トーア紡コーポレーションの中井 邦義さんとKYOSOの辻一郎さんは、SORACOMを用いたIoTで工場の可視化を実現してきた。IoTというキーワードでつながった二人は、現場のメンバーとどのように協力体制を構築し、真に現場で役に立つソリューションを作り上げてきたのか? 「IoTはモノ同士だけじゃなく、人もつなぐ」という格言を地で行く、二人のIoTジャーニーを追う。
KYOSO辻さんとの出会いは「ぐるぐる」がきっかけやねん
長らくIT部門で基幹システムのお守りをしていたトーア紡コーポレーション IT推進部長 中井 邦義さん。しかし、2009年にもともと手組みだった基幹システムをERPに置き換えて以降、基幹システム関連の仕事から手が離れ、情シスとしての仕事が大きく変わったという。「今まで考えたかったけど、考えられなかった領域に踏み込めるようになりました。ガートナーが提唱しているモード2の領域に行った方がいいよねと試行錯誤する中で、IoTに行き着きました」と中井さんは振り返る。
IoTの勉強や研究からスタートした中井さんは、カイゼン現場となる工場の会議に参加して、「電力の見える化」というソリューションを提案した。現場での「やりたい」という声を受け、設備を見せてもらい、実際に構築してみようとなったのが2016年だ。そんなとき情報収集のために参加した大阪のITイベントで出会ったのが、ソラコムのパートナーでもあるKYOSOの辻一郎さんだ。
ソラコムのSPSインテグレーションパートナーであるKYOSOは、「IoT.kyoto」というブランドでIoT事業を展開している。IoTデータの可視化を実現する自社サービス「IoT.kyoto VIS」と各種クラウドサービス、センサーを組み合わせ、PoCからプロダクションレベルまで幅広いIoTのインテグレーションを手がける。辻さんはそんなIoT.kyotoの立ち上げ人であり、現場を知るエンジニアでもある。
とはいえ、2016年当時、IoTはまだまだ黎明期で、出展していたのもセールスフォースとIoT.kyotoくらいだった。そんなとき、IoTを身近に感じてもらうために辻さんが作っていたのが、IoTを擬人化した萌えキャラの「いおたん」と、ハンドルを回すと画面上の「いおたん」の持っている風船が割れる「ぐるぐるいおたんマシン」だ。「辻さんと出会ったの『ぐるぐる』がきっかけやねん」と中井さんは当時を振り返る。
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https://iot.kyoto/usecase/2017/01/16/2392/
ブースを訪れた中井さんはこのぐるぐるいおたんマシンをIoT.kyotoブースで体験した。「『ぐるぐる回して、マシンに伝えているだけなんじゃないの?』と辻さんに聞いたら、SORACOMのセルラー経由でクラウドにデータを送ることで、風船を割っていると聞いて、なるほどと思った」(中井さん)とのこと。辻さんと意気投合した中井さんは約半年かけて社内稟議をとり、まずは四日市にあるトーア紡マテリアルの工場で電力デマンドの監視に取りかかった。
圧倒的な成功体験 ここまで成功するとは?という現場
四日市工場は不織布などの産業資材を扱う工場で、電力管理が大きな悩みだった。夏場、工場でピーク時電力を超えるとペナルティにつながり、来期の契約から電気代が上がる可能性がある。しかし、電力量は現地のパネルでしか確認することができないため状況改善の限界を越えていた。そのため関係者がリアルタイムでどこでも確認し、対処できる仕組みが必要であったという。「夏場にピークを超えないよう、パネルを有人監視しなけければなりません。でも、上長にエスカレーションされるのに時間がかかり、結局ピークを超えてしまうことがあるんです」(中井さん)。
これに対して、IoT.kyotoは工場での装置の制御に用いられるPLC(Programmable Logic Controller)にTCP/IP変換モジュールの追加を提案。変換後のデータを一定間隔でCSV形式で出力できるPLCメーカー純正オプション機器から、Linuxゲートウェイに電力デマンドデータを収集し、クラウドに送信。Amazon Kinesis Data Streamsを経由して、Amazon DynamoDBにデータを格納できるようにした。現場で工場長からヒアリングを受けた中井さんと辻さんは、2回の訪問、2週間で工場全体の電力の見える化を実現し、スマホで確認したり、アラートまで上がるようにしたという。
関連記事:工場の電力デマンドを監視して契約電力を削減<フェーズ1>(KYOSO)
https://iot.kyoto/usecase/2017/01/13/2357/
ここで鍵になったのは、センサーからデータを収集し、クラウドに送出するLinuxゲートウェイだ。このLinuxゲートウェイは、PLCに追加されたTP-IP変換モジュールからデータを受け取り、内蔵のマイコンでプログラムを動かすことができる。四日市工場の事例では、データ成形や送出頻度を調整するためのプログラムを辻さんが記述しており、SORACOMを経由で1分ごとにデータを送信できるようにしている。
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