トレンド1「Web Me」
ひとつめの「Web Me」では、Web3を実現する技術基盤により、データの身元を明らかにすること、データの真正性を担保すること、データと価値を紐づけることができるようになり、その結果、デジタルアセットが重視され、インターネットの世界をリアルになるとした。
「Web3によって、データの出所、真正性、価値が確立することで、ウェブ全体に信頼のレイヤーを生み出すことができる。その結果、デジタルアセットの価値が、物理世界のアセットの価値を超えることも想定される」と指摘した。
ゲームプラットフォームのFORTNITEでは、全世界で5億人以上が参加。ゲーム内でイベントやコンサートを開催したり、ウクライナへの人道支援として約176億円の寄付が集まったりといったことが起こり、ゲームの枠を超えて、コミュニティとしての経済性、社会性を備えている。また、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型メタバースであるThe Sandboxでは、デジタル上のアイテムやキャラクター、仮想空間の土地などをNFTプラットフォーム上で売買しており、新たなコミュニケーションの場や、投資の場としても注目されている。
「実物の作品の所有権を1万個のNFTに分散して所有権を販売したり、記事をNFTに変換して供給したりといった動きもある。だが、仮想通貨の下落によって利用者に不利益をもたらすこともある。『私』に価値判断が委ねられる時代が訪れる」とした。
こうした動きに伴って、データの所有権やアイデンティ認証などを、ウェブ標準のもとで広く管理する仕組みや、ブロックチェーン同士で相互運用性を担保するといった取り組みが始まっており、「相互運用性を高める技術がますます重要になる」と述べた。
トレンド2「プログラム可能な世界」
2つめの「プログラム可能な世界」では、デジタルの世界において当たり前になっているパーソナライズ、自動化、カスタマイズといった体験が、物理世界でも提供できる時代が訪れると予測した。同時に、物理世界と仮想世界の生活がシームレスにつながり、その結果、デジタル革命の最後にして、最大のフロンフィアに、物理世界が位置づけられることになると指摘した。
例としてあげたのが、車いすを利用している海外旅行者のシーンだ。AIアシスタントに自分の希望を伝えると近くのレストランを紹介し、予約をしてくれるほか、ARメガネを通じて、ルートを強調表示してくれるということに加え、レストランに到着して車いすを入口に向けるだけで、小さな階段が平たんなスロープに変化したり、メニューの文字が自動翻訳され、それを見ながら注文できるといった具合だ。これを、物理世界と仮想世界の生活がシームレスにつながり、パーソナラズに向けて、プログラム可能な世界を実現する一例に位置づけた。
「プログラム可能な世界を実現するには、デジタルツインドリブンという発想が必要である。工場や場所などの局所的なデジタルツインではなく、あらゆる企業活動において、すべてがデジタルツイン前提で考える必要がある。また、ここでは、5Gなどを活用したり、ディスプレイに依存しない方法で情報にアクセスできる『コクネト』、デジタルツインやARメガネによって、あらゆる環境をデジタル情報として活用できる『エクスペリエンス』、形態を自由に操作することができる新素材などによって、物理世界の構成要素にコントロールやカスタマイズ機能を組み込むことができる『マテリアル』の3点が重要なポイントになる」と述べた。
だが、その一方で、複雑系の世界では、デジタルツインでシミュレーションするのが困難な部分が存在すると指摘。「しかし、そうした分野に対してもテクノロジーの挑戦が始まっている」とした。
トレンド3「アンリアル」
「アンリアル」では、声帯を失った俳優がAI技術により、自分の声で出演できるようになる一方、フェイク動画によって、ウクライナの偽大統領が国民に降伏を呼びかけるといった事例などを示しながら、「AIで創り出されたアンリアルは、いい面、悪い面の双方から忍び寄っている」と前置きし、「リアルとアンリアルが混在する社会では、リアルであるか、アンリアルであるかが重要ではなく、個人の信念や組織の理念が、偽りなく一貫して表現されているかが大切である」とする。
アクセンチュアでは、「オーセンティシティ」という言葉を用いて、これを「ホンモノ感」と表現。「ホンモノ感の醸成にはストーリーが重要であり、それを支えるのは、情報の出所の保証、社内統制、法整備への協力の3点である」とし、それによって、リアルとアンリアンに対して、人が向き合い姿勢には差がなくなると予測する。
「人はアンリアルなものに対しても感情移入ができる。それは、ロボット犬の故障や、ペット育成ゲームのキャラクターの死亡後に、実際に葬式をあげた例などからも実証済みである。これからは、リアルとアンリアルの境界線は重要ではなく、人はなにをもとに納得感を得るのかを追求することであり、それを示すのが、ホンモノ感になる」と述べた。
ここでは、AI倫理がこれまで以上に重視されたり、メタバース空間における法整備などが重要になったりすることも示した。
トレンド4「不可能を可能にするコンピューティング」
4つめの「不可能を可能にするコンピューティング」では、世界中の経営幹部が、次世代コンピュータによる画期的な影響に期待を寄せているデータを示しながら、「多くの経営幹部が、メタバースの基盤技術にHPCや量子コンピュータ、生物学的コンピュータが利用できると考えている」と述べた。
だが、「次世代コンピュータによって、未来をバラ色の世界が実現すると捉えるのは危険である。次世代コンピュータが、具体的にどのような定義で問題を解いたのか、その性能はどうやって測定したものであるか、その目標は達成が可能であるのかということに加えて、ビジネスへの応用は本当に可能なのか、投資対効果は見込めるのかということを見極めることが肝要である。また、これらの技術は日進月歩であり、一度使えないと判断したとしても、改めて検証する必要がある。常にビジネスに活用できるかどうかを見ておく必要がある」などとした。
さらに、「次世代コンピュータに対しては、技術投資を行なう前に、なにをすべきかというユースケースを見定めることが大切である」とした。
説明の最後に、アクセンチュアの山根氏は、「メタバース連続体において、企業が迫られているのは、メタバースに飛び込み、顧客とともに変化すること、デジタルツインを思考の型に組み込むこと、言行一致でホンモノ感に取り組むこと、活用可能なユースケースを考えることである。メタバースは、デジタルアセットが価値を持ち、個人の能力が拡張する世界である。物理世界に存在する企業は、個人をエンパワーすることがより求められ、それに向けて責任あるメタバースを構築すべきである。プライバシーとデータの所有権を担保し、平等性とダイバーシティを保証し、環境に対して持続可能な技術基盤とビジネスを構築することで、信頼と持続性を持ったメタバースを実現できる」と述べて、「個人にとっても、企業にとっても、メタバースの世界が解き放たれた段階にある。より本格的にメタバースに飛び込む時代になっている」と述べた。
なお、アクセンチュアでは、メタバース専門のビジネスグループを新設したことも明らかにした。アクセンチュア自らと、顧客企業に対するメタバース活用を推進していく役割を担うという。日本にも同様の組織を設置する予定だ。
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