仕事柄、敏感になってしまう言葉遣い
どもども、ジサトライッペイです。コロナ禍のゲーミングPC需要のおかげか、ここ2~3年でPC自作を始めた方がずいぶんと増えたような気がします。PC自作のおもしろさを広く普及するために、日々様々な活動を行っている我々からすると、うれしい限りですよ。
しかし、そのせいか、変な言葉づかいも増えたなと思います。ありますよね。こういう現象。例えば、本来は塩加減を表す「塩味」(えんみ)という言葉も、なぜか塩で味付けしたものを指す塩味(しおあじ)という意味で使われたり。
「あーえんみのラーメンうまいわー」とか、「どちらかというと、とんこつよりもえんみが好き」とか、こんな誤用をたまに見かけます。「えんみがほどよい」とか、「えんみがしっかりしている」とか、本来は塩のさじ加減を表現するための読み方なのに変ですよね。
僕の業界だと「自作PC」と「PC自作」がそうです。もっともこちらの場合、はっきり「誤用」とまでは言い切れません。字面が似てますし、仕事でこれらの言葉を扱う業界人以外にはなんのこっちゃという些末な話かもしれません。しかし、我々は仕事柄、明確に使い分けなければなりません。
自分で作ったパソコンそのものとパソコンを自分で作る行為
「自作PC」とは、読んで字のごとく「自分で作ったパソコン」を指します。対して、「PC自作」とは「パソコンを自分で作ること」を意味する言葉です。つまり、前者は自作したパソコンそのもので、後者はパソコンを作る行為や文化を示しているのです。
だから、「自作PCする」とか「このあいだPC自作作ってさー」とか、聞くとモヤっとするんですよ。「PC自作する」に、「このあいだパソコン作ってさー」だろうと。また、これらは誤解も招きやすい言葉でもあります。例えば、編集部の若手に「イッペイさん!自作PC教えてください!」って言われると……
僕「よっしゃ!ワイの自作PCはなー、CPUはインテルのCore i9-13900KSでー、Koolanceのチラーを使ってー‥‥…」
若手「いや、パソコンの作り方を教えてくださいって意味でして……」
僕「そっか、すまんすまん!てっきり俺の自作PCのスペックを教えてくれって意味だと思って(だったら「PC自作」って言わんかい!)」
みたいな、双方にとって悲しく無駄なやりとりが生まれます。そして、「イッペイさんってほんと日本語にうるせーよなー」という陰口まで叩かれるまでがセットなので、このあやふやな言葉遣いは一刻も早く是正したいところであります。
しかし、どちらの意味でも通じることも多々ある言葉なので、これがなかなか難しいのです。例えば、「自作PC文化っていいよね」なら、自作したパソコンを愛でる文化とも、パソコンを自作する文化という意味でも捉えられます。
「俺のPC自作見てよ!」なら、パソコンを作っている様子を見てほしいともとれますし、その結果自作したパソコンを見ることにもなるので、一概に誤用とは言い切れないわけです。ややこしいですよね。ゆえに、そんなあいまいな表現にいちいち目くじらを立ててもキリがないのです。
時代とともに移り行く言語、慣習も新造語も寛容な気持ちで
だいたい、この業界は様々な呼称が存在するものが盛りだくさんです。ディスクリートGPUを搭載した基板の場合、ビデオカードにビデオボード、グラフィックカードにグラフィックボード。まだまだありますよ。グラフィック「ス」カードにグラフィック「ス」ボード、VGAと、こんなカオスな状態がいまだ放置されています。
まあ、「ギガが減る」なんて表現がのさばっている現代において、細かくこだわっても仕方がない問題かなとも思います。言語は時代とともに移り変わっていくものですし、やがて消えゆく言葉もあるので、穏やかな気持ちで見守っていきたい所存です。僕らもパソコンを自作する人のことを「自作er」なんて、勝手に無理めな造語を作ってますしね。
だから、たまにスマホのスペックで見かけるストレージを指す「ROM」表記も温かく受け止めています。ROMは本来Read Only Memory(読み出し専用メモリー)という意味ですが、その発展形に「フラッシュROM」(書き換え可能なメモリー)があり、その略でROMと呼んでいるのだからOKという見方も存在するそうですし。
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