週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

自分流の経営手法はない、日本ブランドを子会社化し再建したシャープ戴会長

2022年03月01日 09時00分更新

今回のひとこと

「日本の将来のためにも、日本にディスプレー事業を残し、再び世界をリードしていくべきだと考えている。ディスプレー事業を集結させた『日の丸連合2.0』が必要である。この動きを加速するきっかけになることを期待している」

(シャープの戴正呉会長兼CEO)

 シャープは、2022年4月1日付で、戴正呉会長兼CEOが会長執行役員となり、呉柏勲(Robert Wu)常務執行役員が、副会長執行役員兼CEOに就く人事を発表した。戴氏は、社員に向けたメッセージのなかで、「新CEOの順調な船出を支えるために、1年間、引き続き会長としてシャープの経営に携わる」とし、1年間の時限で会長職には留まるものの、その後、シャープの経営から退く姿勢を示した。

 シャープの再建を成し遂げた戴氏の経営手腕には高い評価が集まるが、以前から2022年3月末での退任を示唆。株主などからは、その決定を惜しむ声があがる。

テリーさんは「義」という文字を書いた

 戴会長兼CEOは、「2016年に、テリーさん(鴻海精密工業の創業者である郭台銘氏)は、鴻海の本部に『義』という文字を書き、すべての金融アドバイザーの反対意見を押し切って、シャープへの投資を決定した。私はテリーさんのその強い思いを背負って、社長に就任した」と振り返り、「社長就任からの約6年間、社員とともに、抜本的構造改革を断行してきた結果、短期間で黒字転換し、2017年には東証一部復帰を果たすことができた。そしてその後も、外部環境がどんなに厳しくても、シャープは黒字を維持することができている。また、事業本部ごとに見ても、本社費用配賦の廃止により、経営の自由度が高まり、個々の事業の競争力が向上し、社員のモチベーションが高まり、チームワークの良い風土が醸成された。全社一丸となって経営改善に取り組んだ結果、シャープの経営は根本から改善され、企業風土も極めてポジティブに変化し、次の100年の新たな歴史を築いていく土台を構築することができたと考えている」と、自らの経営について総括した。

 シャープは、2014年度に2223億円の最終赤字となり、2015年度も2559億円の赤字を計上。430億円の債務超過に陥り、2016年8月1日に、東証第一部から第二部へと指定替えとなるなど、まさに「瀕死」の状態のなか、同年8月13日に戴氏は社長に就任した。

 戴会長兼CEOは、「企業経営は、経営者の『能力』と『決心力』によって結果が左右されると考えている。実際にこれまでに、いくつもの有言実行を積み重ねてきた」と述べ、「DynabookやシャープNECディスプレイソリューションズは、もともとは赤字で、それぞれの親会社の事業戦略から外れた。だが、シャープが子会社化した後は、短期間で黒字転換することができた。また、2020年10月にジャパンディスプレイの白山工場を取得する際にも、社外から様々な否定的な見方があったが、結果として、順調な稼働を維持し、黒字経営が続いている。そして、一時売却すべき事業としてやり玉にあげられていたソーラー事業を含めて、シャープは、ひとつの事業も放棄しておらず、大半が黒字経営を継続している」とする。

 さらに、「企業経営は、短期的な利益のみを追求するのではなく、長期的視点に立って、社会と国家の発展に貢献することが大切である。日々の株価の変動や外部の評価に左右されるのではなく、長期的視点に立って行うものであり、正しい経営を行っていれば、ステークホルダーの信頼は自然と高まっていくものと私は考えている」ともコメントした。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事