2023年のENEOSスーパー耐久シリーズ Powered by Hankookが開幕。昨年、ST-3クラスで3年連続チャンピオンに輝いた冨林勇佑はチームメイトの石井宏尚とともにST-4クラスにスイッチし、新加入の水野 大とともに「エアバスター WINMAX GR86 EXEDY」で2023シーズンに臨む。
3月18~19日に鈴鹿サーキットで第1戦 SUZUKA S耐では、終始トップ争いに絡み、最後はST-4クラス2位で初戦を終えた。
昨シーズンからGR86が登場し、盛り上がりを見せつつある冨林。今季は前述の通りST-4クラスの41号車でエースドライバーを務めるかたわら、昨年まで在籍していた39号車「エアバスターWINMAX RC350 TWS」のドライバーたちのアドバイザー役も兼務している。冨林にとっては忙しい1年になるのだが、新たな挑戦ということで、本人も楽しみながらレースに臨んでいる様子だった。
予選日はタイムが出しにくい雨に
そんな中で迎えた開幕戦なのだが、土曜の予選日はあいにくの雨模様に。午前中のフリー走行ではウエットコンディションでの走行となった。それでも、セッション終了後には雨が止み、午後の予選にかけて路面コンディションも回復していった。
通常ならAドライバーから予選が行なわれるのだが、今回はコンディションを考慮してBドライバーの予選を先に行なうスケジュールに変更。今季はBドライバー登録となっている冨林からのアタックとなった。
ところどころ濡れている箇所はあったがスリックタイヤでピットアウト。2分20秒905をマークし、クラス2番手につけた。続くAドライバー予選では石井がアタックを担当。今年からAドライバーの登録規定が全クラスに導入され、基準に該当しないドライバーには、実績に応じてハンデキャップが設けられる。41号車は石井がAドライバーとして登録されているため、予選セッションの最初10分はピットで待機しなければならない、つまりタイムアタックできる周回が限られるというハンデだった。今回のような一部濡れた場所が残る路面コンディションではあるのだがトップから0.468秒差の2分22秒685を記録し、クラス3番手につけた。
2人合計の総合タイムでは4分43秒590となり、ST-4クラス2番手を獲得。今年は強力なライバルチームも多数参戦するなか、そんな彼らと競り合える手応えを感じさせる予選結果となった。
初戦から2位表彰台を獲得
今年もチャンピオンが期待できる走り出し
3月19日の決勝日は、一転して晴天に恵まれ、ドライコンディションで5時間レースがスタートした。41号車のスタートドライバーは冨林が担当。1周目にクラストップの884号車シェイドレーシングGR86がAドライバーハンデでピットインをしたため、そのままトップに浮上した。しかし、今年のST-4クラスは強敵揃い。すぐにほかのライバルが背後に迫ってきた。3号車のENDLESS GR86が41号車の真後ろにつき、トップを奪いにくるが、冨林もうまくほかのクラスとの混走を利用するなどして、トップを死守。昨年はSUPER GTでも経験を積み、一段と磨きがかかった走りが光った。
3号車の猛追をしのいでからは、順調に周回を重ねていた41号車だが、開始1時間を経過したところでトラブル車両が発生し、FCY(フルコースイエロー)が導入された。昨年まではFCY導入直前のタイミングでピットに滑り込むなど柔軟な動きを見せていたが、今回はタイミング的にそれが叶わず。その後セーフティカー先導に切り替えられたところで、ピットストップを行ない、石井にドライバー交代した。
これに対し、3号車はFCY直前のタイミングでピットストップを済ませており、レースが再開されると両車の差はおよそ1分。41号車は大きなビハインドを背負ってしまうこととなった。さらに石井にとっては初めてのST-4クラスということで、混走での走らせ方などで戸惑いながらの走行となったが、大きなミスもなく周回を重ねていった。
開始から2時間50分を経過したところで2度目のピットストップを実施し、水野 大に交代。引き続き、トップ逆転のため追い上げていく。
