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私→WRC

第37回

現役RQの荏崎ろあ、新城ラリーのメカニックを経験し改めてモータースポーツの楽しさを知る

2023年04月23日 12時00分更新

ラリージャパン以来のメカニック
いきなり監督不在という不安が

 皆さんお久しぶりです。現役レースクイーンの荏崎ろあです。今回私は3月に愛知県で開催された「JAF全日本ラリー選手権第2戦 新城ラリー2023」でメカニックをしてきました。3日間の様子をみなさんにお伝えしたいと思います。

 ラリーでのメカニック業務は今回で3回目です。昨年6月の「全日本ラリーモントレー群馬」で初めてラリーメカニックをさせていただき、11月にはWRCラリージャパンも経験しました。短い期間でコンスタントにやっていたので、実はこの企画でラリーメカニックを始めてからまだ1年も経っていないことに自分でも驚きました。

2022年6月の全日本ラリーでメカニックデビュー。RQと二足の草鞋に

 ラリージャパンという会期が長く、作業内容も多い世界戦も経験できたので、それと比較すると今回の新城ラリーは怖気づくことなく参加できました。参加メンバーもドライバーの村田康介選手、コ・ドライバーの梅本まどか選手、メカニック側はチーフの早水雄一郎さんと和田裕憲さんと聞いていたので、これまでと変わりないチーム構成だから大丈夫だろうと思っていたら、後日送られてきたチームムーブメントに衝撃の事実が……。

ラリージャパンのときは1日が長かった……

 なんと松井監督の名前がありません。なんとご家族のご病気のフォローのため、監督が来られなくなってしまったようで、私はびっくりしました。これまでわからないことがあったときも、監督が常に近くにいたのでなんとかなっていたのですが、監督不在のラリーは初めてで一気に不安になってしまいました。それでもこれまでの経験で乗り切るしかありません。結局のところ金曜日は数時間だけ現場にいらっしゃったのですが、すぐに帰京されました。

 今回の全日本ラリーの舞台となる新城ラリーは、2023年で開催20周年を迎えました。有観客での開催は実に4年ぶりでしたが、多くの来場者で盛り上がっていました。メイン会場となる県営新城総合公園ではWRCで大活躍中の勝田貴元選手がGRヤリス Rally1ハイブリッドで、トヨタのヤリ=マティ・ラトバラ監督が愛車のセリカ GT-FOUR(ST165)でデモランを披露していました。

 初日の金曜日、私たちメカニックは車検対応がメイン業務となります。今回ウェルパインモータースポーツはGRヤリスで参戦しゼッケン番号は16です。金曜のサービスパークに到着すると、まずは洗車とステッカー貼りです。規則で指定された位置に、ゼッケンとスポンサーロゴを貼っていきます。これは何度も貼っているのでさすがに慣れました。

 公式車検は金曜の12時から予定されていて、すべての参加車両は大会の規則に則った車両改造であるかチェックを受けます。クルーの装備品も同様で、ヘルメットやHANS、スーツなどがFIA公認のものか、アンダーウェアや靴下まで選手が身に着けるものはすべてチェックしてもらう必要があります。そのほか、灯火類、車両装備品&安全装備の確認。最低地上高と車両重量の計測、排ガス確認などの検査があります。

車検のための整備をします

 これらすべてをオフィシャルにチェックしてもらい、しっかり合格しないとせっかく現地まで来ても出走不可ということになります。ラリージャパンほど車検は混まないと思いましたが、実際はかなり並んでチェックしてもらいました。

 サーキットとは異なり、今回はサービスパークである新城市総合公園の駐車場が車検場なので、すれ違うのも大変なほど狭かったです。順路に沿ってチェックを受けるのですが、車検作業も慣れてきたのでドライバーとコ・ドライバー分の荷物を確認してもらい、その間に車両のチェックを受けます。ラリージャパンの時に車検で一度落ちてしまったので、少し不安もありました。車両をじっくりチェックされると緊張しましたが、問題なく進んでいました。

 しかし、GRヤリスはリヤにバッテリーがあるのですが、そのバッテリーを保護するためにケースで覆っている部分を検査員の方に「外して見せてください」と言われました。私たちもまさかここを外してほしいと言われると思ってなかったのと、この箱はドライバーがないと外せないタイプで、今回工具を持ってきてなかったので焦りました。和田メカニックが走り周り、知り合いからドライバーを貸してもらえたので無事にバッテリーを確認してもらうことができ、そのほかの検査もクリアして無事に合格をもらうことができました。これで一安心です。

