実は日本とも深い関係性がある製品
Signa S4が低価格を実現できている理由は何だろうか? ひとつは日本よりも市場規模が大きい海外、特に北米市場をメインターゲットにしている点がある。もうひとつは音質面で重要な部品の品質は落とさず、機能は最小限に絞って、低コスト化を図っているためだ。サウンドバーの高級機種では、入力端子を増やしたり、ネットワーク機能などを搭載したりして付加価値を高めているが、Signa S4は基本的にテレビ音声を入力して再生するだけのミニマムな構成としている。
最近のテレビは放送を観たり、Blu-ray Discプレーヤーを接続したりして使うだけでなく、Apple TVやFire TVなどのネット視聴端末、スマートフォンなどとの接続も可能だ。テレビ単体でNetflixなどのストリーミングサービスを再生する機能も持っている。こうしたコンテンツの切り替えはテレビに任せてしまえばいい。サウンドバーは、HDMI端子(eARC)などからデジタル出力された音声を、高音質に再現する点に注力すればいいという考え方だ。
一方で、入力できるデジタルフォーマットは多彩。すでに述べたドルビーアトモス(ロスレス対応)はもちろん、4K放送や地デジで用いられているMPEG-4 AAC/MPEG-2 AACのサラウンド音声もデコードできる。サウンドバーの中にはAACに対応しないものもあり、その場合はテレビ側でPCMに変換する必要があるが、Signa S4は本体でより高品質にテレビ放送のサラウンド信号を処理できる。
サラウンドと言うと映画をイメージしがちだが、スポーツ番組や音楽番組などテレビ放送に乗って伝えられるものもかなりある。見落としがちだが、サウンドバーは放送との親和性の高さも重要なのだ。
ここで少々の余談。Signa S4は米国市場向けのサウンドバーなのに、なぜ日本特有の放送のフォーマットに配慮されているのかと疑問に思う人はいないだろうか? ここはSinga S4の素性を知るとよく理解できる部分だ。
Polk Audioは現在、Sound Unitedという米国企業の傘下にある。このSound Unitedは日本のデノンやマランツ、イギリスのBowers & Wilkinsなどたくさんのオーディオブランドを抱えており、製造や開発に際してグループ内での連携も図られている。ここでピンと来る人がいるかもしれないが、実はPolk Audioの製品開発には日本の技術が多く用いられている。最近デノンが「DHT-S517」という3.1.2ch対応のサウンドバーを出したが、実はそのノウハウや品質管理の基準などがSigna S4にも適用されているのだ。つまり、DHT-S517とSigna S4はブランドこそ違うが機能に関係する部品などはグループ内で共有している。結果、コスト面での大幅なアドバンテージにもつながっている。
一方でドライバーや筐体、DSPといった音に関係する部分はボルチモアにいるPolk Audioのラボチームが独自に設計し、チューニングを施している。
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