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「自動配送ロボのラストワンマイルシリーズ02」レポート

配送ロボはビジネス検証のフェーズへ。ソフトバンク、ホンダ、福岡市、ZMP、川崎重工業が講演

2022年07月08日 07時00分更新

 株式会社角川アスキー総合研究所は、2022年5月11日にNEDO特別講座「自動配送ロボのラストワンマイル」シリーズ02を開催。本セミナーは、令和2年度補正NEDO事業「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」で得られた実証実験の成果を発表する全5回シリーズの2回目に当たる。

 1回目のシンポジウム(参考記事:自動配送ロボットのサービス実装に向けた協調、共助、官民連携のあり方とは)に続く今回は、ソフトバンク株式会社と株式会社本田技術研究所(以下、ホンダ)の成果報告のほか、特別講演として自治体から福岡市、株式会社ZMP、川崎重工業株式会社が登壇し、取り組みを紹介した。

 ラストワンマイル配送におけるドライバー不足の解消、買い物弱者対策、ウィズコロナでの非接触型の配送サービスとして、自動配送ロボットの早期実装が期待されている。国内では低速小型ロボットの実用化に向けた制度化を含む道路交通法の改正法案が4月19日に成立。2月18日には民間による一般社団法人ロボットデリバリー協会が発足し、自主的な安全基準の策定などが進められている。

 NEDOでは、2020年~2021年の2年間で12社10プロジェクトの実証を実施し、本年度は全5回の特別講座で各社の実証成果を報告するセミナーを開催する。今回は、NEDO事業者を代表してソフトバンク株式会社と、ホンダの2社が実証事例を発表。また自治体の取り組みとして福岡市、配送ロボ事業に取り組む株式会社ZMPと川崎重工業株式会社がそれぞれの事業を紹介した。

エレベーターや信号機と連携したオフィス街向け配送サービス(ソフトバンク)

 ソフトバンクのChief Scientist室 AIロボット開発課では自動走行ロボット「Cuboidくん」を開発し、ロボットの社会実装に向けてさまざまな取り組みを行なっている。NEDO事業では、佐川急便と共同で「オフィス街向けオフィスビル内外配送サービスの実現」をテーマとするプロジェクトに参加。港区竹芝のソフトバンク本社内および周辺地域で、エレベーターと連携した屋内配送と公道走行の2つの配送実験を実施した。

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット Chief Scientist室 AIロボット開発課 課長 古谷 智彦氏

 屋内ではエレベーターと連携し、複数フロアの部署への配送を実験。東京ポートシティ竹芝オフィスタワーには、三菱電機のビルIoTプラットフォーム「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」が導入されており、自動走行ロボットは館内すべてのエレベーターと連携してフロア移動が可能だ。

 ビル内では数フロアごとに佐川急便の拠点があり、そこで荷物を仕分けして各部署に配送される仕組みになっている。実証実験ではロボットに配送先を伝えるために、簡易的なバーコードによる配送指示と通信システムを構築。実証機には「Cuboidくん」にスマートロッカーを搭載したものを使用し、拠点で宛先のバーコードをチェックして荷物を積み込むと移動を開始。届け先では受け取り人がスマホアプリで二次元コードをスキャンしてロッカーを開錠し、荷物を受け取る仕組み都市、既存の配送業務を大きく変更することなく、うまくロボットを組み込めたとのこと。

 屋外配送は、港区竹芝エリアで信号機と通信し、交差点を横断する実験が実施された。日本信号株式会社の技術提供を受けて信号機との連携システムを開発。信号の色が変わるタイミングをクラウド経由でロボットに伝えることで、信号のある交差点を横断する実験に成功した。

 同時にクール便の配送実証として、ロボットに冷蔵冷凍庫を積載し、衝撃検知センサーと温度センサーを設置した実験も行われた。段差による衝撃、電力消費によるバッテリーへの影響などを計測したところ、実用化に向けて問題ないレベルであることが確認された。

 屋外走行に使われた実証機は、複数のLiDARなどを搭載したリッチな構成であり、実サービス向けには機体コストを下げるため、よりシンプルな構成にしていく必要がありそうだ。

 屋内については、今回の実証環境では、すでにエレベーターとの連携機能や通信インフラが整備されていたが、一般のオフィスビル等へ普及させるには、不動産事業者や管理会社、エレベーター事業者などとの連携が必要になる。特にエレベーター内は電波が届きづらいので通信の整備は課題だ。

 屋外配送のアンケートでは、「怖い」「不安」という声も20%弱あったという。不安を解消するために、進行方向の表示や音声で行動を周知させるなどの対策が必要かもしれない。

 もうひとつの課題として、3次元空間情報の有効利用を挙げた。竹芝エリアはBIM(Building Information Modeling)などの3次元情報がすでにあるにも関わらず、現状ではロボットごとに独自の地図を作成・使用している。既存の情報をうまく活用すればロボット導入の敷居が下がりそうだ。

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