「JID Product Pitch 2022」 JAPAN INNOVATION DAY 2022 by ASCII STARTUP
海上を風力で自動帆走するドローン開発のエバーブルーテクノロジーズ 地域支えるスタートアップ4社
エバーブルーテクノロジーズ:自動帆走ドローンを漁業、交通、観光に活用
2番目に登壇したエバーブルーテクノロジーズは、自動操船ヨット「帆船型ドローン」を作るスタートアップだ。風の力で海上運搬を担う帆船型ドローンで、海に囲まれた日本列島のエネルギーや環境、地方の問題の解決を目指す。すぐには実現できない壮大な構想だが、5年後、10年後を見据えたSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて自動帆走技術を開発している。
大航海時代に運搬や交易を担った帆船技術は産業革命で19世紀に廃れた。しかし、内燃機関の排出ガスで気候変動が起きたので、化石燃料に頼らない再生可能エネルギーに転換する。海洋は地熱、風力、潮力、波力の未開発エネルギーに溢れているが電気を送る手段がない。これを水素に変換してトラックのように小型分散化し、風力の自動操船ヨットで運ぶ洋上の水素サプライチェーンネットワーク「HYDROLOOP(ハイドロループ)」を構築する。
HYDROLOOPは小型の帆船型ドローンで船団を組み、互いに通信して航行。自動操縦で衝突を回避し、悪天候ならセンターの指令でルートを変更する。ドッキングや小回りを利かせる場合に補助モーターも併用し、太陽光や水力発電も併用すれば無限に稼働する可能性も秘める。
地方・離島の問題で、後継者不足の漁業では無人の魚群探知漁船ドローンを提案。交通では老朽化する橋の掛け替えを人件費と燃料代がかからない帆船の渡し船で解決する。既にPoC(概念実証)を通じて地方自治体や観光庁、観光事業会社から反響がある。海が荒れても無人で出せる「貨物船」や、海上に大量に配置して迅速に対応する「人命救助船」、無人の長時間稼働で密漁や不審船を見回る「防犯船」などだ。
沿岸道路の慢性的な渋滞を回避する「水上タクシー」のような構想で水上から荷物を運搬したり人が移動したりすることを目指した実証テストなども、逗子市の協力で進めている。また、サイクリングロードと湖の移動を組み合わせた「渡し船」的構想も進んでいる。帆を立てる帆船は美しく観光資源として評価された。エバーブルーテクノロジーズの野間氏は「2022年はMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を市場に投入していく」と今年の事業展開を説明した。
帆船型ドローンで船団を組み、海上のビッグデータ活用も
ピッチ後の審査員との質疑応答で野間氏は「船は小型分散で」と述べた。
残間氏:夢に溢れてわくわくする。技術と制度の課題は?
野間氏:帆船テクノロジーは19世紀大航海時代から画期的な進歩が起こっていない、IT業界のリードタイムと違って受注から完成まで数年がかかることが課題。水上ドローンについては法もまだ未整備で国土交通省に確認を取りながら進めている。
残間氏:造船と法規制でパートナーシップを考えているか?
野間氏:造船系はもちろん、IoT(モノのインターネット)に近いプロダクトなのでネットワーク系、分野、また、着岸する場所、「港」的場所が必要となるため、地域、自治体の方と一緒にやっていきたい。
遠藤氏:実際の大きさは? (飛行)ドローンのように小さいものも視野にあるか?
野間氏:大きくせず小型で船団にするようなイメージ。インターネットの「パケット通信」の仕組みのように「パケットに分けて配送する」サービスデザインだ。その船のサイズ感は5mから10m程度のイメージだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります