週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

S13&S15シルビアに乗る女性ドライバーはなぜラリーやドリフトを始めたのか?

2022年04月10日 12時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) モデル●水原亜利沙(@arisa__mizuhara)編集●ASCII

 とあるラリーチームの監督から「ローダウンのS15シルビアに乗っている麗しの女性がいらっしゃるのですが」と、S15オーナーの水原亜利沙さんをご紹介いただいたASCII編集部。当方から取材場所と時間をご連絡し、その場にうかがうと……確かに麗しの君と凄すぎるS15が。そしてごあいさつして名刺を見て驚きました。なんとプロのドリフト/ラリードライバーだというではありませんか。これは一体……。ということで、今回は一人の女性がドリフトドライバーになるまでの経緯とその愛車をご紹介したいと思います。

普通の少女がプロドライバーになるまで

 プロドライバーというと子供の頃からカートに乗り、レーシングドライバー養成スクールに通う、いわば英才教育を受けているというイメージを抱かれるかと思います。ですが水原さんはそうではありません。普通に免許を取得し、独学でドライビングを習得し、自ら道を開かれた方です。まずは、どうして車に興味を抱かれたのか、ということから話を始めましょう。

 水原さんと車の出会いは、幼いころにあった家族の車であるS13シルビアにまで遡るそうです。水原さんは、心底この車が気に入られていたそうで、子供の頃から「大きくなったらS13に乗る」と心に決めていたとのこと。そして免許を取得し念願のS13を手に入れます。

 その頃、水原さんの人生を大きく変える映画と出会います。その名はワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT。「私が乗っている車がこんな動きをするんだ、ということに興奮しました。そしてやってみたいと思ったのです」。こうしてドリフト道へと邁進した水原さん。次第に競技に出たいと思うようになり、自らスポンサーを集めます。最初に全日本ラリーへ「クスコレーシング」から出場。車両はS14シルビアやGRヤリスでした。その後、Formula Drift Japanの下位カテゴリーとなる「FDJ2」「MSCチャレンジ」にも参戦。「夢はでっかくアメリカのFormula Drift参戦です!」とのこと

エンジンなしのS15を手に入れ
自分でエンジンを組むまで

 それでは話をS15に移しましょう。水原さんはS13がお好きだったのに、どうしてS15に乗り換えたのか? いえ、乗り換えたわけではありません。S13を競技車両としてしまったため、街乗りできるシルビアがなくなってしまったのです。水原さんは普段もFRの車に乗りたいとのことから、NBロードスターを手に入れ、それはそれで幸せなカーライフを送られたとのこと。ですがとある日、このS15と運命の出会いをはたしてしまったのです。しかし「このS15が訳ありで……エンジンがなかったんですよ」。

 ですが、エンジンがなくても手に入れるべき、という天啓に導かれた水原さん。なんと、NBロードスターと物々交換してしまったのです。さすがに友人知人、知り合いから「考え直したほうがいい」と言われたそうなのですが、周りの声には一切耳を貸さず交換してしまったのです。「私は、今乗りたいと思った車に乗りたいんです。S15に乗りたかったので、まったく後悔していませんし、今のS15の値段を考えると、爆安で手に入れられてオトクだったと思っています」というからスゴイ!

 ちなみに水原さんによると「事故車だと思ったんですけれど、事故の修理跡とかはないボディーで。イマドキ、S15は事故車でも驚きの値段しますからね」と笑顔。エアロが異なっていますが、これは購入時についてきたもの。リベッドでオバフェン(オーバーフェンダー)化されているところも、入手時のまま。そんなボディーを仔細に見ると塗装はかなり傷んでおり「これはそのうち手を入れたいですね。オールペンかなぁ」と、計画を立てている模様。

 そして1年後、別の場所からSR20エンジンを手に入れた水原さんはS15にマウント。水原、という名前にあやかってかヘッドカバーをティファニーブルーにしていること以外、吸排気を少しいじった程度のライトチューンで、SR20では定番のVEヘッド化はされていないとのこと。こうしてS15シルビアは、ほぼノーマル状態で蘇ったのでした。ちなみにマフラーとエキマニは「FUJITSUBO様より協賛いただいたパーツです」だそう。現在は自分でエンジンを組んだりしているそうです。某首都高漫画に出てくる女性チューナーみたいですね。

 足回りも「車高が低いのは車両についてきたサスをそのまま使っていまして」とのことで、本人の意思ではないようです。水原さんの手が入っているのはエンケイのホイールとダンロップのタイヤの組み合わせのみ。これらは普段のレースでも使っているブランドです。

 驚いたのは内装。一言でいえばドンガラで、後部座席も取り払われていました。「ちゃんと2シーターで車検は通していますよ」ということで、法規上は問題ありません。運転席周りをみると、カーナビがないではありませんか。「あ、実は足車として、MINIの3Doorがありまして。S15は趣味の車ですから」ということで不要なのだそう。純粋に運転を楽しむためのクルマだからこそ、必要最小限の快適装備しか取り付けられていない、というわけです。

 シートはフルバケで水原さんが立ち上げたブランド「Crescent」のもの。運転席のみ4点シートベルトも用意されていました。またステアリングも同じくCrescentブランドです。そしてシフトカバーは、これまたティファニーブルー。我々オジサンにはないセンスですね。

扱えないパワーより
扱えるパワーのほうが楽しい!

 そんなS15に水原さんはべた惚れ。「やっぱりシルビアっていいんですよ。ボディーのサイズやデザインもですが、街中でも簡単に扱えるところが一番です。それほどパワーがあるわけではないので、踏んでも安心といいますか。でも、扱えないパワーより、扱えるパワーのほうが楽しいですよ」なのだそう。その考えは、ライトウェイトスポーツの楽しさそのもの。

 ちょっと運転させていただこうと思ったのですが、フルバケットシートが筆者には相当タイトで、さらにシートレールがほぼ固定されて後ろに下がらず、運転を断念。この車がどんなフィールなのかはお伝えできないのですが、それでもわかるのは、水原さんとシルビアの相思相愛ぶり。不動車を引き取り、コツコツと直し、そして動くようにするというのは、並大抵の決意でできることではありません。そんな水原さんの愛を受けて活き活きとした走りで応えるS15シルビア。とある会社の社長が語った「クルマは、唯一「愛」をつける工業製品」という言葉を、二人の関係を見ながら改めて感じました。

 次回以降は水原さんにMTのスポーツカーをレビューしてもらおうと思うので、お楽しみに。

■関連サイト

モデル紹介──水原亜利沙

 11月15日生まれ。高校時代をイギリス・ロンドンで過ごす。学生時代に見た映画がきっかけでドリフトに興味を持ち、ドリフトを始め、2018年よりラリーを始め2019年全日本ラリーデビュー。初クラス優勝も経験し、2020年からドリフト競技にも参戦。トーキョードリフトガールとしてYouTubeでも活動。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事