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第44回NEDOピッチ「アグリテック ver.」レポート

月面でも農業を可能に 次世代のアグリテック技術をもつスタートアップ5社

2022年03月31日 11時00分更新

 JOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)事務局と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、オープンイノベーションを創出することを目的とし、スタートアップ企業によるピッチイベント「NEDOピッチ」を開催している。

「第44回NEDOピッチ(アグリテック)」では、農業を意味するアグリカルチャーとテクノロジーを掛け合わせた造語「アグリテック」をテーマにし、SDGsをはじめ、離農や生産者の減少、労働力不足など農業の抱える課題に関して、農業のスマート化、テクノロジーの活用により多くの課題を解決に導くスタートアップ企業が登壇し、ピッチがおこなわれた。

植物がもつメカニズムで熱と乾燥の両方から守る
アクプランタ株式会社

 アクプランタ株式会社からは、代表取締役の金鍾明氏(東京大学大学院農学生命科学研究科 特任准教授を兼任)が登壇。SDGsの観点から、植物を熱と乾燥の両方から守る方法を考案。エピジェネティクス理論に基づいて、元々植物に備わっている乾燥・高温耐性メカニズムを呼び起こし、耐性遺伝子情報を発現させる手法に着目した。 植物は、乾燥を感じると自分自身の中で酢酸を作り出し、乾燥に耐性化できることを発見。また、酢酸を与えることで、全ての植物を高温・乾燥に強くできることを明らかにした。ただし、酢酸をそのまま植物に与えると枯れてしまうことがあるので、その対策、調整を行い開発されたのが同社の酢酸バイオスティミュラント「スキーポン」だ。

 スキーポンを使用することで、苗が枯れることを防ぎ、成長のばらつきが減り、収穫も確保できるようになった。収穫量が安定することでの収益だけでなく、水やりの回数を減らせることで、労働時間の短縮や大幅な節水などにも効果を発揮した。あらゆる植物に使用できるので、日本国内だけでなく、世界各国で広げているという。

 また、酢酸を使用した栽培は、農地だけでなく、植物工場での生産性をあげることにも使用されている。省資源で生産性が上がることで、CO2の固定も増え持続可能な社会の実現に貢献できるとしており、アクプランタ社では取り組みを一緒に進められる関係省庁や協業共同研究事業者、人材を募集している。

 質疑応答では、どのような企業などとの連携を目指しているかという質問に対して、今現在気候変動で被害を受けている農家の方や生産性と省エネに課題を感じている植物工場の事業主などにアプローチしたいと回答。世界に向けては気候変動の影響が大きいエリアにはすでに個別アプローチをしているとのことだ。

 世界展開に関しての課題としては、その国のレギュレーションに合わせる必要があるので、そういった国々でレギュレーションに適合するとりくみに協力してもらえる企業との連携は歓迎ということだ。日本ではバイオスティミュラントに対するレギュレーションはまだないが、このスキーポンに関する基礎技術が論文化されているということと、農地での成果が上がっている実績の両面で農家の方には信頼されているという。

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