ADATA「LEGEND 840」は、PCIe 4.0x4インターフェースに対応したM.2タイプのSSDだ。PCIe 4.0対応ならではの高性能とリーズナブルな価格を両立しているのが特徴で、PlayStation 5(PS5)での動作もADATA側で確認済み。PS5の増設用としても注目の存在で、同社SSDの中でも人気の高い売れ筋モデルとなっている。今回はこのLEGEND 840の1TBモデルをレビューする。
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HMB採用により高性能とリーズナブルな価格が両立
LEGEND 840の主なスペックは下の表にまとめた。リーズナブルなプライスのメインストリームモデルながら、PCIe 4.0x4インターフェースに対応しているのが大きな特徴だ。
1TB | 512GB | |
---|---|---|
インターフェース | PCI Express 4.0x4 | |
SLCキャッシュ | 搭載 | |
DRAMキャッシュ | 非搭載 | |
コントローラー | Innogrit IG5220 | |
最大シーケンシャルリード | 5000MB/s | |
最大シーケンシャルライト | 4500MB/s | 3000MB/s |
PS5シーケンシャルリード | 5000MB/s | 4500MB/s |
最大ランダムリード | 650K IOPS | 520K IOPS |
最大ランダムライト | 600K IOPS | 450K IOPS |
ヒートシンク | 添付 | |
サイズ | 80×22×2.15mm(ヒートシンク装着時高さ3.13mm) | |
最大TBW | 650TBW | 325TBW |
保証期間 | 5年間 | |
実売価格 | 1万7000円台 | 1万円弱 |
1TBモデルのシーケンシャルリードは5000MB/s、シーケンシャルライトは4500MB/s。いずれもPCIe 3.0x4の理論値(約3.94GB/s)を上回っており、メインストリームのSSDとしてはワンランク上のパフォーマンスを持つ。
HMB(Host Memory Buffer)を採用したDRAMレス構造も特徴だ。NANDフラッシュメモリは上書きができないなど原理的な制限があるため、ランダムアクセスが頻発するPCのシステムストレージとして利用するにはコントローラーでの最適化が必須。その作業領域、一時的なデータの退避場所としてDRAMキャッシュ(LPDDR3 SDRAMなど)を搭載するのが基本的な構造だが、記憶容量増加にともない、DRAMの搭載はコスト増の要因にもなっている。
HMBでは、DRAMを省く代わりにシステムメモリーをキャッシュとして利用する仕組みだ。PCI Expressを経由してアクセスするだけにSSD実装のDRAMキャッシュには及ばないものの、低コストと高性能を両立できる。そのため、最近のメインストリームSSDでは採用例が増えてきている。
また、HMBを採用する以上、キャッシュアクセスはインターフェースを経由するため、高速なPCIe 4.0x4に対応しているのは、他のHMB対応SSDに比べてのアドバンテージといえる。
まずはPCでの基本的な性能をチェック
ほぼ公称値どおりに5000MB/s弱の速度を確認
まずはPCでの性能を確認していこう。テストは下記に示したCore i3-12100Fを搭載したWindows 11 Proのシステムで行なった。定番のCrystalDiskMark 8では、テストサイズ1GiBと64GiB両方でテストした。
テスト環境
CPU | Intel Core i3-12100F |
---|---|
マザーボード | ASRock Z690M PG Velocity |
メモリー | ADATA U-DIMM DDR5-4800 32GB(16GB×2) |
SSD | XPG S70 Blade 2TB |
ビデオカード | GIGABYTE GeForce RTX 2060 GAMING 6G |
電源 | XPG Core Reactor 750 Gold |
OS | Windows 11 Pro |
どちらもシーケンシャルリードは公称の5000MB/sに少し届かなかったが、ほぼ公称値どおりのスコアと言っていいだろう。シーケンシャルライトも含めてPCIe 3.0x4の理論転送速度を超えるスコアであり、PCIe 3.0x4モデルに対してのアドバンテージがしっかり出ている。
ランダムアクセスの性能も優秀。テストサイズ1GiBではハイエンドモデル並のスコアだ。DDR5システムでテストしていることもHMBにとっては有利に働いている。
