早くも6Gの取り組みを展示
富士通ブース
「MWC Barcelona 2023」の富士通ブースでは、O-RANや6Gへの取り組みなど新しい技術の展示が行なわれていた。
ハードウェアの展示では5G向けの無線機器が展示された。5Gの無線機器はRU(電波・アンテナ等の制御)、DU(変復調やMedia Access Controlの制御)、CU(RU/DU制御やコアネットワークへの接続)という3構成となる。RUは3タイプを展示し、いずれもO-RANの規格に準拠、KDDI向け、Dish Netowrks/ドイツテレコム向け、ドコモ向けを展示した。CU/DUはKDDIがサムスン、DishがMrvenirなど、ドイツテレコムがノキア、ドコモがNECなどを採用しており、富士通のRUはマルチベンダーのCU/DUに対応している。
富士通のRUが通信キャリアに選ばれる理由は、このマルチベンダー対応である点と、2年前からO-RANのテストにかかわっており、各ネットワークベンダーとの接続テストを早い時期から行なっていたという実績が評価されているという。また、欧米キャリアの中には現在の無線機器を中国ベンダーから切り替える動きが追い風になっているとのこと。
さらに富士通の5G RUは消費電力も低い。富士通はLTE時代からRUの省電力化に注力していたが、当時は価格重視の時代で、なかなか海外展開は難しかった。しかし5G時代になり、一転して低消費電力が事業者側のRU選択理由になっている。ちなみにRUは無線機器全体の中で約7割もの電力を消費する装置である。
この低消費電力を実現するためにRUのパワーアンプも自社開発をしている。従来は窒化ガリウムの部品を購入してそれを基盤上に実装していたが、すべて内製することでMCM(Multi-Chip-Module)とし、大幅な小型化を実現。さらに自社のRUに最適な性能を持たせることができる。MCMの小型化はRU本体サイズも小型化でき、海外への輸送コストも大幅に引き下げられる。このMCMはSub 6対応で2023年末からRUに実装していく予定。また、ミリ波向けや6GのSubテラヘルツ(100GHzや300GHz)向けのパワーアンプも現在開発中だ。
RUの上位に接続されるCUとDUは、現在多くのベンダーがそれぞれ別々のサーバーで運用しているが、富士通はCUとDUを1つのサーバーに組み込むvRANを開発した。さらにDUのプロセス処理にNVIDIAのGPUを導入。GPUはAI処理にも使うことができ、1つで2役をこなせる。富士通はこのシステムをを5G VRAN AIO(All In One)Edge Solutionとして展開予定だ。
たとえばカメラを通した映像を5G回線を通してNVIDIAのソリューションを使い、生映像をVR映像に変換してタブレットなどに送信するといった応用も可能になる。リアルな映像をデジタルツインとしてバーチャル世界へリアルタイムに表現できる。
そしてネットワークの監視を行なうSMO(Service Management and Orchestration)も展示された。SMOは5Gネットワークから登場した新しい概念で、RU/DU/CUの上位側からネットワークを誰もが簡単に監視できるようにするというもの。従来は1つのメーカーのネットワーク機器でネットワークが構成されており、保守管理もネットワークベンダーが行なうためにコストが割高になっていた。
今後ネットワークのオープン化が進めばマルチベンダーの機器を組み合わせることとなるため、SMOは自社で行なうことが現実的なものとなる。富士通のSMOではAI機能を取り入れ、人を使わずにネットワーク制御の自動化も進めることを視野に入れている。
SMOは無線周波数の効率化やユーザー満足度のアップ、キャリアの省力化、無線ネットワーク運用の効率化や省電力化が期待できる。一例として基地局のAI制御がデモされ、ユーザーが少なくなりネットワーク負荷が減ったときに自動的に電力を下げることで最大50%の電力削減を可能とした。また、深夜にネットワークを低電力で動かし、朝になったときにユーザーが増えネットワーク側の回復が間に合わず通信品質が低下することがないように、AIが基地局の利用実態から早め早めに元の能力に戻していく、といった制御も可能だ。これによりユーザー満足度を下げずに省電力化を進められる。
ネットワークのオープン化により、ネットワーク設備市場は今まで以上に競争が激しくなる。特に新しいプレーヤーの参入が今後増えるだろう。富士通は4G時代からの無線技術ノウハウを武器に、グローバルの5G、6G市場へ攻勢をかけようとしている。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります