2022年2月14日、NTTコミュニケーションズはeSIM上のアプレット領域を分割する独自技術に関する発表会を開催した。同社はこの独自技術を用いてセキュリティ機能を実装したeSIMをトレンドマイクロとの共同開発し、2022年度内にサービス化を進めるという。
アプレット領域を安全に分離・開放 アプリ開発を加速
今回、発表された「eSIMのアプレット領域分割技術」は、eSIM内に用意されたアプレット領域をパートナーに対して開放するための独自技術になる。発表会では、NTTコミュニケーションズ データプラットフォームサービス部/5G・IoT タスクフォース兼務 担当部長 内山 貴允氏がこの独自技術やトレンドマイクロとの共同開発について解説した。
物理的なSIMの差し替えなしに契約情報を遠隔で書き換えられるeSIMは、スマホのみならず、IoT領域での利用も増えている。このeSIMにはモバイルの契約情報を格納する通信プロファイル領域とは別に軽量なアプリ(=アプレット)を動作させるためのアプレット領域が用意されているが、他社のeSIMでは通信プロファイル領域内にアプレット領域が包含され、共通の鍵で管理されている。そのため、パートナーはアプレット領域に独自のアプリをインストールすることができず、必ずSIMを発行するMNO事業者との契約と管理が必要になっていた。
しかし、今回発表された独自技術を使えば、アプレット領域を通信プロファイル領域と分離し、異なる鍵で管理することが可能になる。ユーザーは独自開発したアプレットを開放されたアプレット領域に自前でインスト-ルすることができるため、開発サイクルを高速に回すことが可能になるという。「パートナーにアプレットの独自領域を開放できる。今後はSIMの上に載るアプリが強力な武器になると考えた」と内山氏は語る。
また、NTTコミュニケーションズでは「eSIMアプレットSDK」もあわせて提供。パートナーは開発キットとDeveloper Cardを購入し、デバッグサポートやトレーニングのサポートを組み合わせることで、アプレットの開発が可能になる。SIMを単なる通信手段から、より付加価値の高いものに変えることで、価格以外でeSIMを選べるようにしていくという。
トレンドマイクロとの共同開発でeSIMにセキュリティを実装
この独自技術を用いて、今回NTTコミュニケーションズはトレンドマイクロとセキュリティ機能を実装したeSIMを共同開発した。
昨今、サイバー攻撃の約半分はWebカメラやルーターなどIoT機器をねらったもので、IoTデバイスの出荷台数も300万台を超え、攻撃はますます増えていくとみられる。一方で、セキュリティの人材は慢性的に不足。「さまざまな仕様のIoTデバイスが混在するため、対策が複雑」「仕様上、セキュリティ対策が難しかったり、後付けか困難」「セキュリティ自体が解析、改ざんされる恐れがある」などIoTならではのセキュリティの課題もある。
今回の共同開発では、eSIM自体にトレンドマイクロの「Trend Micro Mobile Network Security」のエンドポイントセキュリティを組み込み、IoT機器のデバイスの情報収集や無線接続の動的な制御を実現。また、Trend Micro Mobile Network Securityネットワークセキュリティとも連携。IoTデバイスのセキュリティの可視化、一元管理も実現するとともに、SIMを抜き取るスワッピング、意図しないポートの検出、攻撃者の不正通信の防止、マルウェアの感染など攻撃を防止するという。
今後はこのセキュリティ機能を搭載したeSIMのサービス化を進めるべく、フィールドトライアル企業を募集。また、セキュリティ以外のさまざまな付加価値を提供するeSIMの共創パートナーを募集するという。
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