テストサイズ64GiBではランダム性能、特にライトで低くなっている。このあたりはHMBの影響と考えられるが、広範囲でランダムライトをするという動作自体があまりないので気にする必要はないと思われる。
HD Tune Pro 5.75では、サイズ別の転送速度をチェックした。280GBを超えたあたりで書き込み速度が大きく低下していることからSLCキャッシュの容量は280GB程度であるとわかる。落ち込んだ後も転送速度は1800~1900MB/sを維持している。これがSLCキャッシュなしのNANDフラッシュメモリの本来の性能になるが、この数字はなかなか優秀だ。
ちなみに、SLCキャッシュとは、NANDフラッシュメモリの空き領域の部分をSLC相当(TLCの場合、容量は1/3になるが性能と耐久性が向上する)で動作させるというもの。
現行SSDのほとんどがこの仕組みを用いているが、SLCキャッシュの容量は製品ごとに異なる。本製品の280GB(TLC換算で840GB)という容量は1TBのモデルとしてはかなり多い。つまり、空き容量が十分あるうちは、大容量のデータを書き込む際も途中で転送速度が低下するようなことはないだろう。
PCIe 3.0x4対応SSDに対する明らかなアドバンテージを持つ
PCMark 10では、システムドライブのアクセスパターンをトレースする「Full System Drive Benchmark」と、データドライブとしての性能を計測する「Data Drive Benchmark」を実行した。比較対象がないと判断しづらいテストのため、旧世代のSSD(Intel 760p、2TBモデル)の数値も掲載した。結果はご覧のとおりで、LEGEND 840はどちらのテストでも優位があきらか。特にFull System Drive Benchmarkで、比較対象の1.5倍のスコアを出している点は特筆できるだろう。
「FINAL FANTASY XIV:暁月のフィナーレベンチマーク」のローディングタイム、エクスプローラ上でのRAWデータ500枚のコピー速度も順当に高速。特に書き込みの速度で大きく優位に立っていることがわかる。
LEGEND 840 | Intel 760p | |
---|---|---|
PCMark 10 STORAGE | ||
Full System Drive Benchmark | 3065 | 2033 |
Bandwidth | 492.80MB/s | 335.37MB/s |
Average access time | 55μs | 85μs |
Data Drive Benchmark | 4082 | 3294 |
Bandwidth | 619.99MB/s | 507.20MB/s |
Average access time | 39μs | 49μs |
"FINAL FANTASY XIV:暁月のフィナーレベンチマーク | ||
ローディングタイム | 10.739秒 | 11.144秒 |
RAWデータ500枚コピー | ||
システムSSD→テストSSD | 23.3秒 | 37.04秒 |
テストSSD→システムSSD | 22.01秒 | 26.5秒 |
公式の推奨スペックにはわずかに届いていないのだが
PS5でもシステムSSDと同じように利用可能
LEGEND 840は、ADATA公式によるPS5での動作確認済みモデルだ。公式スペックとしてPS5装着時のシーケンシャルリードは5000MB/sという数値を公表している。
ちなみに、SIE公式の増設用ストレージの要件によると(https://www.playstation.com/ja-jp/support/hardware/ps5-install-m2-ssd/)、シーケンシャルリード「5,500MB/秒以上を推奨」と記されており、わずかにそれには足りない。また、PS5はHMBに非対応のため、HMBも利用できない。
そのあたり実際のところはどうか、実際にPS5に装着してテストしてみた。PS5に装着すると、最初の起動時にフォーマットをするよう指示され、フォーマット後に読み込み速度がチェックされる。その時の表示が「5029.225MB/s」。公称値どおりだ。以前にシーケンシャルリードが3900MB/sのSSD(「GAMMIX S50 Lite」)を搭載した際は、「推奨スペックを満たしていない」ことを警告する表示が出たが、今回はそのような表示が出ることはなかった。
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