動画や音楽のフィンガープリントを読み取り
一致精度の「ゆらぎ」を吸収する
例えばコンテンツに音楽が含まれる場合、Content IDに楽曲名やアーティスト名などの「原盤メタデータ」のほか、作曲作詞家などの「著作権メタデータ」を登録すると高い精度で幅広い著作権の利用特定が可能になる。その上で著作権者は先述のポリシーを設定する。
JASRACはYouTubeとのパートナーシップを結んだ当時から、アップロードされるコンテンツの著作権管理を共に押し進めてきたが、今年の2月からContent IDの活用を強化する。
Content IDのツールには、著作権者がアップロードした動画・音楽ファイルに「フィンガープリント」という情報を自動生成して追加する機能がある。一般のユーザーがYouTubeに動画コンテンツをアップロードした場合も、やはり同様にフィンガープリントが生成される。
フィンガープリントとは、動画や音声の特徴点を符号化した情報のこと。コンテンツのマッチング処理を行う際、フィンガープリントを読み取ることで、著作権者の動画・音楽と「まったく同じ」ではないコンテンツの「ゆらぎ」を吸収し、「迂回アップロード」のフィルタリングが可能になるとグーグルはその効果を説明している。
例えば動画の場合はアスペクト比、左右反転、色の変更、画面比率の変更など、オリジナルの動画の変更の手を加えた場合も特徴点の情報が一緒であれば同一のコンテンツと見なせる。
音楽の場合もやはり、音程やピッチを変えたり、意図的にノイズを乗せたコンテンツは特徴点情報の一致精度を解析して権利の所在がさかのぼることができる。音楽の場合は「メロディラインの特徴点」を抽出することから、例えば「歌ってみた」系のカバー演奏の動画も元ネタが正確に判定できる。
YouTubeショートの収益化プログラムも開始した
2023年の2月1日からYouTubeパートナー プログラムの規定が変更され、2021年7月から利用できるようになった最長60秒の「YouTubeショート」の動画クリエイターも長尺動画と同様に広告収入の分配が受けられるようになった。
クリエイターが収益化の資格を得るためには、ショート動画収益化モジュールへの同意が必要だ。さらに「チャンネル登録者数が1000人以上」であることに加えて、「直近12ヵ月間の有効な公開動画の総再生が4000時間以上」か、または「直近90日間の有効な公開ショート動画の視聴回数が1000万回に到達していること」などが条件になる。
YouTubeショートの広告収益分配の仕組みは長尺動画のそれと異なる。ポイントはショート動画の場合は1件の動画あたりに広告が付くわけではないため、広告収益はいったんプールされた後に、コンテンツの視聴回数と音楽の使用状況の解析結果に基づいて適正に割り振られる。
YouTubeショートには音楽権利処理を明快に、かつ簡潔にするための施策としてショート作成ツールに「サウンドを追加する」という機能を設けている。こちらのオーディオライブラリに含まれている楽曲は権利関係がクリアランスされており、非営利目的のコンテンツは別途ライセンスが不要になるというものだ。この機能は長尺動画の作成ツールには含まれていない。グーグルは、より多くのクリエイターに音楽を使ったショート動画をアップしてもらうための機能と説明している。
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