いつもお世話になっている早水チーフメカ

和田メカニックにもいろいろ教えてもらいました

 ドライバーたちは車検が行なわれている間、レッキで実際に走る道を競技車両ではない車で最終確認します。レッキから戻ったあとは、ドライバーの安全講習会を行ない、Leg1のスタートリストが公開され、16時30分から開会式が始まりました。

 今回はウェルパインのレースクイーンとして、Aiちゃんが参加でした。SUPER GTでも昨年何度かお話したことがあるため、今回来てくれてうれしかったです。女性の割合が少ないラリーの中で、女の子が多いのは注目度も上がりますよね。私はサービスにいるので、開会式~セレモニアルスタートにはAiちゃんが立ってくれました。本当にかわいくてやる気がさらに上がりました。

今年からAiちゃんがRQに加わりました

セレモニアルスタートに立つAiちゃん

行ってらっしゃい!

 初日のメイン作業である車検が無事に終わったので、この日は早めの解散です。

今日からが本番のLeg1
いきなりアクシデントが発生

 土曜日のLeg1は7時にホテル出発でした。ラリージャパンが4時台だったのでそれでも遅く感じますね。スタッフ移動車両用と指定されている駐車場からサービスパークが非常に遠く、イベント広場からも遠いので朝から歩き回ってヘトヘトです。私たちのGRヤリスのスタートは9時45分予定で、最初のサービスAまではSSを3つ走ります。出発前に車両の簡単な整備&確認、ブレーキの暖めなどを行ない、クルーを送り出しました。

 次のサービスAは13時くらいの予定なのでその前に準備を済ませます。このサービスは長めの45分サービスです。準備をしていると、梅本選手から「SS1のスタート直後に左のリヤホイールを割って、さらに左フロントも破損してしまった」と連絡がありました。クラッシュした衝撃でアライメントも狂ってしまい、ステアリングセンターも大幅にズレているとのこと……。いきなり最初のサービスAからガッツリとした整備が必要になるな……と思い、焦りました。

タイヤの空気圧チェックも重要なお仕事です

 その後、SS2とSS3を慎重に走り切ってサービスに戻ってきたGRヤリス。不幸中の幸い、ボディーなど他にダメージはなさそうです。メカニック3人で手分けしてアライメント調整をして、タイヤを2本交換しました。

戻ってきたGRヤリスの誘導をします

 今回もサービス後にはラリージャパンと同様にスペアタイヤのチェックを受ける必要があります。設置された指定のタイヤチェックポイントで、タイヤの本数とマーキングをもらうためにタイヤを降ろします。久しぶりに持つGRヤリスの18インチタイヤはやはり重かったです。

 このサービスが終わると、次はSS4「新城総合公園2」(0.6km)、SS5「Onikubo2」(6.72km)、SS6「GampoNorth2」(10.69km)と午前と同様のループが続きます。

18インチのタイヤは重い……

 次に私が作業するのは16時台のサービスB。この日最後の60分サービスで、アーリーサービスアウトもOKです。つまりサービス時間がまだ残っていても、早くサービスを出てパルクフェルメに入れることが可能です。

 そして再びサービスに戻ってきたGRヤリスと見ると、なんとまたしても左側のホイール2本が曲がっていました。これまでにこのラリーのために用意した特注色の新品4本のホイールがダメになってしまい、グループLINEで報告を受けた松井監督でショックを受けていました。

 私も愛車のインプレッサでWORKという同じホイールメーカーの製品を使用しているのでわかりますが、18インチで新品となると4本で20万円くらいするので、松井監督の気持ちが痛いほどわかるのです(笑)。モータースポーツにはこのようなトラブルはつきものとは言え、本当にお金がかかる競技だなと実感しました。

 このサービスも誘導、ジャッキアップ、タイヤ外してアライメントセンターずれを調整し、割れてしまったホイール左前後を交換しました。残り使えるホイールは限られているので「村田選手……お願いもう割らないで」という気持ちでパルクフェルメに送り出しました(笑)。

汚れた車体を綺麗にします

 ウェルパインのGRヤリスのサービスが終わって片付けをしていると、早水メカニックが同様にサービスを担当しているゼッケン19のBRZがリタイアになったとの報告がありました。エンジントラブルで動けないため、SSコース内の停車しているところまでお迎えに行き、同時に積載車の手配等も必要だったので、かなり大変でした。BRZの回収に時間がかかり、この日はホテルに戻るのが遅くなってしまいました。

 まだラリーでのチームリタイアを経験したことがないので、リタイヤ後のチーム対応を学ぶ良い経験になりました。でも、もちろん村田選手と梅本選手には、無事にフィニッシュを迎えてほしいです!

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