USB接続の外付けSSDに高速化の流れが来ている。外付けSSDのインターフェースと言えば、これまでは通信速度が5GbpsのUSB 3.0(USB 3.2 Gen 1)が定番だったが、USB 3.2 Gen 2(10Gbps)やUSB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)に対応した製品が増えている。
PC側もThunderbolt 4(USB 3.2 Gen 2互換)やUSB 3.2 Gen 2x2対応のUSB Type-Cポートを備える製品が増えており、高速インターフェースの外付けSSDの本来の性能を引き出せる環境が整いつつある。
今回は、ADATAから発売されている「SE900G」と「SE770G」、2モデルの高性能外付けSSDを使って、実際にどのくらいパフォーマンスが発揮できて、どういう形で実用的に使えるのか検証した。
USB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)に対応する超高速ポータブルSSD「SE900G」
SE900Gは、インターフェースにUSB 3.2 Gen 2x2を採用するポータブルSSDだ。USB 3.2 Gen 2x2では、データ転送に使う信号線を2倍に増やしたデュアルレーン転送により、20Gbpsの高速転送を実現している。
SE900Gのシーケンシャルリード/シーケンシャルライトの公称値はいずれも2000MB/s。PCIe 3.0対応のエントリークラスの内蔵SSDに匹敵、あるいはそれ以上の性能をもつ。
本来の性能を発揮するには、PC側もGen 2x2(デュアルレーン転送)に対応している必要がある。市販のPCでは対応製品はまだ少ないのが、自作用のマザーボードを中心に端子を持つ製品が増えつつある。
RGBイルミネーションが鮮やかに輝くボディーは、放熱効果の高い金属を多用しており、見た目よりはずしっとした重厚感がある。端子はType-Cのみだが、Type-CとType-A両方の接続ケーブルが付属しており、変換アダプターなしで新旧の端子に対応できる。
SE900G | SE770G | |
---|---|---|
サイズ | 110.8×66×16.5mm | 99.5×57.5×18mm |
重量 | 160g | 136g |
シーケンシャルリード(最大) | 2000MB/s | 1000MB/s |
シーケンシャルライト(最大) | 2000MB/s | 800MB/s |
対応OS | Windows、Mac、Linux、Andoroid | Windows、Mac、Linux、Andoroid |
インターフェース | USB 3.2 Gen 2x2 | USB 3.2 Gen 2 |
本体端子 | Type-C | Type-C |
付属ケーブル | Type-C、Type-A | Type-C、Type-A |
保証期間 | 5年間 | 3年間 |
→Amazon.co.jpへのリンク(ADATA SE900G)
USB 3.2 Gen 2(10Gbps)に対応する高速ポータブルSSD「SE770G」
一方のSE770Gは、インターフェースにUSB 3.2 Gen 2(10Gbps)を採用するポータブルSSDだ。公称の最大転送速度は、シーケンシャルリードが1000MB/s、シーケンシャルライトが800MB/s。どちらも400~450MB/s程度のことが多い一般的なUSB 3.0(5Gbps)接続のポータブルSSDよりも格段に高速だ。
ボディーは、SE900Gよりひとまわりコンパクトで、端子はこちらもType-Cのみで、Type-AとType-C、両方のケーブルが付属している。RGB LEDのイルミネーションもしっかり用意されている。
→Amazon.co.jpへのリンク(ADATA SE700G)
ベンチマークでも公称値どおりのスコア、ランダム性能も高い
高性能外付けSSDのパフォーマンスはどれくらいなのか、パフォーマンスを計測しよう。測定環境は以下の表のとおり。IntelのLGA1700プラットフォームで計測した。
テスト環境
CPU | Intel Core i3-12100F |
---|---|
マザーボード | ASRock Z690M PG Velocita |
SSD | XPG S70 Blade 2TB |
ビデオカード | GIGABYTE GeForce RTX 2060 GAMING 6G |
電源 | XPG Core Reactor 750 Gold |
OS | Windows 11 Pro |
SE770Gについては、マザーボード標準のType-C(Gen 2、10Gbps)に接続して計測。SE900Gについては、PCI ExpressカードのType-Cポート(Gen 2x2、20Gbps)と、マザーボード標準のType-C(Gen 2、10Gbps)に接続した場合、両方を計測している。
