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PDFのコラボレーションソングも公開

6月15日は「PDFの日」に! 30周年を迎えたPDF&Adobe Acrobat

2023年06月15日 10時30分更新

 2023年6月14日、アドビはPDFとAdobe Acrobatの30周年を記念する記者会見をオンライン開催した。30年間の歩みやデジタルドキュメントの新しい活用法、コラボレーションソングなどが紹介された。また、30周年の誕生日は2023年6月15日。PDFとAdobe Acrobatは30周年を迎えるが、これを機に、6月15日が「PDFの日」として一般社団法人日本記念日協会に認定されたという。

PDF&AdobeAcrobat30周年を記念し、6月15日が「PDFの日」として認定された

Acrobat&PDF、30年の歩み~現在、ネットには数兆のPDFが存在する

 Adobeの30年間を紹介してくれたのは、米アドビ デジタルメディア事業部 Document Cloud プロダクトマーケティングディレクターの山本晶子氏。1999年、米アドビに入社し、ビデオ編集ソフト「Premiere」の開発やアドビストアおよびCRM基幹システムの立ち上げにビジネスアーキテクトとして従事した後、Acrobatのプロダクトマネージャーとして製品戦略と仕様の決定に携わった人物だ。プロダクトマーケティング部門の立ち上げにより現職に就き、エンタープライズ向けDocument Cloudのグローバル製品およびマーケティング戦略を統括している。

「1980年代後半から1991年前半、Windows 3.0やMacOSを搭載したコンピューターは登場していたものの、オフィスではワープロと呼ばれる単体のマシンで文章を作成するというのが主流でした」(山本氏)

 電子文書の配布はフロッピーディスクで行ない、地方や海外とやり取りする場合は、プリントアウトして郵便や国際宅急便で送っていた。相手先が読むまでに、数日のラグが出ていたが、その方法しかなかったのだ。

 そんな中、アドビの共同設立者であるジョン・ワーノック氏は「これからの時代、紙やフロッピーディスクといった物理的メディアに制限されることなく、情報とアイデアを自由に誰とでも、自分が思った通りのレイアウトでやり取りできるようにするのが、アドビの使命ではないか」と考え、PDFという技術を開発した。この時はまだ1991年で、先進的な考えを持っていたことが伺える。そして、その2年後にPDFを閲覧するために「Acrobat」という製品を発表した。

 そこから、インターネットやスマートフォン、タブレットが普及し、紙から電子へ移行が進んだ。ハイブリッドワークといった働き方の変化もあり、PDFの利用率は爆発的に伸びたという。たとえば、2012年期には世界で作られたPDFファイルは10億件を突破した。

「インターネットの果たす役割が大きかったと思います。PDFがどんどん使われ、企業ドキュメントとして対外的に見せるものはPDFにしようといった機運が高まりました。私たちはインフラ的な役割を果たす必要があると考え、2008年にPDFの仕様をISOへ譲渡しました。私もこのプロジェクトに関わっており、非常に大きな決断でした」(山本氏)

2008年に仕様をISOに譲渡。2012年にはPDFファイルの数が10億件を超えた

 マーケットの変化に伴い、PDFやAcrobatが果たす役割や顧客からの期待も大きく変わった。元々、PDFを配布し、意図したレイアウトの通りに見せてもらう、というのが1番大きな価値だった。しかし、年を追うにつれ、PDF内の情報を再利用したいとか、ほかの場所にいる人とコラボレーションしたいとか、PC以外のデバイスでPDFを操作したい、といったニーズが生まれてきた。

「現在では、文書のやり取り、もしくは文書のワークフローはすべて電子で行うという流れが主流になっています。それに伴い、2015年にBtoB向けにDocument Cloudというソリューションを発表しました。これからの時代は、今まで蓄積してきたPDFの中に入っている情報をAIにより再活用したり、もしくは、文書ワークフローをマニュアルではなくオートメーション化することで煩雑なタスクから解放されます」(山本氏)

 ナレッジワーカーの業務効率が向上することで、生まれたリソースを思考やアイデアの発想、新しいビジネスの創出に使えるようになる。本来人間が持ってるインテリジェンスを駆使した働き方を支援していくために、デジタル文書業界をリードし、PDFの価値を変革して、次の世代に繋げていきたいと考えているという。

天文学的な数になる世のPDFはすべて同じなのか?

 Document Cloudは大きく2つの柱がある。1つは、ナレッジワーカー向けのプロダクティビティーツールで、AcrobatやAcrobat Reader、電子サインが行なえるAcrobat Sign、文書スキャナーアプリのAdobe Scanなどが含まれる。

 もう一つが、「Adobe Acrobat Services」と呼ばれるサービス。さまざまなAPIにより文書タスクをオートメーション化してくれるものだ。

「Document Cloudが企業様からご好評いただいてるのは、ガチガチなソリューションではなく、フレキシビリティがある点です。どの企業様も文書のタスクやワークフローを完結させる際、Document Cloudだけでなく、すでにお使いの基幹システムやコラボレーションツールと組み合わせるのが一般的です」(山本氏)

AcrobatからAcrobatも内包するDocument Cloudへ進化

 ここで、PDFとは何ぞや、というおさらい。当初は、PDFにすると改ざんできないからウェブ掲載や顧客に渡す契約書に最適といった、固まったファイルフォーマットとしての浸透率が高かった。

 しかし、実はPDFというのは情報のコンテナだという。さまざまなレイヤーを含んでおり、たとえば、テキストや画像などの表示部分に加え、データを入力できるフォーム、メタデータや注釈などタグなどが階層になっているのだ。もちろん、改ざんされたくないということであれば、Acrobatでセキュリティをかけることもできる。

「最近の私たちの調査によると、インターネット上でやり取りされているPDFの数は数兆件と天文学的な数字になっています。企業様のファイアウォール内では、もっと多くのPDFが使われてると思いますので、間違いなく、PDFは世の中でもっとも多く使われているファイルフォーマットと言えます」(山本氏)

 これだけ多くの人が使っているので、サステナビリティへも貢献しているという。30年前は紙をプリントアウトしていたが、AcrobatでPDF化することで、たとえば100万件の文書ワークフローを処理すると、約3万1000本の木と2300台の車を1年間走らせないだけの同じ効果があるそう。

現在、ネット上だけで数兆ものPDFファイルが飛び交っている

「世の中には天文学的な数のPDFがあると言いましたが、すべてのPDFが同じなのか、と質問されることがあります。アドビはPDFのスペックをISOに譲渡したのだから、どのツールで作っても同じPDFが作れるよね、と言われます。アドビで検証したところ、すべてのPDFが再利用可能になっていたり、アクセシビリティに対応しているかというと、残念ながらそうではありません」(山本氏)

 たとえば、PDFの60%は業務自動化のために最適化されておらず、90%はアクセシビリティのためのタグが付いていない。92%はセキュリティがかけられておらず、誰でも編集可能な状態にある。PDFだから大丈夫という認識を持っている人もいるが、悪意を持った人が改ざんすることもできてしまうのだ。

ビジネスに最適化されていないPDFがたくさん出回っている

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