しかし、その差は大きく縮まることはなく3号車は約1分前方。さすがに今回は打つ手がないかと思われたが、チェッカーまで残り1時間30分というところで3号車がトラブルを抱えてピットに戻ってきたのだ。これで形勢が逆転し、41号車はトップ争いに再浮上した。
ここで41号車は早めに最終スティントに臨むべく、3度目のピットストップを敢行。ここで冨林が再び乗車する。あとはトップを目指すだけというだけだったのだが、このあたりから4速が使えなくなるトラブルが発生。鈴鹿サーキットで4速を使えないというのは致命的なのだが、それでもなんとかだましだまし走行を続けた。
ちょうどその時、コース上で大きなアクシデントが発生。残り45分ほどのところで赤旗が出された。ガードレールも大きく損傷を受けていたこともあり、そのままレース終了。これにより41号車は2位で初戦を終えた。
また、ST-3クラスに参戦している39号車はクラスポールからスタートし、上位争いを展開するも、41号車と同様に途中終了の影響が響き、ST-3クラス2位。同じくデルタモータースポーツから参戦する38号車「ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWS」はST-3クラス3位となった。
デルタモータースポーツ田中代表 コメント
「仕方がないことなのですが、途中で終わってしまったことで、まだ3回のピットストップを終えていないチームが前に出る結果となりました。それがなければ、ST-4クラスは41号車が勝てましたし、ST-3クラスもうちがワンツーを獲れていたと思います。でも、本音としては『なぜなんだ……』という心境です。今回は時間がないなか、トレーシーさんがクルマを完璧に仕上げてくれましたし、メカニックも現場で素晴らしい作業をしてくれました。ドライバーも予選2番手を獲得するなどいい仕事をしてくれました。次は富士24時間になりますが、ずっと悔しいレースが続いているので、今年はなんとしても勝ちたいです。そういう意味でも、ウェイトとかを考えると今回は2位で良かったのかもしれません」
冨林勇佑選手 コメント
「序盤は路面温度が高くなって、タイヤの内圧が思いのほか上がってしまったので厳しいところはありました。あまり無理をするつもりもなかったんですけど、相手の布陣とかを考えるとすんなり行かせたくないと思っていました。同時に、バトルをすることによってほかのチームとの差が縮まってしまうのは良くないなとか、色々考えながら走っていました。思いのほか、別クラスとの巡り合わせも良くて、うまく1位でスティントを終えられました」
「最終的に2位でしたけど、最後のピットストップを終えてから4速がなくなってしまって、それでペースが上がらなかったですし、ほかの部分も怪しくなりはじめていました。手負いの状態で、いつ止まってしまうか分からなかったんです。最後にコース上で起きたアクシデントは残念でしたけど、レースが途中終了になったというのは、僕たちにとっては助けになった部分もありました。次は富士24時間なので、そこで勝つことに集中していきたいです」
石井宏尚選手 コメント
「クルマに関しては、予選での冨林選手のタイムをみても周りと競い合える手応えは十分にありましたし、そこに対して僕や水野選手が乗っても速いクルマに仕上がっているのかなと思います。今回レースをして感じたのが、ST-3クラスと比べてバックマーカーの処理が難しいところがあって、ST-4クラスに乗っていると、ST-5クラスの加速が意外と速いので、そこの辺をうまくやらないと一気にペースが落ちてしまうので、はやく慣れていかないといけないと思いました」
水野 大選手 コメント
「予選では2人が良いアタックをしてくれて、レース序盤も冨林選手が良い走りをしてくれたので、あとは中盤の石井選手と僕のスティントでミスをしなければ、勝てるなと思っていました。結果的に、レース途中終了で2位となりましたけど、正直、トラブルが出ていて手負いの状態だったところもありました。開幕戦としては、上できだったかなと思います。ただ、個人的にはドライビング面で課題も見つかったので、次のレースまで時間があるので、克服できるようにしっかり取り組んでいきたいです」
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