3月23日、KDDIとソニーは共同で5G SA(スタンドアローン)によるゲーミングストリーミング技術検証を実施。5G SAのネットワークスライシング技術を使って、遠隔地にあるゲーム機本体をカクつきや遅延などなく、スムーズにプレイできる様子を公開した。
今回の技術検証で使われたゲームデバイスは、PlayStation 5(PS5)とXperia 1 III。PS5は自宅に、Xperia 1 IIIは外出先という設定でリモート接続を行なっている。使用されたXperia 1 IIIは、au版でハードウェアは同じだが、ソフトウェアのカスタマイズで、5G SAでの通信が可能。検証を行なった東京国際フォーラムの屋外広場から5G基地局に接続し、5Gコア設備へと接続している
一方のPS5側もネットワークは固定回線ではなく、同じくカスタマイズしたXperia 1 IIIを使った5G SAでの接続。PS5から評価用サーバーを経由してXperia 1 IIIから5G基地局、そして5Gコア設備へと接続。PS5は東京国際フォーラムから2kmほど離れた虎ノ門に設置されているが、屋外のゲームプレー用Xperia 1 IIIからPS5まで5Gで繋がっているイメージだ。
今回の技術検証でポイントとなるのがネットワークスライシング技術。5G SAの特徴ともいえる技術で、通信をその名のとおり、目的別に切り分けて専用線のような状態をつくり、高速かつ低遅延の安定した通信環境が得られるというもの。
ネットワークスライシング技術を活用すると、たとえば今回のようにゲーム用の通信を優先したり、逆に通信速度などはあまり必要ないIoT機器はある程度制限したネットワークに、といった使い方ができる。
今回の技術検証では、格闘ゲームを使用。片方はゲームストリーミング用スライスに接続。もう一方は通常スライスで、わざとネットワークがやや混雑した状態で接続して行なっていた。
動画を観てもわかるとおり、ゲームストリーミング用スライスに接続したほうは、カクつきがなく、コントローラーの入力に対してスムーズな反応となっている。一方通常のスライスに接続したほうは、コマ落ちもありコントローラーの反応も悪い。
5G SAが普及し、ネットワークスライシング技術が一般的になれば、こういったゲームのほかにも、VRでのライブ配信に専用のスライシングを用意して、8Kといった高画質のコンテンツを安定して配信したり、遠隔医療で遅延なくオペの対応をしたりといったサービスが提供できそうだ。
ただし現状では技術的な課題も多い。今回の技術検証ではネットワークスライシングといっても、ゲームでの通信だけを切り分けて通信をしているのではなく、外出先のXperia 1 IIIとPS5相互の通信すべてを対象として行なっている。ネットワークスライシング技術の標準化もいまだなされていないため、現状ではサービスごとや、アプリごとといった個別の通信をスライシングするのは難しいとのこと。
また実際にサービスを提供する場合、PS5側が5G SAでの接続ではなく、光回線など固定回線というケースも想定されるが、現状では5G SA同士の接続でしか検証はできていない。
そもそもKDDIが5G SAの法人向けサービスが提供されたのが2022年の2月から。個人向けへのサービスはこの夏以降となっている。また現状販売されているスマートフォンも基本的には5G SAでの接続には非対応。そのため、5G SAが普及しネットワークスライシング技術を活用したサービスが登場しはじめるのは、2024年頃と予測される。
まだまだ数年先とはいえ、5G SAが普及しネットワークスライシング技術が進化すれば、自宅のゲーム機を遠隔操作するだけでなく、クラウドからのストリーミングでも格闘系やFPSといったゲームをモバイル通信で遅延なくサクサクと遊べる環境が実現するのは間違いなさそうだ。
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