カゴヤ・ジャパンの情報を深く、濃くお伝えするマイクロサイトがいよいよASCIIでスタート。オープニングコンテンツとして、カゴヤ・ジャパン代表取締役社長COOの岡村武氏のインタビューをお届けする。時代にあわせてビジネスを柔軟に変化させてきたカゴヤのこれまでを振り返りつつ、会社としての強みやポリシーなどを掘り起こしていく。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
茶摘みカゴ、プロパンガス販売からインターネットへ
カゴヤ・ジャパンは1998年に現代表取締役会長CEOである北川貞大氏が創業しているが、屋号としてのカゴヤは北川氏の先祖が使い始めた1926年にまでさかのぼる。そして、今に至るまでの経緯もなかなかドラマチックだ。創業はお茶どころ京田辺市で茶摘みカゴを販売したのが始まりで、ご近所からの愛称だった「カゴヤ」が、そのまま屋号になった。インターネット企業らしからぬ「カゴヤ」という社名はここから生まれたわけだ。
その後、カゴヤは京田辺市でさまざまな商売を手がけ、創業者である貞大氏の先代はプロパンガスの販売を行なっていたが、幼少期からコンピューターが好きだった貞大氏は家業を継ぐと本業のかたわらで地域ISP事業を開始。「当時、インターネット接続のおまけだったホームページスペースを通常の5MBから一気に100MBにしたところ、比較サイトで話題になり、一気にブレイクしてしまったんです」(岡村氏)とのことで、今で言うレンタルサーバー事業が急成長することになった。
結果として、家業を継いだ北川氏は社名を「株式会社カゴヤガス設備」から「カゴヤ・ジャパン株式会社」に変更し、事業をIT・ホスティングに集約する。1990年代後半は、GMOグループやさくらインターネット、ファーストサーバなど競合となるレンタルサーバー事業者もどんどん立ち上がった時期で、カゴヤ・ジャパンも日本のインターネットの成長市場に飛び込んでいくことになる。
カゴヤ・ジャパンがユニークなのは、自社でデータセンターを保有しているという点だ。創業当時は、通信事業者やSIerのデータセンターを間借りして、レンタルサーバービジネスを展開していた。しかし、他社のデータセンターを利用すると、電力供給やネットワーク回線の引き込みにどうしても制限がかかる。自社で運営したほうが、お客さまに価値を提供できるだろうと考え、データセンターの建設模索。カゴヤ・ジャパンはけいはんなの地に自社データセンターを立ち上げ、運営を開始する。岡村氏がカゴヤ・ジャパンに入社したのも、そんな時期だった。
経営企画の立場で見たカゴヤ・ジャパンの当時の課題とは?
岡村氏はIT出身ではなく、IPOや経営企画に携わってきた立場としてカゴヤ・ジャパンに入社した。データセンターができあがったのが2006年5月で、岡村氏の入社が6月。しかし、数字を見る立場の岡村氏からすると、データセンターの自社保有は無謀とも言えるものだった。「カゴヤ・ジャパンの当時の規模からすると、データセンターは建てるのに年間売上の倍のコストがかかります。正直『なんで作ったんやろ』と思っていました(笑)」と岡村氏は振り返る
というのも、岡村氏が入社した2006年頃は、レンタルサーバーがインターネットバブル、Web 2.0時代のユーザーニーズを支えており、事業者間の競争も激しかった。容量に対して、どれだけ低価格か、数多くの事業者がしのぎを削った、ある意味過当競争とも言える市場だった。
その中で、当時のカゴヤ・ジャパンのイメージは、北川氏が技術志向だったこともあり、どちらかというとプロ向け、玄人向けだった。決して初心者にフレンドリーというわけではななく、価格も圧倒的に安いというわけではなかった。「ロリポップやさくらインターネットのような安価なプランではなく、当時から月額1000円台はしていました。その代わり、いろいろな自由度を提供していたので、お客さまに選ばれてきたイメージです」と岡村氏は語る。
当時の課題は、個人ユーザーが多かったということ。レンタルサーバーと言っても共用ホスティングがほとんどで、個人がWebサイトやブログサイトを運営するのに使うパターンが多かった。プロモーションも雑誌への紙広告しかやっておらず、オンラインでの直販が当たり前だったのでそもそも営業部門がなかった。「もともとレンタルサーバー業界は営業なしで成り立っていた業界。初めて法人のお客さまのところに伺ったら、『レンタルサーバー会社の人も営業するんですね』と言われたくらいです(笑)」と岡村氏は振り返る。
そのため、ユーザー数や売上は高いが、客単価や利益は決して高くなかった。「もちろん、売上面で見ればきちんと成長していたのですが、もっと法人利用を伸ばす必要がありました。せっかく建てたいいデータセンターなのでデータセンターのスペックを最大限有効に利用できるお客さまを開拓しなければと思っていました」と岡村氏は振り返る。
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