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藤沢市スマートタウンで小型低速ロボットが医薬品や焼き立てパンをお届け

フルリモートでの無人配送サービスをいよいよ実施するパナソニック

さまざまな地域課題や社会課題の解消や、ドローンやスマートシティなどとの組み合わせで期待されている自動走行ロボットを活用した配送サービス。日本でも各種実証実験が進んでいるが、いよいよ実装が見え始めている。2020年より実施されたNEDOによる実証実験で見えてきた動きを追いかける。

 実際にロボットを走行させることで、住民や事業者とともに事業やサービスをつくっていきたい。パナソニックホールディングス株式会社(以下、パナソニック)は、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、藤沢SST)内で実証実験を繰り返しながら、ロボット開発と街づくりを同時に進めている。パナソニックが目指すのは、モノやサービスを届ける次世代の「エリアモビリティ」。街の中を複数台の小型低速ロボットが常時走行しており、住民たちにも親しまれているようだ。

藤沢サスティナブル・スマートタウン内での配送サービスを現地で実証

 パナソニックが取り組むテーマは「住宅街向け小型低速ロボットによる、安全・安定なラストマイル配送サービスの実現」。ユースケースとして、①藤沢SST等の住宅街等での小売店舗・飲食店からの配送業務、②私有地や工場等での限定されたエリアでの物流業務の効率化、③都心のタワーマンション群での多種類ロボット運行(エレベータ・セキュリティ等の施設インフラとの連携を想定)――の3つを想定している。2021年度NEDO事業では、①のサービスの実現に向けた実証実験が行なわれた。

 藤沢SSTは、パナソニックの藤沢工場跡地を利用したサスティナブルな街づくりプロジェクト。エネルギー、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティの5つのスマートサービスの構築を進めており、これらサービスのひとつとして自動配送ロボットを活用していく計画だ。

 実証機として、電動車いすをベースに小型低速ロボットを開発。サイズは長さ1150mm×幅650mm×高さ1150mmで、重量は120キログラム。最大積載重量は30キロで買い物カゴ2つ程度の大きさの荷物が入る。車体の前面と左右に3D LiDARと2D LiDARを搭載し、自己位置の把握と障害物検知が可能だ。

予約した医薬品や弁当、焼き立てパンをお届け

 実証実験は、フェーズ1として公道走行時の技術検証および課題抽出を目的とした公道走行実証、フェーズ2は受容性の検証を目的とした配送サービスの2段階で実施された。

 公道走行では、2020年11月25日~12月24日に藤沢SSTの中心地にある商業施設「湘南T-SITE」からアクティブパーク南側の住宅街周辺を走行。管制センターと自動走行ロボットを公衆回線で接続し、常時監視下でロボットが障害物を回避しながら自律走行した。ロボットが回避できない状況では遠隔操作に切り替えられる仕組みだ。

 フェーズ2の配送サービスの実証は、2021年3月5日~3月26日の木・金曜日に、2台の小型低速ロボットを用いて、アイン薬局からの処方箋医薬品、もしくは冷蔵品の弁当を店舗から住宅へ届けるサービスを実施した。

 このほか2021年度には、サービス実証として医薬品・弁当のほか、焼き立てパンの配送サービスも実施したところ非常に好評で、配送費の負担があっても利用してもらえたそうだ。

 また、ロボットに親しみを持ってもらうため、ロボットの愛称を公募し、「湘南ハコボ」と命名。子供たちにも人気があり、ロボット宛に手紙なども届いているという。

 技術面においても、1人のオペレーターによる遠隔監視で4台のロボットを同時走行し、安全に走行できることが検証された。他地域での検証、狭い通路やカーブ、植栽のはみだしなどの走行環境による走行性能の評価も行なったという。公道走行実験は徐々にエリアを増やし、2021年末で藤沢SST全域に広がり、累計走行距離1140キロメートル以上を達成している。

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