単純にソフトが動けばいい、というのであれば、ノートPCを買うのが手っ取り早い。しかし、高性能なゲーミングPCが欲しいとなれば、高速なCPUとビデオカードが必要になるため、デスクトップPCの方が有利になる。
デスクトップPCの中でも、最新のCPUやビデオカードといったパーツをいち早く試せることから、PC好きな人に人気があるのが自作PCだ。気になるパーツの増設・換装が自由にできることから、毎週のようにパーツを交換するようなPCいじりを趣味にしている人も多い。
趣味としてもおもしろいが、詳しくなればちょっとした故障は自分で直せるようになるため、修理に出している間PCが使えない……といったトラブルを回避できるという実益もある。
もちろん性能を追求するだけでなく、好みのPCケースを選ぶのも自由だし、ライトアップに凝るのもアリだ。パーツひとつずつ、それこそネジの1本までトコトンまでこだわれるのが、出来合いのノートPCやデスクトップPCにはない楽しさだろう。
純粋に自作PCに興味がある、PCのハードウェア知識を深めたい、限られた予算でなるべく高性能なPCが欲しいなど、自作PCを始めるキッカケはいろいろあるが、初心者向けの自作としてオススメなのが、「コスパ重視の格安エントリーPC」。失敗しても金銭的なダメージが小さいというのもあるが、最小限のパーツで構成することで、自作しやすいというのが一番の理由だ。
最低限必要となるのは、CPU、CPUクーラー、メモリー、SSD(もしくはHDD)、マザーボード、電源、PCケースの7つ。これ以外にOSやマウス、キーボードなどもあった方がいいだろう。
CPUやメモリー、SSDなどは分かりやすく、比較的製品を選びやすいのだが、意外と難しいのがマザーボード。ATXやマイクロATX、Mini-ITXといったフォームファクター(サイズやレイアウトの規格)、LANなどのオンボード機能、対応CPUやメモリー、電源回路、スロット数など、同じような製品に見えても、比べてみると意外と違う部分があるからだ。
こういった違いの中でも微妙に分かりにくいのが、チップセットの違いだ。
第12世代Coreプロセッサー向けチップセットの違いを知る
チップセットの役割は、CPUに内蔵されていないインターフェースを拡張し、パーツや周辺機器を接続可能にすること。マザーボードはこのチップセットを搭載し、CPUと各種パーツとを繋ぐ、橋渡しとなる存在だ。
このチップセットは多くの種類があり、最新の第12世代インテルCoreプロセッサー向けとなるインテル600シリーズだけでも、9種類がラインアップされている。組み込みやビジネス向けといった特殊用途のものを除き、一般的に採用されることが多い4種類の主な違いを並べてみよう。
各チップセットの比較表 | ||||||
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Z690 | H670 | B660 | H610 | |||
CPUオーバークロック | 対応 | 非対応 | 非対応 | 非対応 | ||
メモリーオーバークロック | 対応 | 対応 | 対応 | 非対応 | ||
PCI Expressリビジョン | 4.0 | 4.0 | 4.0 | 3.0 | ||
PCI Expressレーン最大数 | 28 | 24 | 14 | 12 | ||
USBの対応 | 4×USB 3.2 Gen2x2 (20Gbps) |
2×USB 3.2 Gen2x2 (20Gbps) |
2×USB 3.2 Gen2x2 (20Gbps) |
2×USB 3.2 Gen2x1 (10Gbps) |
||
SATAポート数 | 8 | 8 | 4 | 4 | ||
RAID対応 | PCIe/SATA | PCIe/SATA | SATA | 非対応 |
性能だけを見るとCPUのオーバークロックにも対応するZ690が魅力的だが、これを搭載したマザーボードはハイエンド向けとなるため、価格も2万円以上と高めだ。コスパ重視の格安エントリーPCであれば、B660、もしくはH610搭載の1万円台前半で買えるマザーボードを狙いたい。
ここで気になるのが、H610はPCI Expressのリビジョンが3.0、さらにUSB 3.2 Gen2x2やRAIDに非対応で、明らかにB660と比べると見劣りしてしまう点だ。
しかし、よく考えてみると、コスパ重視であればビデオカードは搭載せずにCPU内蔵のグラフィック機能を利用するし、SSDも廉価なPCIe 3.0×4接続のものを選びたい。さらに、現状USB 3.2 Gen2x2の使い道がほとんどないことなどを考慮すると、見劣りはしているものの、実質的に影響がないともいえる。
一番困るのは、チップセットによってPCの性能が大きく変わってしまう可能性があること。こればかりは実際に試してみなければわからない。
そこで、B660搭載の「B660M D2H DDR4」(実売1万4000円前後)と、H610搭載の「H610M S2H DDR4」(実売1万2000円前後)の2つのマザーボードを使い、どのくらい性能差があるのか検証してみた。
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