今回のひとこと
「市場の論理で価格が下がるのではなく、メーカーが意思を持って価格をコントロールしていく。これは国内家電市場を健全化し、価格の安定性を取り戻す取り組みになる。トップメーカーの責任として課題に挑戦していく」
返品を受け入れる代わりに、販売価格を指定
パナソニックは、新販売スキームと呼ばれる仕組みを導入している。
2020年からスタートし、ヘアケアドライヤーなどの同社の強みが発揮できる製品を対象に開始し、徐々に範囲を拡大。現在、新販売スキームは、同社の国内白物家電全体の3割を占めており、くらしアプライアンス社以外が扱っているテレビやエアコンを含むと2割弱。2024年度には白物家電全体で5割、テレビやエアコンを含めて3割にまで引き上げるという。
新販売スキームは、メーカーと販売店、そして消費者の関係に大きな影響を及ぼすものだ。
パナソニックが、販売店の在庫リスクについて責任を持ち、販売店は売れ残った商品を返品できるようにする一方、パナソニックが販売価格を指定。対象商品は、店頭では値引き販売は行えない。そのため、消費者はどの店舗に行っても同一の価格で購入できる。
パナソニックの品田正弘CEOは、「製品価値を適切に反映した価格で購入してもらうことを目的としており、価格に対する信頼を取り戻す仕組みづくりを目指している」と位置づける。
販売店では、値崩れを過度に心配することなく、安心して販売ができ、商品が売れ残るリスクも無くなる。仕入原価を切った在庫処分は不要だ。さらに、パナソニックでは、長期間に渡る値崩れがないため、販売ピークをライフサイクルの前半に引きつけることで、経営の安定化を図れること、商品サイクルの長期化によって、毎年のマイナーチェンジに貴重な開発リソースを割くことがなくなり、革新的な商品の開発に投資を振り向けることができるメリットもある。これまでは、実売価格を戻すために、1年に1回、むりやりマイナーチェンジ版の新商品を投入するというライフサイクルがあったが、こうした商品戦略は不要となり、この結果、機能の高い商品を適切なタイミングで投入でき、顧客満足度の向上につなげられると見込む。
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