まず、定番テストであるCrystalDiskMark 8のスコアから見よう。SE900GのGen 2x2接続時はシーケンシャルリードが2000MB/s超、シーケンシャルライトも1900MB/sと公称値に近いスコアが出ている。ランダム4K(RND4K)のリードも45MB/sと、エントリークラスの内蔵SSDよりも良いくらいのスコアをマークしている。
SE770Gについては、シーケンシャルリード/ライトとも公称値を少し上回るスコアをマーク。Gen 2対応のSSDとしては高性能な部類だろう。SE900GのGen 2接続時も似たようなスコアではあるが、全体的に同じインターフェースでのSE770Gよりも良い傾向だ。
RAW現像作業では内蔵SSDとほとんど変わらない使用感
リアルな使用状況を再現したテストも実施した。まずは500枚のRAWデータ(38.1GB、4240万画素)を利用してのコピーテスト。やはりGen 2x2接続のSE900Gの速さが歴然だ。
Gen 2接続のSE770Gでも38.1GBのファイルコピーを1分そこそこで終わるのだが十分速いといえるが、Gen 2x2接続のSE900Gはさらに速く、2/3くらいの時間でコピーが終わっている。
Lightroom Classicでは、外付けSSDのデータを置いたまま直接扱った時にどうなるかをテストしてみた。実行したのは以下の3種類だ。
1. 300枚のRAWデータをカタログへ読み込み、プレビューを作成するのにかかった時間を計測
2. 読み込んだ300枚のデータにプリセットの現像パラメータを適用してプレビューを更新するのにかかった時間を計測
3. 現像パラメータを適用した100枚のデータを長辺3000ピクセルのJPEGファイルとして出力するのにかかった時間を計測(出力先はデータと同じSSD)。
(秒) | SE900G (Gen 2x2) |
SE900G (Gen 2) |
SE770G (Gen 2) |
システムSSD |
---|---|---|---|---|
エクスプローラ (RAW500枚コピー、SSD→PC) |
33.66 | 50.9 | 51.2 | ―― |
エクスプローラ (RAW500枚コピー、PC→SSD) |
46.5 | 62.9 | 63.1 | ―― |
Lightroom Classic (RAW 300枚読み込み、プレビュー作成) |
14.1 | 15 | 15.6 | 14.1 |
Lightroom Classic (RAW 300枚プリセット適用) |
44.6 | 55.7 | 55.7 | 38.1 |
Lightroom Classic (RAW 100枚現像出力) |
166 | 166.1 | 166.1 | 162 |
はっきりと差が出たのは2番目の現像パラメータの適用。Lightroom Classicで現像パラメータを設定すると元ファイルと同じ場所にメタデータ(XMP形式)が作成されるので、そこで差が出ているのだろう。
Gen 2接続の場合だとシステムSSD(PCI Express 4.0x4)に比べて1.5倍近くの時間がかかっているので多少の影響はあるわけだが、体感的には意識しないとわからないレベルといえる。
大型PCゲームの移動もGen 2x2の高速SSDなら爆速
ゲームでも実践的なテストをやってみた。具体的には以下のような内容だ。
1. Steamライブラリの設定でレインボーシックス シージのデータ移動(PC→外付けSSD)にかかった時間を計測
2. Steamライブラリの設定でレインボーシックス シージのデータ移動(外付けSSD→PC)にかかった時間を計測
3. レインボーシックス シージの起動にかかった時間を計測
ゲームのデータ移動でもやはりGen 2x2のSE900Gは爆速。58GB以上もあるデータの移動を70秒以下で終えてしまうのだから圧倒的。Gen 2接続ではGen 2x2に比べて1.4~1.5倍くらいの時間はかかるが、それでも2分以下と高速でストレスはない。起動時間はやはりシステムSSDから起動したほうが速いのだが、その差はわずかであり、十分実用的だろう。
(秒) | SE900G (Gen 2x2) |
SE900G (Gen 2) |
SE770G (Gen 2) |
システムSSD |
---|---|---|---|---|
レインボーシックス シージ (ゲーム移動、PC→SSD) |
69.2 | 96.8 | 95.4 | ―― |
レインボーシックス シージ (ゲーム移動、SSD→PC) |
52.1 | 76.5 | 78 | ―― |
レインボーシックス シージ (ゲーム起動) |
57.3 | 57.4 | 57.3 | 56.6 |
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