸ばしたことにより、今年は一挙にPS3、4をキャッチアップして越えていったという。
国内のパッケージソフトの売り上げ本数もけっこう伸びてきており、前年に比べると倍以上売れているとのこと。なお、2位の『ホグワーツ・レガシー』は、ワールドワイドで1500万本超えたと言われている。
ソニーの決算資料では、22年の第3クオーター(Q3)あたりから急激に数字を伸ばしている。まさにハードが普及してきたから、パッケージソフトも売れるような形になっているという。
一方、無料ダウンロードソフトも健在。『エーペックスレジェンズ』や『フォートナイト』などの4強と言われる中に、『Fall Guys』が入って来たのが注目だ。
SIEのIPでも、映像がソフトの売り上げに貢献しているものがある。それが、アメリカの有料ケーブルテレビ放送局HBOでドラマが大ヒットした「The Last of Us」だと浜村氏。本作は、HBOのドラマの中でも歴代2位の視聴者数を獲得したという。
SIEは、PS5で発売したIPを1年後にPCで出し、その後さらにスマホアプリで出すなどして、IPの認知度を上げてユーザーを増やす戦略を計画している。これとは別にもう1つの戦略があり、それは人気IPをライブゲーム化し、そこで収益を得ようというもの。
リリースと同時にPCでも、スマホでも、おそらく別のゲーム機でも一気に同時配信して、それで収益を挙げようと考えていると浜村氏。
ちなみに、「The Last of Us」はマルチゲーム化されると開発陣よりコメントが出されており、今年の後半には出てくるだろうのこと。
一方のXboxはというと、今年の2月に価格改定を発表。PS5が普及し始めたところでの値上げは多少ちぐはぐな印象を受けるが、むしろマイクロソフトはXbox本体ではなくサブスクのゲームパスにメインを置いているのではないと浜村氏は述べた。
そんなマイクロソフトの戦略で注目したいのが、アクティビジョンの大型買収劇。マイクロソフトはアクティビジョンのIPを任天堂やGeForce NOWなどでも出すと明言している。浜村氏はゲームをプレイするためのハードが増えたため、1つの機種への独占タイトルを出すよりも、PCやスマホと幅広くソフトを供給することで、収益を上げていくことが、今の時代の常識になりつつある、と語った。
PC市場では、Steamが登録者数を伸ばし、2022年10月下旬でサインインしている同時接続ユーザー数が3000万人を突破したと発表。これはユーザー数が増えているということと同時に、もう1つ意味があるという。
それはオンラインに接続してずっと遊び続けるサービス型のゲーム、SIEが言うところのライブゲームの比率が上がってきていることの証明になると浜村氏。
伸長しているのはSteamだけでなく、ライバルのEpicも同じだという。そのEpicがここに来て面白い戦略を始めた。それは、個人でもソフトの販売が可能になるというもの。
しかも、発売した売り上げの88%を制作者が受け取ることが可能とのこと。スマホでも70%なので、これは大きいだろうと。さらに、Unreal Engineで制作されたソフトは、同開発ツールの使用料が免除になるという。
こうなってくると小さなスタジオはとくにUnreal Engineを使ったソフトに注力していくだろうと浜村氏。また、個人クリエイターがどんどんUnreal Engineで高品位なタイトルを作っていけば、既存のプラットフォームが底上げされるのは間違いないだろうとも語った。
浜村氏は、活況を呈し始めるコンシューマープラットフォームに新しいビジネススキームが出てきそうだとも語った。それは、家庭用ゲーム機にも広告が付きそうな波が来ているという。
スマホのカジュアルゲームでは広告付きというのがけっこうあったが、PlayerWONがPCもしくはコンソールプレイヤーに対して、ゲーム内の動画広告を視聴する報酬として仮想通貨やゲーム内アイテムを提供するサービスをPCのゲームで始めるという。
PCや家庭用ゲーム機で広告を見るという時代も、もう目の前に来ているのではないかと語った。
また、ゲームのボーダレス化も進みそうとのこと。スマホアプリで登場した『ヘブンズバーンズレッド』のSteam版が、1周年記念を機に同時接続者数が1万7000人を記録。その後は2万人を超えることもあったという。また、Googleが、Google Playで配信中のタイトルをPCで遊べるようになるGoogle Play Games(ベータ)を配信。
『フォートナイト』や『原神』などマルチプラットフォームのゲームはあったが、PCとスマホゲームの垣根がなくなることでPCゲーム市場が伸長するきっかけになるのではないか、と浜村氏は述べた。
一方、動画サイトのゲームへの参入も加速しているとも。Netflixでは、'21年に最初のタイトルが発表されてから、すでに55本ものモバイルゲームを配信。'23年中にはさらに40本のタイトルをリリース予定で、現在16本を社内スタジオで、70本を外部のパートナーと開発中だという。
まさに、ゲームのプラットフォーマー並みにゲームの開発をしている。動画サイトのゲーム参入もどんどん計画されているので、今後も注目したいと浜村氏。
このように、さまざまな試みがされ、ゲーム産業は復調の可能性のあると浜村氏。とはいえ、一番復調するのはヒットタイトルがあることだという。
'23年はビックヒットが狙えそうなタイトルが目白押しとなっている。待望の新作がずらっと登場しそうなので、期待したいと述べた。
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