アフターコロナ、位置情報、コスト……携帯電話の位置情報データ活用における成功のカギとは
ドコモが語る「位置情報データサービスの現在」
コロナをめぐるモバイルデータ活用の現状
谷 御社としてのモバイルデータ活用の目標値と現状の達成状況について教えてください。
鈴木 位置情報を使ったデータビジネスの領域は、まだ成長過程の段階だと思っています。そのため今は事業としての拡大を優先し、「ここまで」という目標値を設定せずに、いろいろな民間企業や自治体に幅広く活用いただくことを重要視しています。
谷 「ビッグデータを活用した実証実験事業(国土交通省)」では、位置情報ビッグデータの活用による新たな知見から地域課題の解決につなげていくことが事業としての狙いとなっています。
弊社ナイトレイとしても「ロケーションデータで人々の生活を豊かに、社会をよりスマートに。」という目標を掲げ取り組んでいますが、位置情報ビッグデータの活用をさまざまな企業・自治体に広げていくという観点で貴社のご意見をお聞かせください。
鈴木 僕らも2013年に事業を開始した当初は、社会の高度化という目標の側面に重きを置いたのと、社会的に許容されるかどうかを気にしていたので公共メインでした。しかし、実はコロナ直前では民間領域の方が大きかったという実態があります。コロナ拡大後は、いったん公共向けがふくらみましたが、現状では民間と公共はおなじくらいの割合で展開できています。民間企業もデータ活用は進んできているなというのが肌感としてあります。
谷 近年は、どういった領域でのニーズが多いですか?
鈴木 公共だと交通計画とか、観光調査、あとは防災系ですね。インバウンド需要が戻れば動態調査のニーズもまた高まると思います。一方、民間企業ではいわゆる商圏分析です。各店舗周辺にどのような潜在顧客になりうる人たちがいるのかとか、イベントの効果測定です。最近の面白い動きでは、金融系があります。投資情報に人口の動態、にぎわっている場所等の情報から企業業績を予測し、投資ファンドにデータを活用するというケースが増えてきています。
谷 MaaS・モビリティサービス関連での取り組みはいかがですか?
鈴木 JR東日本の観光型MaaS実証実験「TOHOKU MaaS 仙台・宮城trial」で連携を行いました。モバイル空間統計人口マップを提供していて、リアルタイムで混雑状況を確認することができます。
谷 今回の実証事業でも、牡鹿半島の「牡鹿半島における観光ビッグデータ活用の実証実験」ではリアルタイム性があるデータを活用しています。また、私たちの展開するCITY INSIGHT 事業でも、貴社のサービスと連携したリアルタイムでのサービス展開を一部で実施していますが、今後リアルタイムデータへのニーズはさらに高まっていくと思いますか?
鈴木 コロナ以降、在宅が増えたり緊急事態宣言が発令されたりするなどで、日本人の動き方が大きく変化し、過去のデータが参考にならない領域が増えているということが言えます。過去のデータもいわゆる機械学習をするうえでの基礎データ、教師データとして活用していただくということはありつつも、“今を見たい”というニーズは増えていると思います。
リアルタイムデータの活用が増えていくためにはおそらく過去のデータが取り扱えていることが必要で、そのうえで初めてリアルタイムにデータがあると何ができる、という話になるのだと思います。
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