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Sonos Roamの新色やVoice Control機能も発表

小型でこだわりの音質、Sonosの新入門サウンドバー「Sonos Ray」を聴く

2022年05月12日 09時00分更新

低価格競争に参加するつもりはない

 Sonos Rayは国内市場でも最近増えてきた3万円前後のレンジでありながら、プレミアムなサウンドと機能を提供する製品群の一角を担うことになる。このレンジでは従来から人気のあるソニーやヤマハなどの製品のほかに、デノンやPolk Audioといった新しいブランドが存在感を示すようになっている。こういった機種ではネットワーク機能やHDMIのハブ機能は敢えて外し、テレビ側からHDMI信号の入力と出力の両方ができるARC/eARC接続に絞り込んでいる場合が多い。機能をシンプルにすることで高音質を維持しながら、低価格化を目指す機種が増えてきている。一方で、Sonosの特徴はネットワーク再生にあり、こういった機種よりもコストを掛けた製品になる。

 Davies氏によると「Sonosとしては音質の高さにこだわっていくので、価格競争には加わらない」とのこと。その一方で「テレビのサイズに合わせたベストな体験を提供するための取り組みとしてRayを投入している」とした。この言葉から、Rayは低価格なサウンドバーではなく、プレミアムでコンパクトなサウンドバーとして企画された製品であることがうかがえる。

 すでに述べたように、Sonosのコンセプトは「より製作者の意図を生かした音作り」であり、フォーカスを置いているのは優れたサウンドを届けることだ。Davies氏はプロ用機器と個人用機器の音作りの差はほぼないが、個人向けのほうが小型であるとした。使用時の規模感が異なるため、それにともなうSPL値やカバー率などに違いが出てくるという。また、パートナーシップを重視しているのは、優れたサウンドを届けるためであり、それはパートナーとの意図を、どんなふうにとどければいいかをSonos自身が理解できるようにすると同時に、制作者がコンテンツにこめた目的を明らかにしてもらいたいという意図があるという。コンパクト化することでレコーディングスタジオの音をそのまま届けることは難しいと制作者も理解はしているが、気持ちを届けられること、最終的なゴール感を制作者と共有できる点を重視した開発になっているという。

声の聞こえがよくバランスよい周波数特性、拡張性もある

 短時間であるが、Sonos Rayのサウンドを体験することができた。デモは実際にSonos製品(Arc)が導入されているポニーキャニオンエンタープライズ ピーズスタジオで開催。調音などの処理はされているもののリビングに近い雰囲気を持ったスペースだった。

 音楽のステレオ再生から始まり、セリフを中心とした映画の再生、爆発音などダイナミックスの広い作品の再生、そしてサブウーファーやリアスピーカーを追加した本格的な再生まで約40分のデモを体験したが、小型でありながらしっかりとした低域が感じられ、かつフラットでまとまりのいいバランスとなっていた。音楽再生では明瞭感やビート感の良さが印象的で、広がりや定位感といった空間表現も巧み。映画だけでなくリビングで音楽を楽しむメインスピーカーとしても十分な実力を持っていると感じた。

 一方の映画ではサブウーファーなしでも十分な低音の支えがあり、大音量では迫力ある音、小音量では痩せない音を実現するのに貢献していることを感じられた。低域についてはバスレフ構造を工夫し、歪みを抑える仕組みを取り入れているそうだ。また、映画で非常に重要なセリフに関してもこもり感がなく非常にクリアーだった。

 当然、リアスピーカーを追加すれば、当然広がり感、スケール感ともに圧倒的によくなる。とはいえ、機器の設置スペースがとりにくい日本の住環境であれば、単体設置でシンプルに使うのが現実的だろう。こういう場合でも十分に満足いく再生ができるし、普段見ているテレビドラマやニュース、バラエティなどでもセリフがクリアに聞えるメリットは十分にあると思う。サイズ的には29m2ほどのリビングが最適で、音場補正機能のTrueplayの効果が利くのは18畳ほどのサイズまでとのことだ。

 Sonos Rayを企画するうえで、Sonosが中心としたのはテレビ音声の改善だ。声、空間再現、ベースを明瞭にすることは重視しているが、限られたスペースでの使用に限ればアトモス搭載に敢えてこだわらず、5.1ch入力で十分だという割り切りもしている。機能が劣るように感じるかもしれないが、その結果、上質な音がよりリーズナブルな価格で手に入るというメリットもあるだろう。

 Sonosの開発者がサイズとプライスの枠内でベストを追究したというように、Sonos製品の魅力はこうした使うシーンに合わせた、割り切りと製品に盛り込むべき特徴の優先度がハッキリしている点にあるだろう。

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