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他に類を見ない奇抜なシリーズはどうして生まれたのか

超個性派BTO PCメーカー、サイコムの現場スタッフに聞いてわかった“Craftsmanship”の根源

2022年07月26日 10時00分更新

地元の従業員は多いが少数ながら他県からも
Twitterで募集することもあった

 先ほどの小野さんもそうだが、従業員の8割くらいは地元の方が多い。しかし、少数ながらも他県から来ている人もいる。そんな1人が、若手の松本さんだ。

松本さんは組み立て部門で、サイコムに入ってまだ1年ちょっとの新人とのこと。群馬県出身で、今は埼玉県でひとり暮らしをしている

 サイコムに入る前は地元のPC販売店で働いており、基本的な知識は十分。お客さんの目の前で動作確認や、不具合対応といったサポート作業を行なっていたそうだ。そのため、PCの取り扱いに関してはまず問題がない状態で入社できたわけだ。しかし、自前のPCは自作機だったが、そこまでPC自作をたしなんでいたわけではないため、PCパーツに関する知識は深くなかったそうな。

「元の職場で扱っていたのは完成品のメーカー製PCでしたから、PCパーツそのものはあまり詳しくありませんでした。ただ、一部のPCパーツは取り扱いもあったので、型番を見て製品を区別する作業は難なくできました。まったくの初心者だと、製品の違いがわからなくて苦労すると思うのですが、その点は前職の経験が活かせましたね」(松本さん)

 例えば、ひとくちにCPUといっても種類はたくさんあるし、「Core i7」と範囲を狭めたところで何種類もある。初心者であればこの違いがよくわからずに混乱してしまいそうだが、ここでつまづかなかった点は大きなアドバンテージになっているはずだ。

 サイコムに入った後はひと通りのPC知識、組み立ての技術を学ぶことになるが、組み立て部門のリーダーとなる馬場さんがその教育を担当したとのこと。4年ほど前、編集部のラッキー橋本がサイコムへ1日体験入社した時にも指導してくれた、優しい先輩だ。

組み立て部門のリーダーとなる馬場さん。サイコムに入る前は、別のBTOパソコンメーカーで働いていたそうだ

「松本君は前の職場でPCを扱っていたこともあって、特にこれといった問題もなく、すんなりと仕事ができるようになりましたね。慣れてから、多少ミスが増えたりもありましたが(笑)」(馬場さん)

 慣れると気が緩むのか、細部の見落としや確認不足などが出てきてしまうのはどんな仕事でも同じ。そういった小さな失敗はあるものの、これといって大きな問題もなく、すぐ仕事に慣れていったとのこと。松本さんがサイコムに転職したきっかけを聞いてみると、先に働いていた友人の存在が大きいそうだ。

「仕事を続ける気持ちがちょっと下がってきて、ほかの仕事もしてみようかなと考えていた時、友人から今働いているところで募集あるかもと教えてもらったのが直接のきっかけですね。そこで、前向きに考えてみようとなりました」(松本さん)

 その先に働いていた友人は修理サポートを担当するSさんだ。5年ほど前にサイコムに入社し、それまでは松本さんと同じ職場で働く同僚だった。そこで仲良くなってプライベートでも遊ぶようになり、転職後も連絡を取っていたという。

松本さんをサイコムに誘った、Sさん(写真左)。もちろん、Sさんも群馬県出身だ

 「どういう会社なのか」という話はSさんが転職した時から色々聞いていたとのこと。内部の人、しかも都合の悪い部分を隠したりしない友人から聞いた会社の実情は、これ以上ないほど信頼できるソースだ。その上で誘ってきたということは、少なくともSさんにとって、サイコムは居心地のいい場所だということで間違いない。

 そのSさんがサイコムに入ろうと思ったきっかけは、なんとTwitterで見た求人だそうだ。ツイートを検索してみたところ、確かに、5年前の2017年に正社員募集のツイートがあった。

「求人を見た時に少し悩んだのですが、BTOパソコンを作ってみたいという気持ちが強く、応募することにしました。ちょうど地元から出たいと思っていたのと、親からも「そろそろ自立して」と言われていたのもあって」(Sさん)

 サイコムは従業員の定着率が高いということもあり、こういった求人が出る機会はあまり多くないようで、求人ツイートも数えるほど。色々なタイミングがうまくかみ合った結果、同社で働くことになったという点が面白い。

 会社の雰囲気を聞いてみたところ、ギスギスすることや過度な干渉、従業員を不用意に締め付けるルールがなく、のびのびと働けているとのこと。取材時が繁忙期ではなかったこともあるが、実際従業員と話していてもかなり心に余裕がある、いい雰囲気だと感じた。

現場の意見を聞きながら開発できるところが強み
“Craftsmanship”(職人技)の根源は空気にアリ

 サイコムは少数精鋭ということもあってか、サポートや組み立ての部隊と製品開発の距離が近いと感じた。気軽に意見交換できるところが、ほかのBTOパソコンメーカーにはないユニークなモデルの誕生につながっているのだろう。

 実際このインタビュー中も、山田さんと従業員がPCケースを前に語り合っていた。話の内容は、もしこのPCケースを採用するのであれば、ファンのレイアウトはどうすれば最適か、といったもの。PC自作パーツは組み合わせやレイアウト次第で、効果などが微妙に変わってくるもの。組み立て現場の意見も取り入れつつ、具体的な配置まで吟味している。

プロダクトマネージャーの山田さんを中心に、工場スタッフも交えて意見交換。わざわざ会議室に集めて仰々しく行うのではなく、現場で実際にモノを見ながら議論スタイルは業務効率も良さそうだ

 最近誕生したコスパ重視のゲーミングPC「Velox」シリーズは、初心者が迷わないようあえてカスタムできるメニューを絞っている。おそらく、そのメニューはこうした議論の果てに厳選したPCパーツを残したものだろう。

 同社が掲げる“Craftsmanship”(職人技)(職人技)は、こうした自由に意見を交換できる職場の空気にこそあると感じた。これからもこの雰囲気のまま、あらゆる方向で新鮮味のあるBTOパソコンの開発していってほしい。

(提供:サイコム)

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