「iPhone 14」は衛星通信だけでなく、eSIMの普及を進める立役者になるかも(佐野正弘)
2022年も新たなiPhone「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」シリーズ計4機種が発表されました。事前の噂通り「mini」のラインアップがなくなり、全モデルが6インチ以上になるなど大画面化が進んだ新iPhoneですが、今回筆者が注目したのは通信関連の機能です。
その通信機能で関心を呼んだのは、やはり衛星通信を活用した緊急SOSの機能ではないかと思われます。衛星と直接通信して通話や通信をする仕組み自体は以前からありましたが、対応するには端末側に、衛星からの電波を受信する非常に大きなアンテナを搭載する必要がありました。ですがiPhone 14シリーズではそうしたアンテナを搭載する必要なく、衛星と直接通信できる仕組みを実現したことに驚きがあります。
とはいえそれだけに制約も多いようで、利用できるのは緊急SOSと位置情報の共有のみで、利用できる通信量も少ないことから通信時間を短くするよう、テキストを圧縮する独自技術なども活用しているとのこと。また通信する際も、上空が見える場所でアプリの指示に従って衛星の方向に端末を向けるなどの操作が必要で、手軽に利用できる訳ではないようです。
ですが5Gの次の世代となる6Gの時代には、地上だけでなく空や宇宙などもエリア化することが求められており、そのためにも今後スマートフォンで衛星と通信ができる技術の確立は重要と見られています。衛星通信が利用できるのは当初米国とカナダのみとのことですが、今後の通信技術の発展を見据える上でも、日本をはじめより多くの国で、早期に利用できるようになることに期待したい所です。
そしてもう1つ、通信に関連して筆者が注目したのはeSIMです。米国では携帯電話会社の協力によって物理SIMを廃止、eSIMのみを搭載したモデルだけが販売されるとのこと。日本ではeSIMの利用がまだあまり進んでいませんが、アップルがeSIMの積極活用に舵を切ったことは、少なからず日本のeSIM利用促進にも影響を与えるのではないかと考えられます。
実際NTTドコモは「緊急メンテナンス」のため1年近くにわたって続いていた、既存ユーザーがオンラインショップでeSIMを発行できない状況が、iPhone 14シリーズの発売直前となる2022年9月14日の10時に解消されることを明らかにしています。とりわけ日本の携帯電話会社は、一部を除いてeSIMへの対応に後ろ向きな傾向が続いていただけに、今回のアップルの姿勢変化を機として対応改善が進むことに期待したい所です。
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