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スズキの名車「KATANA」がマイナーチェンジで考える刀の魅力とは

2022年04月10日 12時00分更新

 スズキのバイク「KATANA」がマイナーチェンジを行なった。見た目の変更点は、カラーリングと倒立フォークの色の変更だ。まずカラーリングだが、従来のミスティックシルバーメタリックにマットステラブルーメタリックが加わった。この新色は単に今流行りのマットカラーを取り入れたと言うわけではなく、名車である初代KATANAのイメージから、新世代のKATANAに進化したと言うメッセージが込められているようにも感じる。逆説的に言うと、そう思ってしまうほど、初代KATANAのインパクトが強かったとも言えるのだ。

新たに加わった新色のマットステラブルーメタリック

 その新色に合わせたかのように、ホイールやフロントフォークも黒から金色に一新してきた(ゴールドホィールはマットブルーのみ)このカラーは新色のマットブルーにも、従来のシルバーにもとてもマッチし、後付け感はまったく感じられない。

スロットルが電子化されアクセルワイヤーが消えた

テンションを変えるダイヤル付きのフロントフォーク

キーにもKATANAのロゴが入ったものに一新された

必要な情報を取りやすいメーターパネル

 変更点はカラーリングだけではなく、機能面でも大きく進化している。それがスロットルの電子化だ。アクセル開度を電気信号に変えてコンピューター管理することで、より正確で最適化された燃料が供給される。これによりスロットルレスポンスが、よりダイレクトになっている。供給する燃料の量も最適化され、出力も常に最高の状態に近づけている。簡単な言い方をするとスロットルを電子化することで、燃費も良くなるしパワーも出ると言うことだ。新型KATANAの概要については以上だが、KATANAの持つ魅力というのは数字や性能では言い表せない。では、なぜKATANAが名車と呼ばれるのか紐解いていこうと思う。

81年に発売された初代KATANA

 初代KATANAは、1981年にヨーロッパ向けに輸出販売が開始されている。なぜ海外販売が先行したのか? それはKATANAの排気量が1100ccだったことに起因する。当時の日本は、自主規制で排気量750ccまでしか販売ができなかった。そのため国内でKATANAに乗ろうとすると、逆輸入するしか方法がなかった。この事実も人気に拍車をかけた一因かもしれないが、一番の理由はその斬新なスタイリングとデザインの背景にある逸話と言えるだろう。

そのデザイン性が高く評価され爆発的な人気となった ※初代KATANA

※初代KATANA

※初代KATANA

 まずは今でも高く評価されている、その斬新なデザインについてだ。そのスタイリングは、まさにKATANAをイメージしたものでボディカラーはシルバー一色しか用意されていない。そしてフロントカウルから、タンクにかけてのラインはまさに日本KATANAのイメージだ。

メーター、シート、サイドカバーにまでこだわって作られている ※初代KATANA

※初代KATANA

※初代KATANA

 サイドカバーのデザインにしても、大ぶりにデザインされたチョークレバーやスイッチ類。メーターのデザインに関しても、タコメーターとスピードメーターを上手く配置しデザイン性を高めている。このように細部までデザイナーが手を入れることで、バイク全体からオーラ的な雰囲気が醸し出されているのだろう。

 そしてデザイナーに関する裏話が興味深く、KATANAが名車と呼ばれる所以の1つと言える。発売される約1年前に、KATANAはドイツのケルンモーターショーで発表されていた。当時はそのフォルムが大きな話題となり、「このままの形で発売されることはない」と噂されるほどだった。ところがその1年後に、コンセプトモデルそのままのデザインで発売されたのだ。その斬新なデザインから賛否両論ある中、KATANAは爆発的な人気を博し、世界を席巻した。

 このできごとが日本でも話題となり、デザイナーのハンス・ムートの名が一躍有名になった。このハンス・ムートと言うデザイナーは、もともとBMWでモーターサイクルのデザインをしていたのだが、スズキのオファーを受け、同じデザイナーのハンス・ゲオルグ・カステンとジャン・フェルストロームを連れて独立。ターゲットデザインという会社を設立し、KATANAのデザインを完成させた。

 このような経緯ででき上がったのが初代KATANAだ。僕の知る限りデザイン先行で作られた最初のバイクであり、本日に至るまで多くのバイクに大きな影響を与えている。ところが、このデザインをしたのが実はハンス・ムートではなく、別人であったことが発覚し一騒動起こっている。

 スズキはKATANAのデザイナーがハンス・ムートであると正式発表していた。ところがKATANAのデザインを請け負ったターゲットデザインは、KATANAのデザインスケッチの大半を担当したのがフェルストロームだと発表。自分からの発信ではないものの、立場をなくしたハンス・ムートはターゲットデザインを追われてしまう。今ではKATANAのデザインは、フェルストロームを中心としたターゲットデザインの作品となっている。このような逸話が生まれるのも、KATANAがバイク史に名を残した名車だからだろう。

フロントカウルからタンクまでのラインは初代を踏襲している

 今回発売されたKATANAは水冷直列4気筒998cc。最高出力は150ps。価格は160万6000円。初代KATANAは登場から40年以上の時を経ても、いまだに色褪せない稀有な存在。デザインの持つ力を味方につけ、今でも旧車ファンを中心に絶大な人気を誇っている。そのDNAを受け継いだ、最新のKATANAだけに期待値はマックスだ。

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■筆者紹介───折原弘之

 1963年1月1日生まれ。埼玉県出身。東京写真学校入学後、オートバイ雑誌「プレイライダー」にアルバイトとして勤務。全日本モトクロス、ロードレースを中心に活動。1983年に「グランプリイラストレイテッド」誌にスタッフフォトグラファーとして参加。同誌の創設者である坪内氏に師事。89年に独立。フリーランスとして、MotoGP、F1GPを撮影。2012年より日本でレース撮影を開始する。

■写真集
3444 片山右京写真集
快速のクロニクル
7人のF1フォトグラファー

■写真展
The Eddge (F1、MotoGP写真展)Canonサロン
Winter Heat (W杯スキー写真展)エスパスタグホイヤー
Emotions(F1写真展)Canonサロン

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