東京ゲームショウでSteam Deckが出展して以来、小型でコントローラーを搭載したゲーム機型のハンドヘルドPCの注目が一層高まっている。ハンドヘルドとは「片手で持てる」という意味の英語で、手で持ち運びができるサイズを言う。
そういった小型サイズのPCと言えば、過去にはいろんな種類のPCが存在するが、ゲーム機のコントローラーで使うボタンやジョイスティックを備えた製品は、2016年にクラウドファンディングで出資を募って登場した「GPD WIN」から始まっている。
GPD WINは格安なネットブックなどに採用されていた低消費電力のインテルCPU「Atom」シリーズを採用していた。しかし、その後PCゲームの動作が安定しているのは、インテル製よりもAMD製CPUの内蔵GPUの方が良いと言うユーザーの口コミもあり、今では高性能なAMD Ryzenモバイル・プロセッサーを搭載する製品が、圧倒的なシェアを誇っている。
そんな中、2023年4月1日のエイプリルフールに突如として公式で動画を公開して話題になったのが、今回ご紹介するASUSの「ROG Ally」(アールオージー エイライ)だ。ROG AllyはAMDが4月に発表したハンドヘルド・ゲーミングPC向けと謳う新しいAMD「Ryzen Z1シリーズ・プロセッサー」を、いち早く搭載した製品。
ラインアップは8コア/16スレッドのAMD「Ryzen Z1 Extreme」搭載モデルと、6コア/12スレッドのAMD「Ryzen Z1」搭載モデルの2種類ある。価格は前者が10万9800円で、後者が8万9800円。6月2日11時からはAMD「Ryzen Z1 Extreme」搭載モデルの予約が開始され、6月14日に販売。AMD「Ryzen Z1」搭載モデルは、2023年夏に予約と発売が開始するとしている。
「ROG Ally」の主なスペック | ||
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型番 | RC71L-Z1E512 | RC71L-Z1512 |
液晶ディスプレー | 7型(1920×1080ドット、120Hz、IPS、sRGB率100%、500nits) | |
CPU | AMD「Ryzen Z1 Extreme」 (8コア/16スレッド、最大5.1GHz) |
AMD「Ryzen Z1」 (6コア/12スレッド、最大4.9GHz) |
メモリー | 16GB(LPDDR5-6400) | |
ストレージ | 512GB M.2 SSD(PCIe 4.0、Type-2230) | |
インターフェース | ROG XG Mobileインターフェース&USB Type-Cコンボポート、マイクロSDカードリーダー(UHS-II)、3.5mmコンボオーディオジャック | |
無線機能 | Wi-Fi 6E(2×2)、Bluetooth 5.2 | |
サイズ/重量 | 280(W)×111.38(D)×32.43(H)mm(突起部を除く)/608g | |
OS | Microsoft「Windows 11 Home」 | |
価格 | 10万9800円 | 8万9800円 |
別途発表会の記事で、同社がどういった意図でこの製品を世に送り出したのかは詳しく解説しているが、クロスプラットフォームが進む中、PCゲームやコンソールゲーム、モバイルゲームも1台で遊べるようになれば、という思想の元に生まれている。
先に話題としたSteam Deckは、Valve社が開発したLinuxベースのフリーOS「SteamOS」を採用している。このSteamOSは世界最大級のPCプラットフォーム「Steam」のみを使うことを前提として作られている。デスクトップは存在し、Linuxで動作するブラウザやテキストエディタは使えるが、Windowsで動作する他のゲームプラットフォームは利用できない。
一方で、ROG Allyは一般的なPCで採用されているMicrosoftの「Windows 11 Home」を備える。GPD社他、競合他社のゲーム機型PCもWindowsを採用していて、Epic GamesやMicrosoft Store、EA appなど、Steam以外のプラットフォームのPCゲームも遊べる。
また、Googleが4月にベータ版を配信した「Google Play Games」などをインストールすれば、対応するスマホゲームも楽しめる。その他、Microsoft Xbox Game Passなどのクラウドゲームも当然プレイできるうえに、別途ハイエンドなPCがあればSteam LinkやAMD Linkなどでリモートプレイもできる。
これらは、Windowsを搭載している競合他社の製品でも可能だが、ROG AllyはPCパーツや周辺機器、スマホからPCまで扱う世界的企業であるASUSだからこそできる、同社が今まで培った独自の管理アプリや、スマホとの連携アプリ、サービスが利用可能。高い性能はさることながら、より幅広い遊び方と利便性を持った高性能機に仕上がっている。
前置きが長くなったが、では実際にどういったことが可能で、どれぐらいの性能を持つのか、事前にAMD「Ryzen Z1 Extreme」搭載モデルのサンプル機をお借りする機会を得たので、ご紹介したい。
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