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自分流の経営手法はない、日本ブランドを子会社化し再建したシャープ戴会長

2022年03月01日 09時00分更新

堺ディスプレイプロダクト(SDP)を、完全子会社化

 社員に向けたメッセージのなかで、多くのスペースを割いたのが、大型液晶パネル生産の堺ディスプレイプロダクト(SDP)を、完全子会社化する方針を決定したことだ。

 もともとシャープの子会社であったが、現在は20%の株式を持つに留まっている。一時はこの株式を売却することも検討していた。シャープでは、現株主との協議や最終合意ののち、法定手続きを経て、本取引を完了させる予定としている。

 SDPの完全子会社化の理由について戴会長兼CEOは、「シャープが将来にわたって、より良い製品やサービスを提供し続けるためには、ディスプレー関連技術を強化していくことが極めて重要である。これがSDP完全子会社化の前提となる考え方である」と前置きし、「シャープでは、業績の安定化を目的に、SDPの持分売却を検討していたが、昨今の国際情勢や大型パネルの市場動向、シャープの事業戦略などを勘案すると、いま、このタイミングで完全子会社化することが、将来のシャープにとって、必ず良い決断になると考え、今回の決定に至った」と述べた。また、「SDPには多くのシャープ社員が出向しており、土地やユーティリティなども、シャープからの賃借であるなど、シャープとSDPは、実質的に事業共同体となっている」とも指摘する。

 そして、戴会長兼CEOは、SDPの完全子会社化には大きく2つの狙いがあるする。

 ひとつめは、「テレビ事業におけるグローバル拡大戦略の加速」である。

 「かつてのシャープは、世間から『1.5流の家電メーカー』や『顔の見えない会社』と言われてきたが、2001年に液晶テレビ『AQUOS』を発売して以降、『液晶のシャープ』として栄光の時代を築くことができた」と、テレビの基幹部品である液晶パネルが、シャープのブランドを高める上で重要なデバイスであることを示しながら、「シャープは、グローバルでのAQUOS復権に向けて、AQUOS 8KやAQUOS XLEDなど、特長的な新商品をいち早く市場に投入するとともに、日本でのシェアNo.1の維持、欧米でのブランドの取り戻し、中国での事業拡大戦略の再構築、ASEANでのブランド力強化など、グローバル事業拡大を積極的に推進している。今後もこうした戦略を進めていくうえでは、テレビのコスト構造において大きな割合を占めるパネルの安定調達が極めて重要になる。これが実現すれば、シャープは将来にわたって、大型テレビを5インチ刻みでフルラインアップでき、優位性を維持することができる。グローバル市場での競争を勝ち抜き、より収益性の高いテレビ事業を展開していくことが可能になる」とした。

 もうひとつは、「ディスプレイデバイス事業の強化」である。

 SDPでは、ノートPC用液晶パネルの開発および生産に着手しており、今後の市場拡大が期待される車載分野やDX、メタバースといった様々な領域でのディスプレー活用などにより、さらなる需要拡大が期待できるとする。

 「SDPを完全子会社化することで、シャープのディスプレイデバイス事業のアプリケーション拡大や、生産能力向上を図るとともに、お互いのリソースを融合させることで、将来のシャープの大きな強みに育てていきたいと考えている」と述べる。

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