「自動配送ロボのラストワンマイルシリーズ02」レポート
配送ロボはビジネス検証のフェーズへ。ソフトバンク、ホンダ、福岡市、ZMP、川崎重工業が講演
人と共感するロボットを目指し、人混在のリアルワールドで技術課題を抽出(ホンダ)
ホンダは、1986年から新しいモビリティの創造性を目指して人間型ロボット開発をスタートし、2000年からは生活空間での活動を想定したロボットとしてASIMOの技術研究を進めている。CES2018では、コミュニケーションロボット「A18」、チェア型パーソナルモビリティ「B18」、サポートロボットの「C18」、「D18」の4モデルのロボットデバイスを発表。この「C18」をベースにした自動配送ロボットを用いてNEDO実証事業に参加した。
ホンダは、自動車領域では自動運転システム(レベル3)の技術は持っているが、人車混在環境を走行する自動配送ロボットの移動には、技術的な難しさがあるという。人や自転車は自由な行動をとりやすく、人同士であれば阿吽の呼吸でぶつからないように譲り合えるが、今のロボットはそこまでレベルの高い制御ができていない。リアルワールドのデータを収集して技術課題を抽出し、ロボットの技術を磨くのが今回の参加の目的だ。
実証実験は、2021年7月19日~8月31日に楽天と共同で実施。ホンダが開発した自動配送機能を備えた台車に楽天が開発した商品配送用ボックスを搭載したロボットを使用し、筑波大学構内の宿舎周辺と一般公道を含む全長50メートルの配送実験を行なった。
ロボットのセンサーとして、上部にLiDAR、フロントとリア、前面に路面障害物用検知用ステレオカメラ、側面に遠隔監視用カメラを搭載。4輪が独立駆動し、悪路走行や障害物のスムーズな回避が可能だ。またバッテリーは着脱可搬型でバッテリー交換すれば充電を待たずに連続走行ができる。
実証実験では、のべ23日間で70.7キロを無事故での走行を達成。発進の安全確認、旋回、狭い道でのすれ違い、交差点横断、遠隔地からの画像認識の精度といった安全要件を検証し、得られたデータをもとに今後のロボット開発に生かしていくとのこと。
50haの更地にスマートシティを創る、福岡市の未来モデル都市「FUKUOKA Smart EAST」
特別講演には、自治体から福岡市 部長(イノベーション推進・スマートシティ担当)的野 浩一氏が登壇。
自動運転やロボットの導入などイノベーションの社会実装には、まず特定のエリアに導入して可視化することで、住民に安心感を持ってもらい、徐々にほかのエリアへと広げていくことが大切だ。福岡市では、箱崎の九大跡地である50haのエリアをFUKUOKA Smart ERASTと命名し、次世代のまちづくりを進めている。箱崎エリアは、博多駅から5分、鉄道が3路線入っており4駅利用可能で利便性が高いうえに、現在は更地となっており、自動運転に最適化した路面やロボットフレンドリーな段差がなく幅の広い道路、高速な通信インフラなどを一から整備できる。
すでに多くの国内外の企業が実証実験に参画し、自動配送ロボット、自動運転タクシー、自動運転コミュニティバスなどの実証実験を行なっている。こうした実証実験をスムーズに実施するため、福岡市側で会場の借り上げや関係機関との調整、一般モニターの募集、企業向け説明会の実施、メディア対応などのサポートをしているそうだ。 今年度は、健康(ウェルネス)、安全(セキュリティ)、移動(モビリティ)を中心に実証実験を募集している。興味のある企業は応募してみては。
配送ロボットは技術検証からビジネス検証のフェーズへ
株式会社ZMPは、自律移動の技術をベースに事業を展開するロボットメーカー。同社のロボライフ事業部では、人とロボットが寄り添う街“Robotown”をビジョンに、宅配ロボ「デリロ」、ひとり乗りロボ「ラクロ」、警備&消毒ロボ「パトロ」の3つの低速自動運転ロボットを開発。これらの3モデルの自動運転技術には共通のプラットフォームを使用しており、各ロボットの走行環境で得られる知見を蓄積し、アップデートできるのが特徴だ。
加えて、社会実装するためのロボットマネジメントシステム「Robo-HI API」を開発し、予約システム、ビル管理システム、健康管理システムなどの外部システムとも連携できる。また、岡山の自動車教習所であるモトヤユナイテッド株式会社と提携してロボットオペレーターの養成事業を開始するなど、ロボットの社会実装後に必要になるロボット管理の人材育成にも取り組んでいる。
無人宅配ロボット「デリロ」の実証実験としては、複数の店舗から複数のロボットが複数の配達先へ届ける未来を想定し、ENEOSの協力のもと、東京都中央区の佃・月島・勝どきエリアにて遠隔監視による無人配送を2022年2月1日~2月28日の期間で実施(うち2月18日は深夜0時~翌朝7時の深夜配送も実施)。配送時間は注文から1時間とし、遠隔監視された複数のロボットを2拠点に配備し、各拠点から半径1キロにある27店舗の商店が参加、5000戸を対象に配達を行なった。
そのほか日本郵便との実証実験では、ドローンとの連携による配送モデルの検証を実施。時速6キロ以下の低速ロボットでは、移動距離の長い山間部では収益化が難しい。そこで長距離の配送にドローンを使い、最後の短い区間だけをロボットで配達することで配送の効率化やサービスの実現性の検証が行なわれた。
エレベーターなど外部システムとの連携による実証も多数実施しており、屋外から建物の中まで1台のロボットで配達できる技術はすでにほぼ完成。これからは社会実装に向けて、ビジネス検証を進めていくそうだ。
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