2022年6月14日、オンラインコラボレーションホワイトボードの「Miro(ミロ)」を提供するミロ・ジャパン合同会社は、事業の進捗と最新の製品戦略に関する記者説明会を開催した。
Miroは2011年に創業した豊富なテンプレートを備えるオンラインホワイトボードサービスで、グローバルで13万社以上が導入し、ユーザー数は3500万人とリモート会議の定番ツールのひとつとなっている。
日本語ローカライズが進み、使いやすくなった「Miro」
ミロ・ジャパンは2021年11月に日本進出を正式発表したばかりだが、すでにTOPIX企業の60%が利用しており、KADOKAWAやNTT DATA、NTTドコモ、KDDI、Yahoo!JAPANなど大企業ユーザーも多い。ユーザー数は70万人を超えている。11月の段階ではTOPIX100企業ユーザーは50%、ユーザー数は50万人だったので、大幅な躍進と言える。
「ミロ・ジャパンは世界で選ばれている「Miro」の価値を日本企業の皆様へお届けすることをミッションとして活動をはじめました」とミロ・ジャパン合同会社 代表執行役社長の五十嵐光喜氏。
まずは昨年11月からのアップデートが行なわれた。最初は片手にも満たない社員でスタートしたが、順調に拡大し、2022年夏の終わりには50名、2023年には100名を目指して採用を進めている。全部門で採用しているが、特にカスタマーサクセスグループに注力しているという。
「Miroverse」は「Miro」のローカルコミュニティの人たちが、独自に「Miro」のテンプレートを作って、共有するプラットフォーム。これまでは英語のみだったのだが、今回、日本のユーザーがベストプラクティスをまとめた日本語の「Miroverse Japanローカルテンプレート」がリリースされた。
「Miroverse」サイトを開くとタグが並んでいるのだが、その中から「Japanese」をクリックすると日本語版のテンプレート一覧が表示される。ユーザーはグローバルに展開する1000種類以上の「Miro」テンプレートに加えて、日本で独自に作られたテンプレートも使えるようになる。
また、遅れていた日本語UIも6月13日夕方から正式リリースされた。フリーユーザーも含めて、すべてのユーザーが日本語UIを選択できるようになった。ダッシュボードの「設定」の「プロフィール詳細」タブから「言語」のプルダウンメニューから「日本語」を選択すればいい。
ユーザー事例として、NECの活用状況が紹介された。NECのソフトウェアアンドシステムエンジニアリング統括部では、開発のプラットフォームとして「Miro」を利用しているそう。
製品開発はアジャイル開発で行なっており、以前は対面で進められていたが、近年の流れで拠点間での開発になり、そしてフルリモートでの開発と環境が変わってきた。そこで、NECはアジャイル開発のノウハウを「Miro」上に展開し、様々な働き方の中でも支障なく開発を進められるようにしたのだ。結果として、迅速なチームの立ち上げや開発ができるようになったという。
開発で使う「Jira」などのツールとアイディア発想やチームビルディングを行なう「Miro」をシームレスにAPI連携させることで、エンジニアの時間を本来の仕事である、価値の作り込みに集中できるようになった。
「私が昔ビジネスマンとして働き始めたころ、日本企業が世界を席巻していました。その時の日本の強みは、全員参加型の議論だと考えています」と五十嵐氏は振り返ります。
しかし昨今、ビジネスのスピードが上がり、なかなか全員が集まれなくなった。ビデオ会議をしても、声の大きな一部の人しか発言しないということも多々ある。これでは日本の持つ本来の力を活かすことができない、と五十嵐氏。
「その点、「Miro」は手を挙げることなく、社員が自由に発言できる環境を提供します。「ここから2~3分間、自分の考えを入れください」と言うと、ほぼ全員が漏れなく考えを共有してくれます。「Miro」はシャイな日本人の特性に合っていると考えています。埋もれている素晴らしいアイディアを「Miro」で引き出すことで企業の力になると思っています」(五十嵐氏)
コロナ禍で変化した仕事環境を「Miro」で構築し直す
続いて、Miro最高マーケティング責任者であるポール・ダーシ―(Paul D’Arcy)氏が登壇した。
「Miro」は創業10年強の比較的若い会社ではあるが、なんとfotune100企業のうち99%が利用しているそう。グローバルの「Miroverse」には1000以上のテンプレートが公開されている。
「2020年、パンデミックによって仕事のすべてが変わりました。現在のリモートワーカーはベッドから職場まで平均16歩で通勤できています。同時に、世界中の労働時間が長くなっていて、皆さんは疲弊しています。遠隔地の社員は孤立感を感じているとの報告も続いています。マイクロソフトの調査では、親しい同僚とはコミュニケーションが増えているが、それ以外の人とは減っているという状況になっています」(ポール氏)
テレビ会議が増えたのもネガティブな変化の1つだという。週次会議の頻度は150%増加し、さらに悪いことに、週次会議に費やす時間が250%に増加している。この大量のビデオ会議は他の重要な仕事をする時間を圧迫し、生産性の低下を招いている。
