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多くの青春とともにあったソニー「ウォークマン」は音楽を持ち運ぶスタイルの礎だろう

2022年06月21日 12時00分更新

マイベストを作ったり、恋人とイヤホン片側同士で聞いたり
いつの時代も一緒だった「WALKMAN」

 今や音楽に触れることはとても簡単で、スマホさえあればYou Tubeでお気に入りのアーティストを見つけたり、サブスクで聴き放題です。なんていい時代になったのだろう! と、僕たちおじさん世代はしみじみと感じています。

初代 WALKMAN TPS-L2(1979年)

 昔話になりますが、今から40年も前になると、音楽コンテンツはとても貴重な存在でした。そして、手に入れられる音楽コンテンツといえばレコードでした。ほら、あの大きくて黒い円盤型のカタチをしたヤツです。当時小学生だった筆者は、さすがにレコードなんて高い買い物はできません。でも流行りの音楽を聴きたい! 自分のものにしたい! という一心で試みたのは、父親のカセットテープレコーダーを(勝手に)借りてテレビで流れる音を録音するというものでした。

 まさに、無料で音楽を手に入れる画期的な方法! けれどこれには致命的な弱点がありました。普通にテレビのスピーカーから出ている音を録音するということは、音質がよくないのはもちろん、それ以前に環境音までもが盛大に入ってしまいます。録音中に、床のミシっという音が入ったり、おばあちゃんが悪気なく喋りかけてきたり、なんと成功率の低いことか……。いつ流れるともわからないチャンスを待ち続けて、必死で録音ボタンを押したのに! 次のチャンスはいつなのかわからないのに! そんな思いをした人も多かったのではないでしょうか。

 ほどなくして、近所にレコードレンタル屋さんができました(前回登場したビデオレンタル屋さんと同じです。大変お世話になりました)。家から歩いて5分もかからない場所にあったので、毎日通ってた気がします。一番最初の目的は「機動戦士ガンダム」のサントラLPレコードでした。それ以降レコードを借りてきては、カセットテープに録音する日々が続きます。これまた父親のステレオシステムを(勝手に)使って録音。レコードの針を折ったり、スピーカーコーンを凹ませたり、今にしてみればスマホやPCを破壊されるに近いような暴挙に出ていたのかと思うとゾッとします。

誰にも邪魔されない
自分だけの世界に浸れた「WALKMAN」

 そして中学生になり思春期を迎えた若者は、「自分だけの世界がほしい!」といつでもどこでも持ち運んで音楽が聴ける「ウォークマン」が猛烈に欲しくなるのです。はい、ついに今回の本題です。

2代目 WALKMAN WM-2(1981年)

 解説するまでもないかもしれませんが、ウォークマンというのは、ソニーがポータブル型のモノラルテープレコーダーしか存在しなかった時代(1979年)に、録音機能やスピーカーといった機能を省いて、ステレオ再生専用ヘッドをつけ、ステレオヘッドホンで楽しめる音楽を聴く事だけに特化したポータブルオーディオプレーヤーの事です。ウォークマンは直訳すると“歩く人”って和製英語なわけですけど、このネーミングが世界を席巻することになるのでした。

 さて、世の中の流行りとともに欲しくなった筆者の目にとまったのは、雑誌の中にみつけた宣伝広告。かわいい女の子が手に持っている(←ここ重要)というただその一点でコレだ! と。「誕生日にコレがほしい! このウォークマンが欲しいんだ!」と雑誌を持って猛烈アピールします。そこで帰ってきた回答は……「あなたこれ、Panasonicのカセットプレーヤーじゃない?ウォークマンじゃないよ?」何たる衝撃。確かによくみると、端っこのほうにあったのはPanasonicの文字! そもそもソニーというメーカー名よりもウォークマンという製品名が独り歩きしている頃。Panasonicの“son”あたりだけを見て勝手にSONYだと思い込み、かわいい女の子がポータブルカセットプレーヤー持っている事に心奪われいた、まさに中学生アルアル。

WALKMAN WM-20(1983年)

 ソニーマニアの人からすると、お前のソニーへの愛はその程度なのか!? とお叱りを受けるかもしれません。ちなみにこの頃、耳にイヤホン、手にウォークマンを持っているおサルのCMがめちゃくちゃ話題になりました。僕はおサルより女の子に興味があったのです。

 そんな紆余曲折がありながらも結局のところ買ってもらったのは、紛うことなき“ソニーのウォークマン”。 たしか「WM-30」じゃなかったかな? と記憶しています。カラフルなカラバリで、中身のカセットが見えるオシャレなデザインでした。初めて手にした自分だけのオーディオプレーヤー、そのうれしさといったら表現できないほど。寝る時もトイレにこもるときも一緒。たぶん、今の子供たちがスマホを初めて買ってもらった気持ちと似ているのかな?

筆者が人生で最初に購入したWALKMAN WM-30(1984年)

 耳にイヤホンを装着して、再生ボタンをカチっと押すと回りだすカセットテープ。大好きな楽曲が頭の中で音楽が鳴り響きます。すごい、これはすごいぞ! 何せ今までは家のステレオも車の中でのカセットオーディオも、家族の誰かや大人の誰かと一緒に聴いているもどかしさでいっぱいでした。自分の推しを、自分だけのものにしたい。それがまさに日常から解き放たれて、たったひとりの自分だけの世界に引き込もれる体験。なんだか自立した大人になった……そんな気分でした。

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