「JID Product Pitch 2022」 JAPAN INNOVATION DAY 2022 by ASCII STARTUP
海上を風力で自動帆走するドローン開発のエバーブルーテクノロジーズ 地域支えるスタートアップ4社
モーションリブ:ロボットに力加減を与えて人にしかできない作業を自動化
3番目の登壇は、ロボットに人のような感触を持たせて力加減させる「感触の制御技術」をもつモーションリブが登壇し、まずロボットにものつかませる動画が披露された。産業用ロボットの制御で動くロボットは力加減ができず、いちごのショートケーキをつぶしてしまうが、慶應義塾大学で誕生した感触制御技術「リアルハプティクス」で動作するロボットは力を加減してケーキをつかんだ。
少子高齢化と人口減少で2030年には生産年齢人口(15歳~65歳)は約600万人減少する。製造業では属人的な熟練技術者の技能が失われ、農業はなり手がなく、医療従事者が増えない現場が逼迫(ひっぱく)する。ロボットによる人手不足解消が期待されたが、普及が進んでいない。ロボットが力加減をコントール(制御)できないことと、ロボットを動かすのが難しいからだ。
同社のリアルハプティクスは、感触を伴う遠隔操作で人の動きや力加減を記録してロボットにそっくりまねさせることができる。プログラム不要で簡単にロボットの動きをつくれる。この制御技術を感触制御ICチップ「AbcCore」に集約し提供する。遠隔で感触を伝え合う遠隔操業や、感触が伝わるメタバース(仮想空間)も実現できる。
これまでに100件超の開発プロジェクトを実施し、リアルハプティクスによる開発を行う企業は80社以上にのぼる。2018年からは実用化も開始している。大林組は「遠隔で我々の技術を使って作業しても遜色ない」、日鉄エンジニアリングは「熟練技術の継承ができる」と評価する。遠隔の握手会では地方にいながら都心のアイドルと触れ合える。モーションリブの緒方氏は「世界初の制御技術で人にしかできなかった作業をどんどん自動化して、日本や地方の未来社会を元気にしたい」と意欲を語った。
双方向でリアルタイムに感触を伝える技術は世界で我々だけ
質疑応答で緒方氏は「リアルタイムで感触を伝えるのは世界で我々だけ」と胸を張った。
中村氏:感触は本当に同じように伝わるのか? タイムロスは?
緒方氏:「位置」「速度」「加速度」「力」という、感触を表すのに必要な成分を使って感触を伝える。関東圏なら7ミリセックで100分の1秒程度。有線なら1万分の1秒で伝わる。
八潮氏:コア技術と感触を伝えるデバイスを合わせて提供しているのか?
緒方氏:去年までは専用装置を作り、難しい作業を個別カスタマイズしていた。今年から市販ロボットを使って単純販売でも進めていける体制が整ってきた。
残間氏:日本発のすごさをアピールしてほしい。
緒方氏:1940年代にアメリカが軍事技術として放射性物質を遠隔で扱う研究をスタートしたが、我々が2002年に実現するまで約60年間できなかった。双方向でリアルタイムに感触を伝える技術は世界で我々しかできていない。パテント化している。
遠藤氏:人間を再現するとは違ったセンサー的なモノも視野に入っているか?
緒方氏:熟練者と新米作業員のデータ化で熟練していく過程が分かり、その先には人を超えられる。実装段階では人にはできない動き付加価値として追加する。
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