「自動配送ロボのラストワンマイルシリーズ02」レポート
配送ロボはビジネス検証のフェーズへ。ソフトバンク、ホンダ、福岡市、ZMP、川崎重工業が講演
医薬品や日用品配送など、介護領域における自動配送ロボットの活用
川崎重工業では、労働人口減少による社会課題の解決のため、無人化・遠隔化された輸送・物流ソリューションの提供による労働力不足の解消を目指している。同社の持つ陸海空の輸送技術を生かし、無人のヘリコプターと小型配送ロボットとの連携や、サービスロボットと配送ロボットの連携による配送サービスの技術実証に取り組んでいる。
ロボットデリバリー協会には発起人として参画し、今後の自動配送ロボットの普及や安全基準の策定にも積極的に関与していく予定だ。
公道用として開発中の自動配送ロボットの試作1号機「FORRO」は、小型・軽量、大容量の荷室、高い走破性が特徴。人がひとりで持ち上げられる小さな車体ながら、80サイズダンボールを7個積載可能だ。走破性については、同社のモーターサイクルやオフロード4輪の技術が投入され、ドリフト走行できるほどの実力を持つ。
このFORROを用いた公道における小型自動配送ロボットの取り組みとして2件の事例が紹介された。
1つは、地域包括ケアシステムでの活用を目指した自動配送ロボットの実証実験。地域包括ケアシステムの構築には、「医療」「介護」「予防」「生活支援」が切れ間なく一体的に提供する体制が必要だ。自動配送ロボットの活用により、医薬品や日用品などの配送を無人化し、人手不足の解消を目指している。
実証実験は、東京都墨田区の介護施設周辺の公道で実施。都心の住宅地であり、道幅が狭く、人や自転車の交通量の多い、自動走行には難易度の高い場所だ。ユースケースとして、①オンライン服薬指導と連動した医薬品配送、②在宅介護者向けの日用品・食事配送――の2つのサービスを想定。また、将来の複数機種混在での導入を見据えて、同社製FORROのほか、ティアフォー製のLogiee Sを使用し、同時に制御する実験が行なわれた。
実験後の利用者へのインタビューでは、薬剤師や介護士からは「対物業務を無人化することで、本来すべき退陣業務に専念できる」。高齢者は「重い荷物を運んでくれるのが助かる。将来はロボットが何台もいる社会になるといい」など、好意的な意見が多く得られたそう。
2つ目は、「西新宿エリア5Gを含む先端技術を活用したスマートシティサービスの実証」として西新宿エリアで実施。①ホテルから新宿中央公園までの飲食物の配送、②遠隔での見守り・トラブルサポートや災害発生の避難誘導情報の発信――の2つのユースケースで実施された。
①のケースは、みなし歩行者型でのホテルフードの安全なデリバリー、②はロボットの無人走行中にトラブルが発生した際の対応方法の検証を目的としたものだ。
人や障害物の多い公園内でも安定して走行し、一旦停止などの安全確認動作や、画面と音声での情報発信がわかりやすく、小さな子どもたちも怖がられることなく受け入れられていたとのこと。
事業面の検証はこれから。物流だけでなく、医療や介護も人手不足が顕著であり、将来へ向けてロボットを活用した無人化・省力化は必須だ。事業化へは採算性が課題だが、開発コストの削減と、複数の業務と組み合わせてロボットの稼働率を高めることで、短期のサービス化を実現したい、と締めくくった。
NEDOでは本年度も引き続き自動走行ロボット事業を実施。NEDO特別講座「自動配送ロボのラストワンマイル」シリーズ03は7月22日に開催予定だ。
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