現在はテレビ会議だけでなくメッセージやメール、オフィスなど様々なデジタルツールを使っているが、ハイブリッドワークのためには設計されていない。その結果として、ミーティングの頻度が増え、コラボレーションが少なくなっているという。同時に、情報のサイロ化が起きて、仕事も断片化している。
「「Miro」を使うことで、どこにいても、同期でも非同期でもコラボレーションできます。ワークスペースを使って、チームで必要な情報を一括で共有でき、複雑なプロセスの設計やDXをすることもできます」(ポール氏)
続けて、3つのユーザー事例を紹介してくれた。ドイツの放送局「ProSiebenSat.1」では「Miro」を毎日活用しているそう。クリエイティブアセットや制作スケジュールを管理しており、写真やビデオクリップを見ながらコミュニケーションして全体像を把握し、より迅速に制作できるようになったという。
グローバルのスポーツ用品メーカー「アンダーアーマー」でも「Miro」を使って、カスタマージャーニーマッピングをしているそう。「Miro」を活用して、顧客のエクスペリエンスを高めるため、多様なアイディア出しを行なっている。
日本での最初の顧客がYahoo!Japanだ。メンバーの可視性を高め、セキュアな環境で。オンラインでも対面と同じように共同作業を行なっている。
以上の3社に共通しているのが、従業員の高いエンゲージメントだという。ハイブリッドの仕事場を構築し、生産性を高めていくことが重要だとポール氏は締めた。
ハイブリッドワークで効果を発揮する「Miro」の新機能を発表
今回、多くの新機能が発表された。ハイブリッドワークの切り口では、会議中のコラボレーションが数クリックで可能になるWebex BoardやGoogle Meet用のMiroアプリをはじめ、「Magic Organize」、VRによるコラボレーションなどがある。
製品・サービス領域では、Azure DevOpsカードに対応した双方向の同期機能や情報をより正確に視覚化する新しいダイアグラムの機能などを搭載。他システムとの連携においては、新しい開発プラットフォームである「Miro開発者プラットフォームV2」や様々な連携アプリと、GitHubでのサンプルアプリリポジトリなどが利用できるようになった。
新機能の中から、2つのデモを見せてくれた。まずは、「Miro Board」の非同期コラボレーションを強化する新機能だ。Miroでは、ハイブリッドワークを実現するためにミーティングとチームが非同期につながる新しいブレンド型のコラボレーションモデルが必要になると考えているという。
まもなく「Miro Board」上で、音声やビデオによる操作を録画し、他のチームメイトがいつでも確認できるようになる。これは単なる動画の録画・共有とは大きく異なるのがユニークだ。
例えば、新しいチームメンバーのオンボーディングのため、必要な情報や役立つ情報などを整理して共有するケースで活用できる。先輩は新入社員と一緒にリンクや画像がちりばめられた大きな「Miro Board」を眺めながら説明したいところ。しかし、別の会議があったり、別の場所で働いているために、直接会えないことも多い。
そんな時、「Miro」の新機能を使えば、「Miro Board」を用意し、概要を事前に録音してリンクを共有するだけでいい。新入社員は共有されたリンクから録画を再生すると、直接会っているのと同じように、自分の好きな時間にコラボレーションできるようになる。
ただ動画を見るのではなく、録画は「Miro Board」とリンクしており、再生途中で質問を書き込んだり、プレゼンの異なる場所を自由に参照できる。再生速度を上げることも可能。言わば、非同期で再生されるプレゼンテーションに参加しているイメージだ。プレゼンターがその場にいなくても、非同期でインタラクティブなプレゼンが行なえる。この機能により、新入社員と初めて会うときまでに情報共有を終わらせておけるので、実際のミーティング時間を節約できるようになる。
「Miro」で外部の人たちの意見を「Miro Board」に集約する際、企業の内部情報が書かれていると共有するのに抵抗があるかもしれない。そんな時は、拡張機能を利用することで、セキュアに情報を収集できる。
例えば、公開されているサンプルアプリを利用すれば、外部の人たちにはQRコードを撮影してもらい、スマホ上で意見を入力してもらえば、自動的に「Miro Board」上に付箋が作成される。
このように「Miro 開発者プラットフォームV2」を活用することで、「Miro」をビジネスプロセスに埋め込むことができるようになるという。
「Miroとしてはお客様がベスト・オブ・ブリードですべてのツールをシームレスにお使いいただけるようなオープンプラットフォームという戦略を採り、快適な仕事環境を構築できる方向を目指しています。Miroを幅広いユーザーに使っていただき、価値を知ってもらうランド・アンド・エクスパンド戦略を進めていきたいと考えています」と五十嵐氏は締めた。
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