パネルディスカッションでは、「地域スタートアップエコシステムの可能性」をテーマに、「ユニークなサポート事例」「どのようなスタートアップを生み出したいか」「地域のエコシステム構築で苦労すること」「スタートアップスタジオ協会への期待」の4つのトピックについて議論した。
最初のトピックは、各自治体のスタートアップへのユニークなサポート事例について。
白川氏「役所は公平性を重視するのが普通ですが、我々はあえて企業を選別し、尖っているスタートアップをさらに伸ばすように重点的に支援しています。例えば、スタートアップでは直接アプローチが難しい大企業や行政の他部署へは、飛び込み営業のような形で仙台市から問い合わせることで、初回面談まで取り付けるお手伝いをしたりします」
田坂氏「不動産部会で出た意見で、スタートアップは短期間に居抜きで退去し、不動産オーナーともめることが多い。そこで、スムーズに入転居しやすくするため『居抜きの転入転居ガイドライン』を作りました」
鎌田氏「スタートアップだけでなく、地元の企業と行政職員との距離を近づけるように心がけています。仙台市と同様に、スタートアップの社員になったつもりで、地元の企業に出向いて製品を営業して回ったりしています」
2つ目のトピックは「どのようなスタートアップを生み出したいのか」。
白川氏「東北を社会課題解決の中心地になりたいと考えています。仙台は別名『杜の都』というブランドがあるので、緑から連想される産業、バイオや健康、環境分野を伸ばしていきたい」
田坂氏「新しい血を入れること。例えば外国の優秀な人材を入れることで、ハイブリッドなスタートアップを生み出すお手伝いをしていきたいです」
鎌田氏「北九州市の課題は若い人が働き先を求めて市外に出てしまうこと。将来の働き方の選択肢のひとつとして、市内での起業に魅力を感じてもらえる成功モデルがつくれるといいと思います」
3つ目の質問は「地域のスタートアップエコシステム構築で苦労すること」。どこからスタートアップ支援体制を構築していったのか。まだ足りていない要素は?
白川氏「起業支援を始めたとき、まず『日本一起業しやすいまち』というビジョンを作りました。そこから言語化して資料を作り、地域の経済団体、支援者に対してピッチをしてもらい、徐々に周囲を巻き込んでいくことを地道にやっていきました。最初はぜんぜん理解してもらえなかったけれど、とにかく熱量をもってやり続けることが大事だと思います」
鎌田氏「地方は圧倒的にスタートアップの生まれる数が少ないので、東京でがんばっているスタートアップを北九州に呼び込みたいです。また金融機関も少ないので、資金面でも外からVCと連携を図ることも必要です」
田坂氏「地方のスタートアップは数こそ少ないけれど、コミュニティに強い絆がありますよね。渋谷はプレーヤーが多すぎて、一体感を出すのが難しい。スタートアップ支援は他の課からの理解が乏しく、議会ですごく叩かれたりします。ほかの課が協力してくれると実現可能なことも多いので、理解を深めることがすごく大事だと実感しています」
スタートアップスタジオ事業者として佐々木氏は、「地方は母集団が少ないから、丁寧に育てていかないといけない。我々が貢献できることはもっとあると思う。地方でも起業に興味があってもアイデアがない人が大多数。そこから着手して、『アイデアが思いつくまで帰れません』イベントを各自治体とやっていきたいです」と、まずは3自治体でのイベント開催を求めた。
最後の質問は、「スタートアップスタジオ協会に期待すること」。
白川氏「起業家の数に対して壁打ちができる環境がまだまだ足りない。アイデアを持っている、起業したい人に対して、もっと壁打ちの機会が作れるようにスタートアップスタジオの協力で豊富なプログラムやイベントを実施したい。また協会のネットワークを借りながら、中小企業なども巻き込んで仙台のエコシステムを広げていく活動をしていきたいです」
田坂氏「起業したいかどうか迷っている、もやもや層がたくさんいると思います。そうした方々の背中を押すような取り組みをスタートアップスタジオ協会と一緒にやっていきたいです。また小中学校への起業家教育も協力していただければ」
鎌田氏「スタートアップの数がまだまだ足りないので、協会の会員企業の力をお借りして、北九州での起業に興味をもつスタートアップにお声がけしてほしいです」
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