今回のひとこと
「2023年のインテルのテーマは『肇(はじめ)』。この漢字には、切り開くという意味がある。不確実で、不透明な時代だからこそ、ここを起点になにかをはじめなくてはならない1年だといえる。そして、わからないことがあれば、それを知るための努力をしていく」
Integrated Device Manufacture 2.0の推進
インテルの鈴木国正社長は、2023年の日本におけるインテルの取り組みを、「肇(はじめ)」という漢字一文字で表現した。
その理由を次のように語る。
「ここ数年を振り返ると、ウクライナ情勢をはじめとした地政学的な課題が顕在化し、コロナ禍の影響が長期化。部材価格や物量費用の高騰、エネルギー価格の上昇などによって、社会環境や経済環境に大きな変化が生じている。この流れは2023年も続き、依然として、不確実で、不透明な時代が続くことになる。だが、見方を変えれば、ここを起点になにかをはじめやすい年でもある。この『肇』という漢字には、切り開くという意味がある。切り開くために、新たなことに取り組まなくてはならない1年になる」
その上で、「将来を念頭に置き、市場を牽引する製品の開発や提供、半導体サプライチェーンの強靭化を支えるIDM(Integrated Device Manufacturer)2.0の推進、サステナビリティに向けた取り組みの加速、デジタル人材の育成といった取り組みにより、インテルは、産業や社会に寄り添いながら、持続的な成長を続けていくことになる」とも語った。
4年間に5つのプロセスノードを実現
インテルのグローバル全体の取り組みにおいても、「切り開く」ための新たなことがはじまっている。
振り返ってみると、2022年は、1月に米オハイオの新工場に200億ドルを投資することを発表したのに続き、3月にはドイツの新工場やEUにおける研究開発拠点の設置に365億ドルの巨額の投資を行なうことを発表。さらに、以前から発表している既存工場の拡張も同時に進められているところだ。2023年はこうした製造分野における投資が、より具体的な動きとなってくるだろう。これにより、旺盛な半導体需要に対して、製造能力を一気に高め、将来に渡る安定した供給体制を実現することを目指す。
また、IDM 2.0では、社内ファウンドリ事業モデルを新たに導入。新たなフェーズへと進んでいる。
IDM 2.0は、インテルの製造規模と長期的な成長を回復させるための戦略と位置づけられており、第1段階では、プロセス技術の新たなロードマップの推進と、生産能力の大幅な拡大に向けた投資を発表。4年間に5つのプロセスノードを実現するロードマップを打ち出している。
ロードマップの最初となるIntel 7による新たなプロセスノードは、2022年のAlder Lakeの投入によって計画通りに実現。2023年にはIntel 4やIntel 3の製造を開始し、FinFET世代の集大成として、この製造技術による製品が市場投入されることになる。さらに、2024年にはオングストローム世代に突入。Intel 20AおよびIntel 18Aの製造が開始される。
こうした動きを推進しながら、IDM 2.0の第2段階の取り組みとして打ち出されたのが、「社内ファウンドリ事業モデル」だ。これは、インテルにとって初めての試みであり、企業としての考え方と運用の仕組みを大きく進化させるものになる。
具体的には、インテルの製品グループは、インテルファウンドリー・サービス(IFS)を利用する社外の企業と同じ立場となり、製造チームは、実際のコストと工場の生産容量への影響範囲に基づいて、最も効果的でコスト効率の高いソリューションを見つけて、シリコンに実装。結果的に、工場の製造力の最大化とコスト削減、設計サイクルの短縮につながるという。これまでのインテルの半導体製造の概念を覆すビジネスモデルがスタートすることになる。
そして、新たなCPU製品が、2023年の年初から相次いで発表されている。2022年9月に発表された「第13世代インテル Coreプロセッサー」は、それまでのデスクトップ向けに加えて、2023年1月にはノート向け製品を発表。また、同じく2023年1月には、データセンター向けの「第4世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー」や、HPCやAIに最適化した「インテル Xeon CPUマックス・シリーズ」、アクセラレーテッドコンピューティングシステムの「インテルデータセンターGPUマックス・シリーズ」を、それぞれ市場投入することも発表した。
インテルの鈴木社長は、「新世代のXeonは、AIからクラウド、ネットワーク、エッジ、スーパーコンピュータの分野に対して、データセンターの性能や効率性、セキュリティを強化する多彩な新機能を提供しており、インテルがデータセンタービジネスにおけるリーダーシップを再び確立し、新たな利用分野においても足場を固めることができる」と意気込みを語った。
このようにインテルのグローバル戦略や製品戦略も、新たに「切り開く」フェーズへと入っている。
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