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山根博士のグロスマレビュー

10段階可変絞りのカメラフォン、ファーウェイ「HUAWEI P60 Pro」の仕上がりが良すぎる!

2023年06月17日 12時00分更新

HUAWEI P60 Pro

 ファーウェイが2023年3月に発表した「HUAWEI P60 Pro」はライカとのコラボ時代を思い出させる、高性能なカメラを搭載したスマートフォンだ。スマートフォン市場をまだあきらめないファーウェイの最強カメラフォンを使ってみた。

 HUAWEI P60 Proの基本スペックはチップセットにSnapdragon 8+ Gen 1 4Gを搭載する。アメリカ政府の規制もあり通信モデムは5G非対応のファーウェイ向けのチップセットとなる。ディスプレーは6.67型(2700×1220ドット)、120Hz駆動のLTPO OLED。バッテリーは4815mAh、急速充電は有線が88W、無線が50Wだ。

5Gには非対応のSnapdragon 8+ Gen 1を搭載

 カメラは4800万画素の広角カメラをメインに搭載し、絞りは物理的に1.4から4.0まで10段階に可変させることができる。撮影シーンに応じて自動設定も可能だ。超広角カメラは1300万画素F2.2、望遠カメラは3.5倍で4800万画素のF2.1を搭載する。なお望遠カメラは前モデル「HUAWEI P50 Pro」が6400万画素だったがF3.5であり、HUAWEI P60 Proではより明るいレンズに変更された。

メインカメラは物理的に可変できる絞りを搭載

 本体サイズは約74.5×161×8.3mm、重さ200gと最近のハイエンドにしては軽量な部類に入る。側面をカーブにしたディスプレーは握り具合も良く、誤タッチもなかった。Snapdragon 8+ Gen 1のパフォーマンスに不満が出ることは少ないだろうが、通信モデムが5G非対応なのは残念だ。

本体は握りやすいデザインをしている

 カメラ部分の出っ張りは台座からメインカメラ部分が1段階高く出ているが気になるほどでもない。ファーウェイのモデルはMateシリーズが円形の台座、Pシリーズが従来の背面左側にカメラを配置するデザインになっているが、HUAWEI P60 Proでは大きいメインカメラのレンズの上下に、サブの小さいレンズを配置しており、これを同社のアイコンとしていくようだ。

カメラの出っ張りは気になるほどではなかった

 本体のインターフェースは右側面に電源とボリュームボタン、下部にSIMトレイ、USB Type-C端子を備える。SIMトレイにはnanoSIMカード2枚、またはnanoSIMカードとファーウェイ開発のnanoSIMカード型メモリカード「NM Card」も利用可能だ。

 ただし、NM Cardは256GB以上の製品が出てきておらず、ファーウェイ以外への採用も広がらなかったこともあり、市場では入手しにくい。

SIMカードスロットにはNM Cardも利用可能

 今回使用したモデルはグローバル展開予定品で、OSはAndroid 13ベースのEMUI 13を搭載。ユーザーインターフェースはファーウェイ独自開発のHarmonyOSと類似しており、ホーム画面に配置したフォルダ内にあるアプリアイコンを直接タップして起動したり、アプリのアイコンを長押ししてウィジェットに変更する機能などを備える。Androidの標準的なユーザーインターフェースをさらに使いやすくしたといった感じを受けた。

EMUI 13には便利な機能が多く搭載されている。HamonyOSとほぼ同一の使い勝手だ

 AnTuTuのスコアは894066。Snapdragon 8 Gen 2搭載の他社のフラッグシップモデルと比較するとやや物足りないが、ハイエンドゲームでもプレイしない限りその差は感じられないだろう。ただ、カメラを操作したときにナイトモードでのAI処理は他社の最上位モデルよりやや時間がかかる印象も受けたが、実用上は気になるほどの大きな差とは感じなかった。

今回試用したモデルの基本情報。AnTuTuスコアは90万弱だった

もうライカではないが
カメラの使い勝手も向上

 ファーウェイは2021年7月発売のP50シリーズからライカとのコラボは終了しており、独自のイメージング処理システム「×MAGE」の搭載を始めた。HUAWEI P60 Proでは、カメラ部分にその×MAGEの文字が誇らしげに記載されている。3つのレンズはそれぞれ大きさや形状を変えているのも新しいデザインだろう。

HUAWEI P60 Proのカメラ周りデザイン

 カメラのモードはアパーチャ、夜景、ポートレート、写真、ビデオ、プロ、その他の7つ。カメラUIで大きく変わったのがビデオ撮影時の解像度の変更で、従来のUIでは画面右上の設定アイコンをタップして、設定項目の中からカメラの解像度をタップして、1080pや4Kの切り替えが必要だった。

 HUAWEI P60 Proでは画面左上に現在のビデオ解像度が表示されており、ここをタップすることで直接変更が可能になった。なお、他社のカメラUIは画面からワンタッチでカメラのクイック設定パネルを呼び出せるが、ファーウェイはそのUIを採用していない。細かい設定は毎回カメラの設定画面を開く必要があるのだ。

カメラのUI。写真、ビデオ、その他

 ×MAGEは夜景撮影も強化されており、夜景モードではシャッター速度を手動で1/4から32秒まで設定できる。三脚に固定しての長時間露光にも対応するわけだ。アパーチャモードはポートレートとは別にボケ撮影専用のモードであり、ソフトウェアで絞りを制御する仮想アパーチャはF0.95からF16、物理絞りを変えられる物理アパーチャはF1.4からF4.0までそれぞれ細かいステップで変更できる。

夜景はシャッター速度を変更可能。アパーチャでは絞りを仮想か物理で設定できる

絞りを操作したところ。F1.4(左)とF4.0(右)

 ハイレゾモードでは、メインカメラをそのまま4800万画素で撮影可能。ハイレゾ設定しない時はドットビニングで1200万画素の撮影となる。ハイレゾモードではセンサーに入ってきた光をそのまま処理して撮影できるように、AI処理のONとOFFの切り替えが可能だ。そして撮影した写真に入れるウォーターマークは写真左下に機種名などを入れる従来のモードに加え、最近流行りの枠外下部に余白をつけるモードも追加された。

ハイレゾモードはAIを切り替え可能。ウォーターマークは最近のデザインも追加された

カメラのクオリティーは変わらず高いことがわかる作例

 以下はHUAWEI P60 Proによる作例だ。

超広角で撮影(4160×3120ドット)

広角等倍撮影(4000×3000ドット)

ハイレゾモードで広角等倍撮影(8000×6000ドット)

望遠3.5倍撮影(4000×3000ドット)

デジタル望遠10倍撮影(4000×3000ドット)

F値の差を比較。F1.9で広角撮影(4000×3000ドット)

F4.0で広角撮影。背景のボケがなくなる(4000×3000ドット)

F値差は物撮りで顕著に表れる。上がF1.4、下がF4.0(トリミングしてサイズ変更済)

マクロ撮影。かなり寄って撮れる

夜景モード自動。シャッター速度は5秒だった。手前の明かりも白とびしない

【まとめ】ファーウェイのカメラ技術を知らしめる製品

 アメリカ政府の制裁を受けてから、ファーウェイのスマートフォンビジネスは表舞台から姿を消しつつある。一部のモデルはヨーロッパやアジアでも販売されているが、中国以外の国では発売時期も遅れ気味だ。グローバルモデルでもグーグルサービス(GMS)は非搭載、5Gにも非対応とソフトウェア、ハードウェア共に厳しい状況が続いているが、カメラの性能に関しては今でも申し分のない高いパフォーマンスを有している。

グローバル的には厳しい状況ながら、HUAWEIのカメラ性能は群を抜いている

 今後の展開は予断が許さないものの、ライカとのコラボで培ってきた同社のカメラ技術は、引き続きこれからもブラッシュアップが進むことを期待したい。

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