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電力の安定供給に向けて北海道電力でMicrosoft HoloLens 2とMicrosoft Azureを用いたMR技術を活用

2022年08月12日 14時00分更新

 マイクロソフトは8月12日、公式ブログにて北海道電力における国内初という火力発電所の巡視点検でのMixed Realityの活用事例を公開した。

 北海道電力が7月26日に発表した内容をもとに、取り組みの経緯や特徴などを紹介している。

 北海道電力の火力発電所では設備のトラブルを未然に防止するため、発電所員が1日に2~3回、所内の設備をおよそ2時間かけて巡視・点検しており、とくに石炭を燃料とする火力発電所は液化天然ガス (LNG) の発電所と比べて機器が多いことから数千におよぶ点検個所がある。異常な音や臭いに対する知識や経験も活用して進めるため、ベテラン所員のスキルや知見を、どのように標準化して、若手所員に継承していくのかが課題となっているという。

 北海道電力ではデジタル技術の活用に積極的で、2020年12月よりアイデアを出し合うアイディエーションを実施。そこから生まれたアイデアのひとつを発展させたものが、MRを活用した巡視点検業務用のアプリケーション(以下、巡視点検アプリ)。2021年6月には巡視点検アプリのプロトタイプが完成、苫東厚真発電所の実際の設備で点検ルートを設定。実証試験を行ない若手所員や技術者の習熟期間短縮の有効性が確認できたことから2021年11月から開発に着手。2022年7月下旬より使用を開始した。

 巡視点検アプリは「Microsoft HoloLens 2」をベースとしたヘルメット一体型デバイス「Trimble XR10」、Microsoft Azureのクラウドサービスだけで発電所のおよそ2kmにわたる広範囲な巡視点検のナビゲーションを実現。Trimble XR10に表示された順路に沿って移動すると現在地に対応した作業指示や参考資料が自動的に空間上に表示され、より正確で迅速な巡視点検を支援。

 巡視点検のルートや点検個所を登録する際はTrimble XR10を装着した所員がアンカーを設定したい場所に立ち、Azure Spatial Anchorsを使ってAzure上にアンカーを保存するだけで完了し、GPSやビーコンなどを必要としないことから、巡視ルートや点検内容を容易に変更できる。また、将来的には計器類の値の自動判定や危機察知に、Azure Cognitive ServiceのAIの画像認識を活用することも検討しているという。

 同社では従来、点検項目をMicrosoft Excelのチェックリストにまとめ、リストに沿って巡視点検を実施していたが、巡視点検アプリでは空間上に「確認」ボタンが現れ、点検後に「確認」をタップすることで、その日時情報とともにクラウド上に保存。さらに同社では、現在のところ紙ベースで行なっている多くの作業をデジタル化し、ペーパーレス化を推進していく予定だという。

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