週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

巨大市場ブラジルに挑戦できるスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「ScaleUp in Brazil」

JETRO、スタートアップのブラジル市場展開のため支援策を発表

2022年05月31日 06時00分更新

 世界最大級のイノベーションハブ「ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)」が運営するVenture Café Tokyoで毎週木曜日に開催されているThursday Gatheringにおいて、成長著しい市場として注目を集めつつあるブラジルをテーマにしたセッションが2022年5月12日に実施された。

 戦前から日本との強い繋がりがあったブラジルだが、政治的な不安定さやスラム街のイメージ、それに加えてコロナ禍への対応などによって、日本のスタートアップにとってはあまり近しい存在とされてこなかった。しかしながら既にGDPでは2020年時点で世界12位に達しており、30年以内には日本を上回るとの予測も出てきている。

 そのブラジルにJETROは事務所を開設しており、これまでにも数多くの日本企業の進出を後押ししてきた。今回、ブラジル政府機関と共同で展開しているアクセラレーションプログラム「ScaleUp in Brazil 2022」は、日本のスタートアップに対してブラジルへの進出に対するチャンスを提供しようとするもの。このプログラムの概要ならびに、既に20社に達するユニコーン企業を排出するブラジル市場の状況、エコシステムについて報告されたセッションの模様を紹介する。

スタートアップはフロンティアで自己変異する

 ScaleUp in Brazil 2022の紹介に先立ち、オープンイノベーションのエヴァンジェリストである株式会社InnoProviZation代表取締役CEOの残間光太郎氏から、ブラジルのような新たな市場に飛び込むフロンティアスピリッツ溢れるスタートアップに対するエールが送られた。

株式会社InnoProviZation代表取締役CEO 残間 光太郎氏

 多くのスタートアップが海外進出を視野に入れた事業展開をしているが、そのほとんどは欧米をターゲットにしているのが現状だろう。しかし残間氏は、ブラジルのような日本人にとってあまり馴染みのない土地でイノベーション活動を展開することに3つの意義があると言う。

「1つ目は新たな気づきがあるということ。シリコンバレーやイスラエルなどの成熟した環境には確かに成長する企業が集まってくるが、実は非常に尖がった会社は辺境にいる。そういう人たちと一緒にやることによって、全く新しいイノベーションの種が見つかる」(残間氏)

 スタートアップの多くは社会課題の解決を目指した製品・事業の開発を行っているが、それぞれの土地で抱えられている社会課題はそれぞれ全く異なることが少なくない。そのため様々な土地でスタートアップはその土地に合った変貌を遂げている。日本のスタートアップも、未成熟な市場で新たな気づき、新たな事業の芽を得られる可能性がある。

「2つ目はより多くのアイデアが得られるということ。多くの人は(製品開発や事業開発を)絞り込んで効率的にやりたいと言うが、イノベーションの世界では『優れたアイデアを得る最良の方法は、多くのアイデアを得ることだ』」と言われている。そのためにたくさんの失敗をする、たくさんの人たちと一緒にやる、これがすごく大事だ」(残間氏)

「3つ目は自ら変異する手掛かりを得られる可能性があるということ。新たな場所で(事業を)やることにより、異なる文化・風土・言語などが掛け合わされ、新たな変異が生まれる。シュンペーター曰く『既存のアイデアを重ねれば新しいものができる』辺境をや新興国を含めた様々な場所でイノベーションを行うことによって、より多くの重ね合わせを産むことができる」(残間氏)

 残間氏は大手企業で世界各地でのオープンイノベーションコンテスト開催に関わった実績をもち、ブラジルでも現地の大企業や投資家たちとコンテストを開催した経験を持つ。そこで得られた知見として、ブラジルにはオープンイノベーションのエコシステムが発達していること、ブラジル人の多くは失敗にくよくよしないポジティブシンキングを持っていること、すぐに友達になれるブラザーマインドを持っているとブラジルのイノベーション活動に対する印象を述べている。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事