11月25日、西新宿で開催された「スマートシティフェスタ」の基調講演に東京都の宮坂学副知事が登壇した。超高層ビルの立ち並ぶ西新宿ならではの最新テクノロジーに固められたスマートシティ像とは異なり、宮坂副知事が描いたのはデジタルで人がつながる共創型のまちづくり。そのヒントは先行するスペインのバルセロナにあったようだ。
先行重点エリア「西新宿」が進むスマートシティへの道
平井 理央アナウンサーの紹介で登壇した宮坂学副知事は主催者の代表として挨拶。普段と違う西新宿エリアを楽しめる「FUN MORE TIME SHINJUKU」の一環として開催された「スマートシティフェスタ」について説明し、自動運転やXRなど西新宿で実装を目指すスマートシティの技術を楽しんでもらいたいとアピールした。
東京都が推進する「スマート東京」の先行重点エリアである西新宿は、5Gと先端技術の都市実装を進めており、地元エリアマネジメント団体を中心とする「西新宿スマートシティ協議会」を2020年に発足。おもにオフィスビルのビジネスパーソンにまちの課題を聞き、さまざまなスマートサービスによる解決を目指している。
今年度は地元企業や大学まで巻き込んだ「西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム」も発足。宮坂副知事は、「協議会とコンソーシアムが車の両輪のような動きをすることで、西新宿のスマートシティ化がより加速することを期待している」とコメントした。
続くトークセッションには宮坂副知事に加え、さまざまなスマートシティプロジェクトに参画する一般社団法人スマートシティインスティテュート専務理事 南雲 岳彦氏、一般社団法人 新宿副都心エリア環境改善委員会 技術担当理事の小林洋平氏がゲストとして登壇した。
「FUN MORE TIME SHINJUKU」の主催団体でもある新宿副都心エリア環境改善委員会は、西新宿地区全体での議題解決や都市間競争力の向上を目指し、民間企業十数社で2010年6月に発足している。「このまちに住んでいる方、働きに来られる方が、豊かな時間を過ごせるようにしていきたい」(小林氏)とのことで、西新宿のオープンスペース活用やサービス実装を進めている。
超高層ビルが立ち並ぶ最先端のまち西新宿のQOLを向上
そもそもスマートシティとはなにか? 内閣府の「Society 5.0」では「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域」と説明されている。
南雲氏は、「まちのいろいろな社会課題をテクノロジーやデータを使って解決すること」とわかりやすく説明する。たとえば、コロナ禍を経て、テレワークで会社に行かなくても仕事ができたり、免許を返納しても移動できる手段を使えたり、役所に行かなくても行政サービスを利用できるようになっている。テクノロジーを活用することで、まちがスマートサービスを実装することが可能になる。
南雲氏は、「今まで我慢していたことを我慢しなくてよくなる。生活の質が上がり、まちが人にやさしくなっていくというのが、スマートシティの意味すること」と語る。
これに対して東京都はスマート東京を掲げ、スマホのような便利でやさしいまちづくりを目指している。特に都庁のある西新宿は、その先行エリア。西新宿に関わる団体で作られた西新宿スマートシティ協議会が地元の課題を把握し、デジタル技術を活用して解決を図っていくことで、「このエリアに関わる人たちのQOL(生活の質)を向上させる」という目的を達成していくという。
西新宿スマートシティ協議会に参画する新宿副都心エリア環境改善委員会の小林氏は、「西新宿は超高層ビルが40本近く立っています。一番最初は京王プラザホテルが1971年なので、50年以上経っています。超高層ビルエリアの走りですし、地域冷暖房も世界で一番発達している。最先端をこのエリアに備えている」と西新宿エリアをアピールする。
また、西新宿というと超高層ビルやビジネスのイメージもあるが、最近は新宿中央公園も芝生化され、ファミリー層も多く住まう。また、ホテルも7000室近くあり、外国人観光客が多いのも特徴だ。
一方、課題となるのはエリア全体の「回遊性」と「滞在性」だ。このうち回遊性の解消に期待されているのが自動運転。今回のスマートシティフェスタでは、駅と公園を結ぶルートで自動運転を提供し、サービスに結びつくフィードバックを得たいという。このうち滞在性に関しては、空間活用が重要になる。SOMPO美術館をはじめとする西新宿エリアの美術館もこうした取り組みのうちの1つだが、今回は公共スペースに椅子や机を設置したり、都庁前の「都民広場」に人工芝を張り巡らせる取り組みを行なっている。
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