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空しさで泣いた孫正義、いまはAIと壁打ちする日々

2023年06月26日 08時00分更新

人は残りの人生を意識した際に、世界や理想を考える

 ここで、アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏とのエピソードにも触れた。

 「彼は、自分が癌だと知っていて、残された5年間の日々を送った。私とは、毎月のように会ってくれ、話をした。あのときは、人類の未来のために、素晴らしい作品を生み出すことを純粋に考えていたのではないか。死ぬ1週間前まで、次のiPhoneの設計を考えていた。いま振り返ると、自分に残された日数に対する焦りと悔やみ、そして、次のアイデアに対する興奮が入り混じった気持ちだったのではないだろうか。彼の気持ちの一部を、これまで以上に理解できたと思った。それで大泣きをした」とする。

 いまの孫会長兼社長が、売上や株価をちっぽけこととするように、ジョブス氏との会話では、何10回会っても、iPhoneを何台買ってくれるのか、いくらで買ってくれるのかという話は一切なかったという。

 「商業的な数字には興味がなかったのだろう。未来の人々にとって欠かすことができない素晴らしい作品を作るという純粋な1点に集中して、iPhoneなどを生み出した結果が、倒産寸前だったアップルを、時価総額世界一の会社にした。商業的にお金を追い求める行為ではなく、素晴らしいものを作り出せば、人々の感動を生み、人々の価値観を高め、その感謝の気持ちとして、お金がついてくる。お金は追いかけるものではなく、人類が必要としている素晴らしいものを作る純粋な活動についてくる成果である。私は、人類の未来を単に想像するだけでなく、armが手元にあるから、それを実現できる立場にある。だから、ワクワクしている」とする。

 孫会長兼社長は、「情報革命の中心は間違いなくAIになる。情報革命は人々を幸せにするための革命である。がんばるので応援してほしい」と、総会の最後に株主に呼びかけた。

 孫会長兼社長は、2022年10月をきっかけに新たな境地に行き着いたようだ。その時期から、孫会長兼社長は、決算会見には登壇しなくなった。商業的な数字には興味がなくなった孫会長兼社長の行動を裏づける姿勢が、株主総会で改めて示されたともいえる。

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