SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる中、エネルギーや電力などの社会インフラに対するテクノロジーの活用が進んでいるのはご存知だろうか。今回取材した株式会社グリッドは「インフラ ライフ イノベーション」を掲げて、ベンチャーでありながら出光興産と共同で配船計画の効率化に取り組んでいる。しかし技術だけでは複雑な課題は解決できない。今回は同社CTOである沼尻匠氏から、社会インフラ分野で活躍するエンジニア組織についてお話を伺った。(以下、本文敬称略)
AIベンチャーは教育が重要
マスクド:どのような立場で職務を行っていますか。
沼尻:エンジニアリング部門のCTOとして、プロジェクトへのアサインや稼働率の管理に加えて、人材採用も担当しています。案件によっては私自身がシステムアーキテクトとして設計や実装も担当します。現在エンジニアチームは約45名が在籍しており、職種はAIエンジニアからデータサイエンティスト、システム開発を中心として、少数ですが研究開発(R&D)職もおります。
グリッドに入社した経緯は大学在学中のインターンをしていたことです。大学院卒業後は大手SIerの研究所に就職しましたが、社長である曽我部から誘われる形でグリッドに出戻りました。起業間もない時期で何事も自分で調べて自分でやるというベンチャーらしい環境が魅力的で、転職を決意しました。
また、グリッドは社会インフラを担う大企業と仕事ができる事も魅力です。特に電力、配船計画、サプライ・チェーン、スマートシティの4分野に注力しており、業務効率化によって燃料費や輸送効率など大幅なコスト削減が実現できます。将来的にはコストだけでなくCo2も削減することで、仕事の意義ややりがいを感じられます。
マスクド:グリッド様はAIベンチャーですが、エンジニアには機械や電力など工学系出身のエンジニアも多いと伺っています。どのような経緯で入社して、活躍されるのでしょうか。
沼尻:我々の仕事は社会インフラ企業様の要望をヒアリングする機会が多く、業務知識が求められます。そこでエンジニア採用では、社内ではなく社外からデータ分析やAI活用などに携われる点をアピールしています。
採用基準としては、会社との相性を重要視しています。弊社はベンチャーといっても堅実な業務が多く、真面目にコツコツ取り組む気質の組織です。さらに自分の領域にこだわらず、他者の仕事にも積極的に関わっていく意欲がある人を求めています。例えばプロジェクトマネージャーとしてアサインされても最適化のプログラムまで開発する人もいれば、逆にデータサイエンティストでありながらお客様との要件定義をまとめる人もいます。もちろんエンジニアとしての役割はありますが、自分の領域を越えられる人が評価される仕組みです。
マスクド:こうした幅広い業務で活躍できるエンジニアを育成するために、どのような施策を行っていますか?
沼尻:まず定期的に社内勉強会を実施して、自分の担当プロジェクトや最近読んだ論文、プログラミングのテクニックなど、知見を共有しています。勉強会は自由参加ですが、元々エンジニアが自主的に始めた活動なので、参加する人は多いです。また、経営側としてもエンジニアの稼働率をKPIとして設定しますが、新しい技術をキャッチアップしてもらうため稼働率を上げすぎないよう配慮します。
また、他業種から転職された方には「IO DOJO(インダストリアル・オプティマイズ道場)」という社内研修を行っています。過去の案件をベースにした課題で、最適化や機械学習プログラミングを学んでもらいます。さらに「バディ制度」というメンター社員が新人をマンツーマンでフォローする仕組みもあります。最初の半年はメンターと一緒に課題を解いたり、プロジェクトにアサインされて業務に取り組みます。エンジニアからも「入社してすぐに仕事の進め方が身に付いた」など好評です。AIベンチャーは教育が重要なので、IO DOJOなど研修体制をより拡充したいと考えています。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります