基幹システムをkintoneで構築して中小企業を元気にしたい!
kintone上で完全動作する統合型ワークフローを開発したアイティーフィットのねらい
2015年からkintone関連のサービスを提供しており、当時から基幹業務システムを構築する支援を行なっているアイティーフィット。kintoneの機能が進化し、サイボウズのパートナー企業が増えた現在では基幹業務をkintoneで構築する企業は増えているものの、7年前から基幹業務システムを専門に手がけているのは珍しい。アイティーフィットの代表取締役の小沢広文氏と取締役 福住仁志氏に話を聞いた。
中小企業をITで元気にしたい たどり着いた先のkintone
アイティーフィットの創業は2010年1月。代表取締役の小沢広文氏は、それまでメーカー系ソフトウェア専門企業で18年間働いていた。前職でもシステム開発を手がけていたのだが、顧客は中堅以上の大手企業がメインとなっており、中小・中堅企業だとITシステムの開発を外注する予算を確保できないところが多かった。しかし、中小企業をITで元気づけたいと考えていた小沢氏はITコーディネータ-の資格を取得したことがきっかけで、独立した。最初は個人事業主という形でスタートしたが、すぐにアイティーフィットを設立することになった。
「kintoneが本格的にサービスを展開しはじめたのが2013~14年ですが、実はその前に創業しています。 2010年ごろは海外製のSFAが普及し始めており、弊社も当初はその製品の開発をしようと考えていました。しかし、その製品のライセンス料は中小企業には支払えないほど高いため、ターゲット層と合わないソリューションを扱おうとしていることがわかりました。そんな中、試行錯誤している間にkintoneと出会ったのです」(小沢氏)
商工会議所のイベントでkintoneのブースに立ち寄った小沢氏はいろいろと説明を聞くうちに面白そうだとピンと来た。当時は、APIもなくJavaScriptでの開発もハードルが高いうえ、「kintoneってリレーショナルデータベースではないですね」などと言われていたという。しかし、小沢氏は時間が経てばkintoneのハードルは低くなるはずだと予見し、販売管理システムの開発に着手。追って在庫管理システムも開発した。
2015年当時、kintoneは日報などに使われ、基幹業務の深いところで使うという事例は少なかった。そんな中、基幹業務システムを提供しているアイティーフィットは注目を集め、サイボウズパートナーとしてその年のサイボウズアワード特別賞を受賞している。
kintoneを中心に基幹システムを構築 「コンサルティングを形にする」
アイティーフィットはコンサルティングを形にするというコンセプトが特徴だ。kintoneの業務アプリだけでなく、クラウド会計システムのスペシャリストでもある。kintoneと様々なクラウドサービスを連携させて、全体として基幹業務システムを構築している。
kintoneをはじめ様々なクラウドサービスを活用しようと考えている企業は多い。それぞれはとても便利ではあるのだが、統制が取りにくくなるというデメリットもある。また、データが各クラウドサービスに散らばってしまい、何かを見たい時に、いろんなサービスを開かなければならないという状態になっている。
「そういった中でベースとなるクラウドサービスを決めるべきで、弊社ではkintoneがいいと考えています。kintoneを中心に据え置き、たとえばクラウド会計や電子契約サービスなどの専門サービスを組み合わせていくのがコンセプトです」と語ってくれたのは取締役の福住仁志氏。
複数サービスを組み合わせることで、ビジネス形態や企業規模が変化したり、新しいクラウドサービスが登場したときに、ニーズに合わせて自由にカスタマイズできるようになる。連携サービスは変化しても、kintoneをベースに構築していれば、データはきちんと集約される。kintoneの得意なところと専門クラウドサービスの得意なところを切り分けて業務を整理してあげることが1番重要だという。
また、kintoneはイチからアプリを作れるのがメリットだが、裏を返せば、ユーザーがイチからアプリを作らなければならない。販売管理システムと一言で言っても、すべての機能をスクラッチで作るハードルは高い。
「そこで、弊社ではkintoneをベースにしたアプリパッケージを開発して、提供しています。販売管理では「販売9+」、在庫管理では「在庫10+」という製品です。kintoneのスタンダードコースを契約していれば、アプリをダウンロードすることで即日使えるようになっています」(福住氏)
汎用的な販売管理機能は組み込まれているので、まずは業務で使ってみて、フィットする部分はそのまま使ってもらう。そして、ギャップが出た部分だけをカスタマイズしていくことで、イチからアプリを開発するよりも格段に早く、コストも抑えて仕上げられるというメリットがある。この基本となるアプリパッケージを持っているのが、アイティーフィットの強みと言える。
システム開発に現場の意見を反映させるフィットアンドギャップを重視
販売管理や在庫管理の領域から手がけた理由は、会社に必ず必要なシステムだと考えたからだそう。
「販売管理を行なっていると、会計システムまで連携させ、ワークフローにつなげたくなります。最近ではそこからさらに電子帳簿保存法に関わるソリューションも用意しています」(小沢氏)
たとえば、月次処理を行なう場合、kintoneの画面の上から順に処理していくため、今何番目を作業しているのかが知りたくなる。しかし、kintoneでレコードをクリックすると詳細画面が開いてしまい、今何番目なのかがわかりにくくなる。そこで、「サブ画面表示」機能を開発し、一覧を固定表示したままサブ画面に詳細を出し、次々と処理できるようにした。
何から何まで用意しているようにも見えるが、実は他社が手がけている検索プラグインなどには手を出していない。他社が手がけているところは、そちらを使ってもらえればいいそう。すでにいいプラグインがあるレッドオーシャンに入っていくより、ブルーオーシャンの部分で中小・中堅企業のIT化を進めていくという。
しかも、アイティーフィットはシステムの提供だけでなく、最終的な稼働まで一気通貫でサポートするのが特徴だ。一般的なコンサルティング会社では上流工程だけ手がけて終わってしまい、開発したものを現場が触ってみると、作り直しというケースが多い。システム開発には現場の意見を反映させるのがもっとも重要なので、アイティーフィットはフィットアンドギャップで形にするということをテーマとしている。
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